「語弊がある」や「語弊」は、誤用されがちで、その意味や使い方を正しく把握できていない人が多い言葉です。

本記事では「語弊がある」や「語弊」について、より詳しい意味や、複数シーンにおける使い方と例文を紹介します。「語弊を生む」「語弊を恐れる」「語弊を招く」などの表現は正しいのかや、「語弊」と「誤解」「失言」との違い、類語や英語表現もまとめました。

  • 語弊があるとは

    「語弊がある」や「語弊」について、意味や正しい使い方、誤用などを紹介します

「語弊がある」の意味とは

まず「語弊(ごへい)」とは、言葉の使い方が適切でなく、誤解を招きやすい言い方のことや、それによって起こった弊害のことを指します。

そして「語弊がある」とは、「言い方に誤解を招く可能性がある」という意味です。

例えば、今から自分が言うことが相手を不快にする可能性を考慮して、「悪く捉えないでほしいのですが…」という意味合いの前置きとして「こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが…」などの形でよく使用します。

「語弊」の由来・成り立ち

「語弊がある」の「語弊」という言葉に含まれる、それぞれの漢字の意味や由来に着目してみましょう。

「語」は「話をする」「言葉」「伝える」といった意味を持つ漢字です。

「弊」は「弊害」という言葉で使われるように「良くないこと、害になること」や、「ぼろぼろになる」「弱る」などの意味を持ちます。

そしてこの二つを組み合わせた「語弊」は、「言葉の伝え方のせいで害がある」「言葉が良くないこと」といった意味になります。

「語弊」と「御幣」は意味も由来も無関係

パソコンやスマホで「ごへい」を変換しようとすると、「語弊」のほかに「御幣」と出てきます。

「御幣」とは、神祭用具の一つで、お祓いの際などに使われるものです。同音異義語で、入力の際に見間違いやすいものの、意味も由来も無関係なので注意しましょう。

「語弊がある」の正しい使い方と例文

  • 「語弊がある」の使い方と例文

例文を参考に、「語弊がある」の使い方のイメージを捉えましょう。

「こういう言い方だと語弊があるけれど、もう少し丁寧に仕事をした方がいいかもしれないね。」

「語弊がある」は、この例文のように苦言を呈する際など、相手が不快な思いをする可能性があるときや、言葉の使い方に自信が持てないときなどによく用いられます。

この場合は、「決して雑と言いたいわけでも、仕事ぶりを評価していないわけでもないので、悪く捉えないでほしいのだけど…」というようなニュアンスを表しています。

「語弊があるかもしれないが、あの案件は受注できなくて良かったと思うよ。
納期にかなり無理があったからね。」

「案件を受注できなくて良かった」という部分だけを聞くと、やる気がないのかと思われてしまうかもしれませんが、このように前置きがあれば、勘違いを防げるでしょう。

「その言い方だと語弊があるので、気を付けた方がいいと思うよ。」

この例文では、相手が誤解を招く言い方をしていることを、話し手が指摘しています。

「先ほどの話に語弊があったかもしれないので、補足させてください。」

このように、自分のした発言に対し、言葉足らずな箇所や勘違いされそうな箇所などがあると気付き、後からフォローする際にも使用できます。

「語弊がある」以外の、「語弊」を含む正しいフレーズ

  • 「語弊」を含む正しい言い回し

「語弊がある」以外にも「語弊」を使った言い回しはいくつかあります。

  • 語弊のある~
  • 語弊のないよう~
  • 語弊が生じる

前後の文脈や文章の構成によって使い分けましょう。

「語弊」を含む間違ったフレーズ

  • 「語弊」を含むよくある誤用

「語弊」という言葉を、間違った表現で使っている文章を時々見かけます。ここでは、よく見られる誤用を紹介します。文章を組み立てる際に、間違わないよう注意しましょう。

【誤用】語弊を生む

前述のように、「語弊」は誤解を招きやすい言い方、誤解の恐れがある言い方といった意味なので、「語弊を生む」は間違った表現です。

「誤解を生む」もしくは「語弊が生じる」が正しい表現です。

【誤用】語弊を恐れる・語弊を恐れずに言うと

「語弊を恐れる」や「語弊を恐れずに言うと」という表現もよく見られますが、こちらも間違った表現です。「誤解の恐れがある言い方を恐れる」といった意味になり、同じような意味が重複してしまうためです。

「相手に誤解や不快感を与えることを恐れる」という意味で使うなら、正しくは「誤解を恐れる」「誤解を恐れずに言うと」です。

【誤用】語弊を招く

「語弊」自体に「誤解を招く可能性がある」という意味が含まれるため、「招く」をつける用法も間違いです。「招く」を使って同じニュアンスの文章を書く場合、「誤解を招く」が正しい表現です。

