――お三方の共演シーンで印象的だったエピソードはありますか?

浜辺:私が印象的だったのは、終盤でやったアクション撮影の時に、段取りの段階でアクションのところにすごく時間をかけていらっしゃったことです。身体づくりもされていたからトータルの運動量が多すぎて、日に日に痩せていく池松さんを観て大丈夫かなと思っていました。

池松:撮影後に仮面を取ったら痩せたと言われていましたね(笑)。

柄本:顔が変わっちゃってる!って(笑)。

浜辺:段取りや、アクション監督の方と庵野さんの打ち合わせがすごく長いんです。その間にみんなで色々お話させていただきました。

池松:確かなんかふたりがお菓子の会話をして盛り上がっていましたよね。

浜辺:ちょうど私がハマっていたグミをおいしいからどうですか?と柄本さんに勧めていた記憶があります。

池松:すごいね。鮮明に覚えてるんだね。

柄本:そんなことあった!?(笑)

池松:いや、ふたりのやり取りだから僕はわかりませんよ……(笑)。僕はその隣で、疲弊しきってぐったりしていたと思います。ふたりしかしゃべってなかったですよ(笑)。

柄本:嘘!?(笑) 俺たち良くしゃべるんだね。でも覚えてない……(笑)

浜辺:(笑)。あと、第2号の変身ポーズが少し特殊じゃないですか。どういう攻撃を繰り出した際の変身ポーズなんだろうって話をしましたよね(笑)。そのとき佑さんが「チョップなんだよ、ここ(変身ポーズ)からこう」って実演して下さって……(笑)。

柄本:でも確かにチョップの練習はしていた(笑)。頭と首へのチョップを練習していたら池松さんが大変に喜んでくれるから僕も調子に乗って動画まで撮ってしまうという……いやその節は失礼いたしました(笑)。とりあえず、裏ではとても楽しい時間を過ごしていました。

池松:怒られますよ(笑)でもおふたりにはすごく救われましたね。浜辺さんはお1人の時は静かなのですが、佑さんと2人になるとすごく元気に明るくなるんです。

柄本:俺、明るいかい?

池松:明るいですよ。この間も追撮で宇部市に行ったんですが、飛行機で2時間くらいずっとしゃべっていました(笑)。

柄本:席が隣だったんですよね。

池松:確かに(笑)。でも楽しかった(笑)。

浜辺:楽しそう!

――作品のテーマ性についてはいかがですか? 『シン・仮面ライダー』には、暴力での解決に対する是非など様々な要素が描かれており、現代社会を反映したテーマも内包しています。

池松:どこまで話していいかのか分かりませんが、本当にたくさんの要素が入っています。暴力について、命について、地球のことや環境問題、継承……現代社会を映し出す様々なテーマが仮面ライダーの世界に盛り込まれ、描かれています。

柄本:『仮面ライダー』自体が描いてきた根本的なテーマに庵野監督が現代的な肉付けを施した感覚があります。あとはオーグメントのデザイン性だったり、俺が驚いたのはSHOCKERが凄くカッコよくなっていたこと。デザインが一新されているから。様々な部分で現代風にアレンジされて、いまの我々が作るという意味合いを持たせているけど、根っこにあるテーマとしては非常に普遍的なものを感じます。

――サイクロン号のデザインもスタイリッシュになりましたね。

池松:いやぁ、すごいですよね。物凄くかっこいいですよ。

浜辺:びっくりしたのは、しゃべっていると後ろからついてくる自動走行システム。

池松:あれは凄かったね(笑)。

浜辺:庵野さんが、「引いて(牽引して)いると何もできないから走らせようか」と言って……。

柄本:え、現場で決まったの!? 本当に!?

浜辺:私も池松さんもヘルメットを持ってるから、それでバイクも押したら何もできないねという話になって。あれはびっくりしました。本当に採用されるんだ!って。

柄本:それで、その後の展開がああいう風になったのかな。すごいな……。しかし、こうしてスタイリッシュにカッコよくなったデザインを見ると、いかにオリジナルのデザインが完成されているかを改めて思うよね。オーグメントは現代風になっているけど仮面ライダーのスーツはオリジナルに近いし、洗練されているから廃れない。まさにシンプルイズベストだなと。

――SHOCKERが「Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling」の略だった、というのも驚きでした。

池松:浜辺さんは覚えるのも大変だったでしょう。

浜辺:そうですね(笑)。TVシリーズ等だと容赦ない絶対悪として描かれた印象でしたが、存在する目的や信念がしっかりあって、すごく深いなと思いました。

池松:そう。SHOCKERはSHOCKERで世界を良くしようと考えていて、そのアプローチが違うことで互いの目的や信念がぶつかります。(柄本に)SHOCKERについて何かあります? ないなら次いきましょうか。

柄本:…そうしようか。

浜辺:(笑)。

柄本:だって大体言われちゃったから(笑)。

――『シン・仮面ライダー』で描かれるヒーロー像についてはいかがですか?
池松:僕が最初に脚本を読んだ印象としてはこれまで自分たちが抱いていたヒーロー像とは違っていて、そんな中で今回自分の役割としては、誤解を恐れずに言うと――「ヒーローを1回ちゃんと人間に戻すこと」だと感じました。そうしないとこの物語は終われないし、継承もできない

柄本:ヒーロー像ってなかなかに難しいですが、僕としてはあまり遠いものとして考えたくない。本作ではフィクションとして「仮面ライダー」という存在を置き、力を手に入れた責任やいかに使うか、あえて使わないという選択をするのかを描いています。ただ、各々におけるヒーローというのは割と地に足の着いた考え方なのではないかと思います。だってみんな、各々の正義の名のもとに働いているし動いているし憧れているし、衣装を着て仮面ライダー第2号という役をやってはいますが、演じている感じとしてはあまり遠くなく、近しい感じで役に取り組みたいなと考えていました。変に「第2号だから」「仮面ライダーだから」というよりはもうちょっと普通の人というところに落とし込んでいけたらと。

(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会