少子高齢化に関連するニュースを見聞きするたび、将来、自分は年金をいくらもらえるのか、不安に思う人は多いでしょう。「年金だけでは足りなそうだから貯蓄をしておこう」と思っても、どのくらいの貯蓄があれば安心なのか分からなければ、いつまで経っても不安は解消しません。

そこで、「自分の給料だと将来いくら年金がもらえるのか」を大まかに知るために、年収別の厚生年金受給額の一覧表を作成しました。また、年金額がどのように決まるのか、その仕組みと計算方法も解説します。おおよその年金額が分かれば、貯蓄目標も立てやすいと思いますので、参考にしてみてください。

  • 将来もらえる「厚生年金受給額」をプロが解説!

    年収別の「厚生年金受給額」を早見表でチェック!

■公的年金は2階建て

はじめに日本の公的年金制度をおさらいしておきましょう。国民年金(基礎年金)は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金です。その上乗せとして、会社員や公務員などが加入する厚生年金があります。そのため、公的年金は国民年金が1階部分、厚生年金が2階部分の2階建てといわれます。

国民年金(基礎年金)は自営業者や学生などの「第1号被保険者」、会社員や公務員などの「第2号被保険者」、専業主婦(夫)などの「第3号被保険者」の3つの種別に分かれています。第1号被保険者と第3号被保険者は国民年金のみ、第2号被保険者は国民年金プラス厚生年金を受給できます。

■年金額の計算方法

国民年金と厚生年金それぞれの受給額を計算式から求めていきましょう。

●国民年金の受給額

保険料の納付期間が40年(480カ月)を満たしていれば、満額が支給されます(2023年度は79万5000円)。納付期間が40年に満たない場合は次の計算式で求めます。

<基礎年金の計算式>
79万5000円(満額)×保険料納付済月数÷480カ月

※保険料の全額免除や半額免除などの免除期間がある場合は、免除の種類によって決められた割合をかけて計算します。

国民年金は、基礎となる額は定額であり、保険料を納付した期間によって受給額が決まるため、比較的簡単な計算で求めることができます。

●厚生年金の受給額

厚生年金の場合は、加入期間(保険料を納付した期間)と加入期間中の報酬(給与・賞与)に応じて受給額が変わってくるため、計算は多少複雑になります。報酬が増えるに従って、受給額も増えていくため(上限あり)、2階部分にあたる厚生年金を「報酬比例部分」といいます。

報酬比例部分の計算は、報酬額の求め方が変わったため、2003年3月までと2003年4月以降に分けて計算します。

<報酬比例部分の計算式>
①2003年3月以前
平均標準報酬月額×7.125/1000×「2003年3月までの加入期間の月数」

②2003年4月以降
平均標準報酬額×5.481/1000×「2003年4月以降の加入期間の月数」

※7.125や5.481は生年月日ごとの乗率

①と②を足したものが報酬比例部分となります。

平均標準報酬月額とは、毎月の給料を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額の加入期間の合計額を、加入期間の月数で割って求めた平均額のことです。一方、平均標準報酬額は、標準報酬月額の合計額と税引前の賞与総額から千円未満を切り捨てた標準賞与額の合計額を加入期間の月数で割って求めた平均額です。

かいつまんでいえば、平均標準報酬月額は、加入期間中の月給の平均額、平均標準報酬額は年収(月給+賞与)を12で割った額の加入期間中の平均額となります。

また、これらの計算にあたり、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じますが、ここでは省略します。

<報酬比例部分の受給額の計算例>
例えば、年収600万円(月給40万円+賞与120万円)の人が2003年4月以降に20年間厚生年金に加入した場合の報酬比例部分の額を計算してみましょう。

50万円(年収÷12)×5.481/1000×240カ月=65万7720円

報酬比例部分の年金額は65万7720円となりました。 実際に受給できる年金額は、この金額に基礎年金が加わります。基礎年金を満額受給できるとすると、年金額は145万2720円(月額12万1060円)※になります。 ※2023年度の基礎年金の満額で計算

■厚生年金受給額の早見表

厚生年金の報酬比例部分の概算を年収別、加入期間別に一覧表にしてみました。なお、計算には2003年4月以降の計算式を用いています。

  • 【早見表】年収別の「厚生年金受給額」をチェック!

    ※筆者作成

この金額は厚生年金(報酬比例部分)の年額です。実際の受給額は、これに国民年金(基礎年金)の年額が加わります。

■公的年金の平均受給額

現在、年金を受給している人の平均受給額(月額)をみてみましょう。

  • 出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

厚生年金の平均額を受給している人が、基礎年金は満額受給できると仮定すると、令和3年度の基礎年金の満額は6万5075円なので、報酬比例部分の月額は8万590円となります。年額にすると96万7080円となるので、早見表から近いところをみていくと、年収500万円の人が35年間(あるいは年収700万円の人が25年間)厚生年金に加入することで受給できる金額だと見当をつけることができます。

■もっと正確に知りたい人は…?

早見表はあくまでも概算なので、自身の年金記録をもとに年金額を知りたい人は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認するとよいでしょう。

ねんきん定期便には、これまでに納めた保険料の累計額、これまでの年金加入期間、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されています。35歳、45歳、59歳は封書、それ以外はハガキで送られてきます。また、年金記録はインターネットサービスの「ねんきんネット」にアクセスすれば、パソコンやスマートフォンでも確認できます。利用登録をするにはアクセスキー(ねんきん定期便に記載)が必要ですが、ない場合でもマイナンバーカードがあれば利用できます。

将来受け取れる年金額が分かれば、老後の資金計画を立てられます。それによって漠然とした不安を小さくできるはず。ぜひ、ご自身の年金の見込み額を確認してみてください。