――日曜日の朝、『ゴースト』放送終了直後になるとSNSで「アラン様」「たこ焼き」といったワードがトレンドに上がり、毎週話題を集めていたのはご存じでしたか。

それはもう、よく知ってますよ。共演者のみんなと、今度のトレンドワードにどんなのが入るだろうとか、現場で予想し合っていたことがありました。毎回、放送後にSNSでファンの方たちが熱い感想を書いてくださっているのは、ありがたいなと思っていました。

――『ゴースト』でのアランは、敵側(眼魔)からタケルたちの仲間に転じるまで、波乱万丈というべき数々の試練や葛藤がありました。テレビシリーズと並行して、Blu-rayの特典であるスピンオフドラマ『アラン英雄伝』が作られるほど、重要なキャラクターであるアランを演じていたとき、どんな思いがありましたか。

今思えば、とても重要な役を僕に任せてくださったと、高橋一浩プロデューサー、脚本の福田卓郎さんに感謝しかありません。演じている当時は、これが自分にとってのチャンスなんだと思いながら、とにかくまっすぐに進んでいこうと思っていました。

――『アラン英雄伝』とテレビ本編はリンクしていて、アランの人物像が巧みに作り込まれていることをうかがわせます。高橋プロデューサーと福田さんの戦略的ストーリー作りについては、どう思われましたか。

毎回の台本を読みながら、ストーリーが子ども向けではなくて、大人の目線も意識した複雑な内容だなと思っていました。全話を通してから改めて感じたのは、高橋さん、頭キレキレだなあと(笑)。スピンオフも含めた『ゴースト』の物語は、頭から最後まで見ていくと「このキャラクターの背景には、こんな出来事があったのか」と、後から気づくような展開がいくつかあったんです。でも演じている僕たちは、裏の裏まで考えずに、がむしゃらにやるだけでした。高橋さんからも「あまり深読みはしすぎないほうがいいよ」と言われていましたし、目の前で起こっている状況に対し、真摯にぶつかっていくことだけを意識しました。

――最初は人間との交流に戸惑い気味だったアランでしたが、タケルの仲間となってからは、他のキャラクターとの交流も活発になり、クールなだけでないコミカルな面も観られましたね。

基本的にアランは純粋で真面目な男なのですが、途中から「いじられ」キャラといいますか、真面目であるかゆえに笑いを取るようなシーンも多くなりました。第34話では御成(演:柳喬之)がアランの顔に落書きして、そのまま変身するとか(笑)。第43話には御成が眼魂(アイコン)になり、アランに憑依するシーンがありました。外見がアランで中身が御成というコミカルな芝居は、僕自身ノリノリでやらせていただきました。もともと、コメディージャンルは好きなほうなので(笑)。アランは芯がしっかりしていますから、面白いほうに振ってもまた元に戻って来られると信じながら、思いっきりいじられていました。

――放送当時、ファンの方たちから応援の言葉をかけられたことはありますか。

お手紙やSNSでコメントをいただき、励まされました。また、幼い息子さんが闘病生活を送っているというお母さんから「息子がアランの大ファンで、いつも勇気をもらっています」というお手紙をもらったことがありました。その方だけでなく、アランという役を通じてたくさんの人を応援できる、勇気づけることができたと知り、『ゴースト』に出演して本当によかったなと思いました。

――テレビシリーズ最終回の“その後”を描くVシネマ『ゴースト RE:BIRTH 仮面ライダースペクター』(2017年)や「ファイナルステージ」などを加えると、1年以上もの間アランを演じられたことになります。アランを演じきったときの思いを聞かせてください。

思い出深いのはVシネマの『スペクター』です。ラストに「眼魔の世界」の人々の前でアランが演説をするのですが、高橋さんから「この演説は、磯村本人で考えたらどうか」と提案していただき、台本にあったセリフをすべて自分の言葉に書きかえて撮影に臨みました。1年半演じてきて、アランのことは自分にしかわからない……と自信を持ちながら、頑張ってセリフを書きました。あの演説シーンがアランとしての集大成。それまでずっと演じてきたアランの思いをすべて出し尽くせたと思っています。僕を信じて任せてくださった高橋さんに感謝ですね。

――『仮面ライダーゴースト』当時を今あらためて振り返ると、磯村さんにとってどんな時間だったと位置づけられますか。

若い時代に取り組んだ、とても大切な仕事です。撮影中、監督から厳しく言われたり、演技がうまくいかなかったりしましたが、失敗や挫折を感じ、壁にしっかりとぶつかる時期があの年齢であったこと、しかもそれが「仮面ライダー」の現場だったことに幸運を感じています。一緒に頑張る仲間たちとともに、常に前へ進むことができた。「仮面ライダー」の現場でしか生まれない、特別な時間を過ごした思いが強いです。

――最後に、磯村さんが思う「仮面ライダー」の魅力を教えてください。

永遠の憧れ、ヒーロー……、それに尽きると思います。幼いころの僕は仮面ライダーに憧れ、やがて自分が仮面ライダーとなり、子どもたちから憧れられる存在になれました。今もなお『仮面ライダーゴースト』という作品を愛してくださる方々のため、僕自身も仮面ライダーネクロム/アランだったことを忘れずに、夢や正義の心を貫き通していきたいと思います!

(C)石森プロ・東映