仕事は、頭で考えて成果につなげる「価業」と手を動かす「作業」に分類できます。成果をあげるためには、「価業」に集中するための時間を確保する段取りが欠かせません。

一方の作業は、「速くやる」「やめる」「他人に任せる」のいずれかを選択することになります。タイパの高い人は、価業と作業の段取りがうまいのです。

「価業」の時間を確保するスケジュールの立て方のコツを、拙著『なぜ、サボる人ほど成果があがるのか?』(日本実業出版社)より紹介します。

スケジュールは「価業」「作業」で考える

✕タイパの低い人 スケジュールが「真っ黒」
◯タイパの高い人 スケジュールに「余白」がある

新しい価値を生み出す仕事は、5分、10分でできる仕事ではありません。私の場合、クライアントの来期のマーケティング戦略を考えるときや、自分の書籍のテーマを練るときなどは、まとまった時間が必要です。

こうした「価業」に専念するときは、外に出る用事は一切つくらず、集中して取り組む必要があります。それなのに、クライアントとのアポイントや、出版社との打合せだけでスケジュールが真っ黒になっているようでは、価値のある仕事を生み出すための時間がとれません。

できれば週に1日、最低でも週に1日は、アポイントをまったく入れずにサボる日をつくり、集中して「価業」に取り組む時間を確保し、「作業」だけに追われないようにしましょう。

そのためにも、その日の予定だけではなく、1週間、1ケ月を俯瞰してスケジュールを確認する習慣をつけることが大事です。1ケ月分を俯瞰し、「カレンダーが黒く埋まりすぎていないか」、つまり予定が入りすぎていないかをチェックすることが重要なのです。

また、週末や月末に、次の週(次の月)のスケジュールを俯瞰して確認することには、予定の失念やダブルブッキングなどにも、早く気づくことができるという効用もあり一石二鳥です。

アポイントは自分の時間も確保

✕タイパの低い人 毎日アポイントがある
◯タイパの高い人 アポイントのない日をつくる

落ち着いて「価業」に取り組む日をつくるためには、必然的に、アポイントが入っている日には、まとめて予定を入れることになります。

例えば、クライアントから打合せの日程調整をするときに、幾つか候補があるとしましょう。そういうときは、なんの予定もない日ではなく、もともと予定のある日の別の時間に打合せを入れるようにしましょう。

スケジュール帳で、空白になっている日には、できるだけアポイントを入れないようにしていけば、価業のための時間をとりやすくなります。1日確保するのが難しい人は、半日だけでも空白の時間を確保したいところです。

もし、人とのアポイントを優先してしまい、自分が落ち着いて考える時間や、価値を生み出す時間をとるのを忘れてしまいがちであれば、「自分とのアポイント」をとるようにしてください。

私の場合、スケジュール帳に「マーケティング戦略を考える」「次回書籍の企画を練る」など、自分自身との約束をとりつけています。こうして時間を確保しておけば、そこにあとから予定が入ることを防げます。

やむを得ない場合をのぞいて、そこでブロックしたスケジュールは動かさないように意識しましょう。定期的に予定を確認し、しっかりと価業の時間を確保するようにしてください。

相手とのスケジュール調整で差がつく

✕タイパの低い人 日程候補を相手に聞く
◯タイパの高い人 日程候補を自分から先に出す

メールで打合せの日程を調整するとき、「◯◯さんは、いつご都合がいいですか?」と聞くのはやめて、こちらから日程の候補を示しましょう。

(ここからメール文面サンプル)

◯◯の件で、お時間を1時間ほどいただけますでしょうか?
失礼ながら先に日程をお知らせしておくと、
・6月1日13時~17時
・6月4日14時~18時
・6月5日10時~12時
のご都合はいかがでしょうか?
ほかの日時のほうがよろしければ、
お手数おかけしますが、候補をいただけますでしょうか?
場所は、差し支えなければ、貴社に伺います。

(メール文面サンプルここまで)

「相手のスケジュールを先に聞かないと失礼ではないか」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。相手にあげてもらった候補日にこちらの都合が合わなければ、かえって手間をかけさせてしまいます。忙しい人ほど、最小限のやりとりで済むほうが喜ぶはずです。

具体的には、所要時間、候補日、場所を示したメール(上図参照)を送れば、相手は予定を確認して返信するだけので、日程調整は一往復半で完了させられるのです。

著者プロフィール:理央周(りおう・めぐる)

マーケティングアイズ株式会社代表取締役・関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科教授。外資系企業数社でマーケティング・マネジャーを歴任後に、起業。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、顧客視点を育てる社員研修を提供する。