ビジネスでの挨拶や年賀状など、特にフォーマルな場でよく見聞きする「共々」という言葉について、正しい意味や使い方は理解できていますか。
本記事では、共々の意味や使い方とシーン別の例文を紹介します。目上の人を含めていいのかや結婚式で使えるのか、類語や英語表現もまとめました。
「共々」とは? 意味や読み方を解説
早速、「共々」についての基本的な意味などを見ていきましょう。
共々の意味
「共々」とは、「一緒に何かをする様子」「同じようである様子」という意味です。
2人以上の人が、一緒に同じことをしたり、同じ状態であったりすることを表します。
「夫婦共々」などのように、「〇〇共々」という形でよく使用されます。
共々の読み方
「共々」は、「ともども」と読みます。「共」という漢字には、「一緒に」という意味がある他、「私共」のように、複数を表す接尾語でもあります。
正式な書き方は「共共」ですが、「共々」と書くことが一般的です。
「共々」の使い方と注意点
「〇〇共々」とは、「○○揃って」「○○と一緒に」ということを表しています。
「夫婦共々、感謝申し上げます」などのように、○○の部分には、夫婦、親子、社員などがよく使われます。
目上の人を含めて使うのは失礼?
「共々」が指す対象は、身内です。「夫婦共々」と言った場合は、自分と自分の妻(夫)を指しています。
相手や相手側の人を指して「共々」を使うと失礼にあたるため、注意しましょう。
例えば、「ご夫婦共々、お越しください」や「お子様共々、おいでください」と言うと失礼にあたります。この場合は、「共々」ではなく、「ご夫婦でお越しください」「お子様とご一緒においでください」などと言います。
重ね言葉(忌み言葉)なので結婚式には使えない?
結婚式で避けられる「重ね言葉」とは、「重ね重ね」や「しばしば」など、同じ言葉の繰り返しを意味します。結婚しても離婚をしてまた結婚を繰り返す、と連想されるため、結婚式などでは「忌み言葉」として避けられています。
「共々」も言葉を繰り返していますが、「夫婦共々」という言い方は一般的であり、前後の文脈からもポジティブな意味合いであることがわかるので、それほど気にし過ぎる必要はないと言えるでしょう。
「共々」の例文
「共々」は特にビジネスシーンで使われることが多い他、親戚や日常の付き合いでも使用する場合があります。ここからは、使うシーンと例文を紹介します。
ビジネス編
「部下の○○共々、よろしくお願いいたします。」
「社員共々、感謝申し上げます。」
1つ目の例文は、上司が部下の○○さんと一緒に、取引先に挨拶をしているシーンです。上司が取引先に対し、部下(つまり身内の○○さん)を紹介する形です。
また、社長や役員などもよく「社員共々」などの形で「共々」を使います。2つ目の例文では、自分も含めて、社員や会社全体が感謝している旨を伝えています。自分だけでなく社員全員で感謝していると伝えられれば、受け取る側もよりうれしいでしょう。
「社長共々、これからも末永くよろしくお願いいたします。」
この場合は、例えば社員が取引先への挨拶として、「社長を含めて、会社全体をよろしくお願いいたします(会社全体で頑張ります)」といった意味で使っています。
この社員にとって、社長は目上の人物ですが、対取引先で考えると、社長も身内になります。そのため、このように「社長共々」という表現を用いることができます。
なお社長自らは、「社長共々」とは言わず、前述の「社員共々」などと言います。
お祝いごとや日常、年賀状編
「これからも夫婦共々、よろしくお願いします。」
結婚式などフォーマルな席の挨拶でよく使用されるフレーズです。夫か妻どちらかが述べる言葉で、「夫と妻、どちらもよろしくお願いします」という意味です。
今までに言ったことがある人や言われたことがある人も多くいらっしゃるでしょう。
「親子共々、これからよろしくお願いいたします。」
「親子共々」は、引っ越しや新しいコミュニティーに入ったときなどによく使用されます。「親も子どもも新しく加わりましたので、みなさん仲良くしてください」といった意味です。また子供が通う学校の先生への挨拶や、家族ぐるみの付き合いが想定される際などにも使われます。
