ビジネスで大きな成果を生み出すためには、周囲の知恵を持つ人に相談することが欠かせません。仕事のできる人ほど、1人でできることの限界を理解しており、うまく相談しているのです。

タイパの低い人と高い人の「相談」の仕方の違いを、拙著『なぜ、サボる人ほど成果があがるのか?』(日本実業出版社)より紹介します。

仕事で迷った時のケース

✕タイパの低い人 1人であれこれ悩みすぎる
◯タイパの高い人 関係者の知恵を借りる

「あれこれ考えているうちに時間だけが過ぎて、なかなか行動に移せない」ことはありませんか? 1人で考えすぎずに、周囲の人たちに相談して知恵を借りましょう。

知恵を借りるためには、「周りの人たちそれぞれの得意技」を知る必要があります。あなたの仕事の価業について、「資料づくりなら◯◯さん、プレゼンなら□□さん」などと、「これは、この人が得意だ」を整理しておきましょう。

引き出しに情報を入れておいて、必要なときにいつでも取り出せるようにしておくイメージです。いうまでもなく、引き出しは多いほうが、発想や仕事の幅も広がります。引き出しに入れる情報は、同僚のランチや、近くのデスクの人との立ち話など、日々の中で入手できるもので十分です。

「優秀なビジネスパーソンほど現場を歩き回る(ウォーキング・アラウンド)」といわれます。私の経験では、外資系でも日系企業でも「敏腕」といわれる経営者やエグゼクティブは、会社のフロアーを歩き回って、「どうだ?」と私たちによく声をかけていました。

私がアシスタントマネジャーだったころ、米国本社からきている社長に「先日の会議のプレゼンよかったよ。グッジョブ!」と声をかけてもらい、感動しました。

ほんのひと言の会話でも、仕事の得意技や人柄も知ることができます。共感も生まれやすく、気軽に知恵を出し合える雰囲気のいいチームになるでしょう。

会社の誰かに相談するケース

✕タイパの低い人 「聞きやすい人」に相談する
◯タイパの高い人 「答えを知っている人」に相談する

仕事で困ったときに、誰かに相談することも多いでしょう。このとき、「聞きやすい」だけの人に相談していませんか? 相談する相手については、「答えを知っている・知らない」×「話を聞きやすい・聞きにくい」の2つの軸で整理できます。

「答えを知らないし、聞きにくい人」には、最初から聞かないでしょう。よくやってしまうのが、「答えを知らないけど、話を聞きやすい人」に相談することです。このタイプの話しやすい人は、愚痴を聞いてくれても、明確な答えを教えてはくれません。

「答えを知っている、話を聞きやすい人」が当然ベストです。こんな上司や先輩が身近にいる人は、ラッキーです。あなたもきっと自然と聞きに行っているでしょう。

大事なのは、「答えを知っているが、話を聞きにくい人」です。仕事はできるけれど、おっかなそう、ふだん無口で忙しそうな上司といった感じの人です。

無意識のうちに 避けていることがよくあるタイプの人ともいえます。あなたの視野を広げてくれる可能性があるので、このタイプの人に聞かないのはもったいないことです。こういう人は、話のポイントを短時間でアドバイスをくれるので、タイパの高い行動だといえます。

上司からすれば、部下から頼りにされて聞きにこられると内心うれしいものです。 私も聞きに行って怒られたことは一度もありません。

ただ、最低限のことを準備して から聞くようにしましょう。「どうしたらいいでしょうか?」ではなく「A、B、C の案のうち、私はAがいいと思いますが、いかがでしょうか」といった具合です。

上司に相談するケース

✕タイパの低い人 「抽象的」に相談する
◯タイパの高い人 「具体的」に相談する

上手に相談するポイントは、「具体的に話すこと」です。

あなたは卸売会社の営業課長です。「もっと美容系商品を売りたいのですが、どうすればいいか?」と2人の部下から相談されました。

Aさんは、「がんばってしっかり商談したんですけど、最後のひと押しが足りませんでした」と言います。こう言われても、「なにをがんばっているのか?」があいまいなので、よくわかりません。上司のあなたは、どんな得意先に、どの商品を、どれくらいすすめたのかなど、詳細を具体的に聞き出す必要があります。

一方のBさんは、「都心のスーパーマーケット会社のX社、Y社、Z社の本部の人と商談しました。ところが、Z社ではケース30個入りだと物流コストもかかるため、仕入れが難しいと言われてしまいました。Z社だけ値下げをしてもいいですか?」と 相談してきました。この段階で、あなたは問題点が1ケースの個数だとわかります。

この場合、「値下げは価格競争になるので避けたい。 ケース10個入りをつくって再度商談をしてみよう」などと次につながる解決策も検討できます。

「すごい」「しっかり」などの形容詞や副詞は、できるだけ避けましょう。数字や得意先の名前・肩書など事実情報を交えて状況を具体的に伝えましょう。そうすれば解決につながるヒントを具体的に教えてもらえるはずです。

著者プロフィール:理央周(りおう・めぐる)

マーケティングアイズ株式会社代表取締役・関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科教授。外資系企業数社でマーケティング・マネジャーを歴任後に、起業。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、顧客視点を育てる社員研修を提供する。