また、本作に出演したことで、「みんな見えないところでいろんな人生が動いているんだな」と感じたという。

「拓哉と咲良は普通の夫婦に見えるけど大きい問題を抱えていて、そういう人って世の中たくさんいるんだろうなと。病気に限らず、何かを抱えながら生きている夫婦や家族はたくさんいるということに気づかされましたし、もし自分や身内、近しい人ががんになったら必ずこの作品を思い出すだろうなと思いました」

拓哉と咲良の夫婦関係については、「(拓哉が)がんになったから本音でしゃべれるようになった夫婦。(咲良は)夫ががんになったことで自分の意見をちゃんと主張できるようになり、それは一つの彼女の成長だったと思います」と捉えている多部。

そして、「咲良は夫に気を遣っているようで、最終的には自分の意見をしっかり言う。そこは似ていると思います」と自身と咲良の共通点も。多部は昔から本音をしっかり言えるタイプだったようだが、最近友達と話しているときに「全員が全員、未華ちゃんじゃないんだよ(笑)」と言われ、はっきりそうだと気づいたという。

現在、1児の母でもある多部。インタビューの最後に、本作が自身にとってどんな作品になったか尋ねると、「育児と仕事の両立が始まって参加できる作品が限られてきてしまっている状況ですが、今回の作品は参加できてすごくうれしい作品になりました。内容はもちろん、出会えた人たちも含めて、とてもいい機会になりましたし、育児との両立の中でこれを選んだ自分はすごく幸せだったなと思います」とにっこり。今後も「本当に参加したいと思う作品」との出会いを探しながら女優として挑戦を続けていく。

■多部未華子
1989年1月25日、東京都生まれ。2002年に女優デビュー。2005年公開の映画『HINOKIO』『青空のゆくえ』でブルーリボン賞新人賞を受賞。2009年にはNHK連続テレビ小説『つばさ』のヒロインも務め、2010年には『農業少女』で読売演劇大賞女優賞・杉村春子賞、エランドール賞新人賞などを受賞。近年の主な出演作に、ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(2020)、『マイファミリー』(2022)、映画『空に住む』(2020)、『流浪の月』(2022)など。3月30日より上演のCOCOON PRODUCTION 2023『シブヤデマタアイマショウ』に出演、6月17日より上演のNODA・MAP 第26回公演『兎、波を走る』に出演予定。

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