「あけましておめでとうございます。
昨年は家族共々大変お世話になりました。今年もどうぞよろしくお願いします。」
「共々」は口頭だけでなく、書面やメールでも使われます。特に年始の年賀状でよく見られるフレーズです。この場合、「家族全員がお世話になりました」という意味です。
家族同士の付き合いの場合は、年賀状を一家で一通送る場合も多く、その際に「親子共々」や「家族共々」などの表現がよく使われます。
「共々」の類語・言い換え表現
フォーマルな席や挨拶で使用されることが多い「共々」ですが、似た意味のフレーズには、どのようなものがあるのかを紹介します。
共に
「共に」は「ともに」と読みます。「共々」に比べて、少しくだけた印象で、日常生活で使用されることが多い言葉でしょう。
こちらも2人以上が同じ状態であることや、2人以上で同じことをするという意味があります。
例えば、「夫婦ともに風邪をひいています」は、「私(夫)も妻も風邪をひいています」または「私(妻)も夫も風邪をひいています」という意味です。
なお「共に」は、「春の到来と共に、日焼け関連グッズの売り上げが好調だ」などのように、「あることに伴い、別のことが同時に起こる様子」を表すときにも使用します。
一緒に
「一緒に」は、2人以上で同じことをするときや、区別のないこと、一つにまとめることなどの意味を持ちます。
こちらもややくだけた印象になるため、親しい間柄で使うことが多いでしょう。
一斉に
「一斉(いっせい)に」は、複数人が同時に揃って何かをするときや、等しいことを表す際に使います。
「一緒に」とも似ていますが、「一斉に」は「一緒に」よりも「同時に揃って」といった意味合いが強いと言えるでしょう。例えば「一斉に立ち上がる」には、全員が同時に揃って立ち上がるというニュアンスが含まれています。
また「一斉に」は、人数が多いというニュアンスがあります。
一同
「一同(いちどう)」は、「〇〇一同」などの形でよく用いられ、〇〇に含まれる全員を表します。セレモニーの場や挨拶などで、「社員一同」「卒業生一同」といった言葉をよく耳にするでしょう。
「社員共々」の場合、社員の一部なのか、全員なのかは厳密ではありませんが、「社員一同」となれば、社員「全員」を意味しています。
また、ご祝儀やお香典など、冠婚葬祭の差出人として「社員共々」とは使いませんが、「社員一同」を使います。
目上の人を含む場合は「ご夫婦で」「お子様とご一緒に」など
前述のように、目上の人を含めた人々を指す場合は、「ご夫婦でお越しください」「お子様とご一緒においでください」などと言います。
「一緒に」は、「ご」をつけて、「ご一緒に」と敬語表現に変えることを忘れないようにしましょう。また、「お越しください」「おいでください」など、敬語を併せて使いましょう。
「共々」の英語表現
国際化が進み、昨今では英語で挨拶をする機会も増えています。「共々」は英語ではどのような表現をするのでしょうか。
「共々」は、以下の単語などで表現できます。
- together(一緒に)
- with(一緒に)
- we(われわれは)
例文も見てみましょう。
・「Me and my family, together, are happy to hear that.」
(私や私の家族共々、その知らせにうれしく思います)
・「I'm going to the party with my wife.」
(パーティーには夫婦共々参加いたします)
・「We, all the staff together, are looking forward to seeing you again.」
(スタッフ一同、またの来店を心待ちにしております)
ぜひ参考にしてみてください。
「共々」を使って、挨拶や感謝をスマートに伝えよう
普段何気なく使っている「共々」という言葉は、フォーマルな席で使用する場面が多い言葉です。だからこそ、目上の人への使い方やルールを、正しく覚えておくといいでしょう。
いざというときにスマートに使えるように、ぜひ常日頃から意識をしてみてください。