三菱自動車工業が5月25日に発売する新型軽自動車「デリカミニ」は「オフロード性能」を売りにするスーパーハイトワゴンだ。大径タイヤを履く4WDモデルの足回りには専用チューニングを施したというが、悪路走破性は本物なのか。特設コースのデモ走行を見てきた。

  • 三菱自動車「デリカミニ」

    「デリカミニ」は悪路に強い?(本稿の写真は撮影:原アキラ)

「デリカミニ」で疑似悪路に突入!

デリカミニが公開されたのは2023年1月の「東京オートサロン」だった。クルマの周りに来場者が“群がる”様子からも人気の高さがうかがえたが、実際のところ受注もかなり好調な模様。予約受注(1月13日~4月5日)はすでに9,000台に達していて、月間販売目標の2,500台をはるかに上回っている。同社幹部は発売日までに受注台数を倍増させたいと発言。なかなかすごいことになっている。

4月8日には、東京・昭島市のアウトドア専門商業施設「昭島モリパーク アウトドアヴィレッジ」でデリカミニの発表イベントが行われた。現地では悪路でのデモンストレーション走行も見ることができたので、オフロード性能がどれほどのものなのか確認してきた。

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  • 「昭島モリパーク アウトドアヴィレッジ」に出現した三菱自動車「デリカミニ」

デリカミニのコンセプトは「DAILY ADVENTURE」(日常に冒険を)。魅力はエクステリアデザイン、特にその顔つきだろう。フロントフェイスは下側半円形のヘッドライトに「ダイナミックシールド」と呼ばれる縦型のプロテクターを組み合わせる。ブラックアウトしたフェンダー周りは、「デリカ」というよりも本格オフローダーとして人気だった初代あるいは2代目「パジェロ」を彷彿させる雰囲気。「サファリ」などタフなラリーシーンで名を馳せた三菱らしさがぷんぷんと漂っている。

会場を訪れたお客さんからは「カッコかわいい顔が好き」「やんちゃな男の子のよう」などの声が聞かれた。ランドローバー「ディフェンダー」にそっくりとの意見もあるにはあるが、軽自動車にはそうした例が過去にもあるので問題にはならないだろうし、逆にオフローダー的なイメージを増幅する要因にもなっている。

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    本格オフローダーを思わせる外観が「デリカミニ」の魅力だ

受注の数字からも、デリカミニのオフローダーっぽさが受けている様子が読み取れる。受注の内訳は4WDモデルが6割、ボディカラーもアウトドアテイストの「アッシュグリーン」系が計4割を占める状況だ。

一方のインテリアは基本的にはベースモデルの「eKクロススペース」を踏襲しているものの、ステアリングヒーターや撥水シートなどアウトドア派には嬉しいアイテムが標準装備となっている。

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    「デリカミニ」は軽スーパーハイトワゴン「eKクロススペース」に置き換わる形で三菱自動車のラインアップに加わる

デリカミニのライバルは、ダイハツ工業「タント ファンクロス」やスズキ「スペーシア ギア」といったアウトドアテイストのスーパーハイトワゴンたちだ。ただ、ライバルたちはコスメチューンの範疇にとどまっているのに対して、デリカミニでは4WDモデル専用として足回りを作りわけている(FFモデルもある)。今回のイベントでは自慢のオフロード性能をアピールするため、傾斜路、大きな凹凸のモーグル路、スリップからの脱出を模したローラー路面という3つのデモンストレーションコースを設置。そこをデリカミニで走破する場面が体験できた。

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    果敢にも模擬オフロードコースに侵入する「デリカミニ」

まずは左に20度傾く傾斜路に侵入。背が高く幅が狭い車内に乗り込んでいるとそのままゴロンと倒れてしまいそうな感じがするのだが、実は全く問題ない。タイヤが浮いて3輪の状態になっても、まだ限界の半分程度とのことだ。

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  • こんなに傾いていても、実力の半分程度しか発揮していない状態であるという

次のモーグル路では、ストロークが大きく当たりがしなやかな前後左右のサスペンションが最大まで伸び縮みした状態に。それでもタイヤは常に路面に接地したままで、しっかりと乗り切ることができた。

最後のローラー路面では、アクセルを踏むと一瞬だけメーターにスリップマークが表示されたが、だんだんと空転が抑制されていき、そのままクルマまかせにしているだけですんなりと脱出できてしまった。

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    わざとタイヤを空転させるローラー路面でも難なく発進できていた

なかなかハードな疑似オフロード走行だが、「オフロードモード」を起動させるためのボタンを押すなど、特別な操作を行う必要は全くなかった。シフトをドライブに入れただけで、3つの場面を無事クリアしてしまったのだ。

“増岡チューン“のスペシャルな足回り

デリカミニの足回りを開発するにあたっては、誰もが知る三菱の名ラリードライバー増岡浩氏の意見を取り入れたとのこと。現場では増岡氏本人の口から説明を聞くことができた。

「デリカミニが採用したグリップコントロールは、スタックからの脱出時に大変有効な機能です。通常のトラクションコントロールは、スリップしているタイヤをABSのブレーキで止めつつ、反対側のタイヤを動かして脱出するというシステムですが、ほかと大きく違うのは、最初にタイヤに詰まった雪や泥をタイヤの遠心力でふき飛ばし、タイヤ本来のグリップ力を回復してからコントロールする点です。出力制限をほとんどかけていないので、アクセルを踏めばドライバーの意のままにどんなところでもどんどんいけるはず。逆に制御が効きすぎると出力が下がりすぎ、スタックからの脱出時にクルマは無反応になってしまうんです」

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    「デリカミニ」の発表イベントに駆け付けたラリードライバーの増岡浩氏

一方で、雪道や砂利道など滑りやすい路面を普通に走る時には、出力を下げて車を制御するスタビリティコントロールが別の形で機能する。スタビリティコントロールとトラクションコントロールをわけて考えたのがグリップコントロールであり、積極的にタイヤを駆動させて脱出するというのが“増岡チューン”の考え方だ。

デリカミニの4WDモデルが履く大径タイヤも悪路走破に効果があるそうだ。増岡氏の説明は以下の通り。

「4WD車には大径タイヤを採用しました。車高にすればわずか10mm(増岡流の読み方は『とおミリ』)アップですが、されどとおミリ。悪路の走破性という意味では、最後におなかを擦るか擦らないかというギリギリのところで効いてくるんです。また、三菱の4WDシステムの魅力は、スリップしてから四駆に切り変わるオンデマンド方式ではなく、常に後輪にトラクションがかかるビスカスカップリング方式の4WDを採用している点です。それが悪路の走行安定性に効いてくる、というのが三菱自動車の4WDの考え方です」

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    「とうミリ」の車高アップがギリギリのところで聞いてくると増岡氏

高い操縦安定性と乗り心地を併せ持つデリカミニは、軽の枠を超えた仕上がりになっているようだ。

会場には、アウトドアブランドのコールマンとコラボしたレッドカラーの車体や登高線の模様をラッピングしたワンオフモデル、サンシャインオレンジの「アクティブトーンスタイル」、アッシュグリーンの「ワイルドアドベンチャースタイル」など、さまざまなスタイルのデリカミニが並んでいて、いずれも来場者に大人気だった。現地にはデリカミニのCMに出演する俳優の水川あさみさんがスペシャルゲストとして登場。あわせてお披露目となったデリカミニの新キャラクターは犬っぽいが、三菱自動車側はデリカミニの「化身」だと紹介していた。

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    三菱自動車「デリカミニ」のCM発表会に登場した水川あさみさん。抱いているのがデリカミニの化身だ

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