【誤用】語弊力

「語弊力」という言葉も時折見掛けられますが、本来存在しない言葉です。おそらく「語彙力(ごいりょく)」の間違いから来た言葉だと考えられます。

「語彙力」とは「言葉をどれだけ知っているか、言葉をどれだけ使いこなせるかの力」のことで、「語弊」とは無関係です。

「語弊」と似た言葉の意味と違い

  • 「語弊」と類似する言葉

ここからは「語弊」と意味が似ており、間違いやすい言葉について紹介します。それぞれの意味と違いを確認しましょう。

「語弊」と「誤解」の違い

「語弊」は、話し手の表現方法に問題がある可能性があるときに使う言葉です。対して「誤解」は「聞き手側の間違った理解」という意味で、聞き手の受け取り方を指します。

また、「語弊」という言葉そのものに「話し手の言葉の使い方によって、聞き手を『誤解』させる可能性がある」という意味が含まれます。

そのため、前述のように「語弊を生む」「語弊を招く」といった表現は、意味が重複するため正しくありません。「生む」「招く」などの言葉を後ろにつける場合は「誤解」を使用しましょう。

「語弊」と「失言」の違い

「語弊」は、表現の仕方のせいで、話している人の気持ちや意図とは違う捉え方をされるかもしれない言い方であるのに対して、「失言」は表現の仕方に関わらず、言うべきではないことをうっかり言ってしまうことを意味します。

つまり、「失言」は話し手の意図とは関係なく、発言をしたこと自体に関わるため、同じ意味で使うことはできません。

「語弊がある」の類義語・言い換え表現

ここでは、「語弊がある」とほぼ同じ意味で使える言葉を紹介します。

誤解を与える・誤解を生む

「誤解」は聞き手側が間違った解釈をするという意味ですが、そこに「与える」や「生む」をつけることで「話し手側の問題によって、聞き手が誤解してしまうような表現をした」という表現ができます。

「あなたの言い方は、相手に誤解を与える。」

そもそも「語弊」という言葉に「話し手が誤解を与える」というニュアンスが含まれるため、言い換え・書き換えを行う際にはこの例文のような表現を用いると、元々のニュアンスからあまり印象を離さずに文章を組み立てられます。

齟齬がある・齟齬をきたす

「齟齬(そご)」とは「物事がうまくかみ合わない、食い違うこと」という意味で、話し手の意図と違った意味で伝わっている、という点で「語弊」と似た意味を持っています。

ただし言葉の意味が誤って伝わったという結果は同様であるものの、原因が話し手と聞き手のどっちにあるのか、という点でニュアンスの違いがあります。

「語弊」は先に述べたように、話し手に原因があるときの表現ですが、「齟齬」はどちらに原因があるのか、またはどちらにもあるのかなどが明確ではありません。

「私とあなたの認識には齟齬があるようだ。」

適切でない

「適切でない」とは、目的に当てはまらない、ふさわしくないという意味です。「言い方が適切でない」「表現が適切でない」といった使い方をすると、「言い方に問題がある=話し手側に原因がある」ことになるため、「語弊がある」に近い意味合いで使えます。

「あなたの言い方は、主語が分かりづらく適切でない。」

この文では、「話し手の言い方が適切ではない=語弊がある」というニュアンスで使われています。

勘違いされそう

「勘違い」は「誤解」と同様に、聞き手側の状態を表す言葉であり、間違った状態で解釈することです。「勘違いされる」と受身形にすると、「語弊がある」と似た意味で使えるため、言い換えに利用できます。

「この文章のままでは、こちらの意図を勘違いされそうだ。」

この例文では、「文章の構成や表現に問題があるために、相手に勘違いされる恐れがある=語弊がある」と読み取れます。

「語弊がある」の英語表現

  • 「語弊がある」の英語表現

「語弊がある」の英語表現は、「be misleading」が代表的です。

例えば、「その言い方は語弊がある」と言いたい場合は、「That way of saying is misleading.」などと表すことができます。

「mislead」を使って、「I mislead you with my poor explanation.(私の説明が悪くて、あなたに誤解を与えてしまった/語弊があった)」などと表現することもできます。

ただし、「mislead」には相手を誤解させるという意味の他に、欺く、だますといった意味もあります。日本語の「語弊がある」は、故意に誤解させようという考えが話し手にある場合には使われませんが、英語の「mislead」の場合は故意である場合もあるので注意しましょう。

「語弊がある」をはじめ、「語弊」を使った正しい言い回しを覚えよう

「語弊がある」や「語弊」について、意味や使い方を解説しました。

「語弊」は誤用されることの多い表現です。「語弊がある」をはじめ、「語弊が生じる」などは正しいフレーズです。

しかしよく見聞きする「語弊を生む」「語弊を恐れずに言えば…」「語弊を招く」といった言い回しは実は間違いで、これらは「誤解を生む」「誤解を恐れずに言えば…」「誤解を招く」とするのが正しいです。

「誤解」と「語弊」を間違えないためには、「話し手に問題がある場合は語弊」「聞き手の受け取り方を指すのが誤解」と覚えておくと間違えにくくなりますよ。