「アイドルのセカンドキャリアを考える 第5回」ビジュアル

元バニラビーンズのレナをナビゲーターに迎え、引退後に異なる仕事に就いて新たな人生を送る“元アイドル”たちに、その後のセカンドキャリアについて話を聞く連載「アイドルのセカンドキャリアを考える」。第5回は独自の音楽性と高いパフォーマンス力で定評のあるフィロソフィーのダンスの元メンバー・十束おとはをゲストに迎える。

大学卒業後に一度は就職を経験し、2015年にフィロソフィーのダンスに加入した十束。彼女は現役時代からアイドル活動と並行して大好きなゲーム関連の仕事もしており、現在は裏方としてeスポーツ関連の会社で勤務する傍ら、ゲーマータレントやMCとしても活動している。今回は十束にアイドル時代を振り返ってもらいつつ、現在の仕事に就いたきっかけ、今後の展望について語ってもらった。

取材 / レナ 文 / 下原研二 撮影 / 曽我美芽

でんぱ組inc.さんみたいになれるかもしれない

レナ 十束さんは大学卒業後、社会人経験を経て、フィロソフィーのダンスの一員としてアイドル活動をスタートさせたわけですけど、もともとアイドルになりたいという気持ちはあったんですか?

十束おとは いえ、芸能界自体に興味がなかったんですよ。大学時代は授業を受けたりアルバイトをしたり本当に普通の学生でした。ただ当時からアイドルは好きだったので、ライブや特典会には足を運んでいて。

レナ ちなみにどんなグループが好きだったんですか?

十束 でんぱ組.incさんやDorothy Little Happyさん、私立恵比寿中学さん、ももいろクローバーZさんなどですね。アイドル黄金期みたいな頃にオタクをやっていたので、どちらかと言うとお布施をする側として大学時代を過ごしていました(笑)。

レナ アイドルを応援する立場だったんですね。ちなみに大学卒業後はどんなお仕事を?

十束 会社が合わなくて辞めたと公表しているので詳しくは言えないんですけど(笑)、すごく大きな会社で働いていました。自由な社風の会社ではあったんですが、自分には合わなくて。

レナ そっか(笑)。フィロのスにはどうやって加入することになるんですか?

十束 フィロのスのオーディションは履歴書がいらなかったんですよ。加茂(啓太郎)さんという方がプロデューサーなんですけど、そもそも募集の告知にも加茂さんの写真だけドンッと出ていて「アイドルになりたい子募集中」みたいな。今思えばすっごく怪しいオーディションでした(笑)。

レナ それは怪しい(笑)。

十束 ただ、加茂さんはでんぱ組inc.さんをすごく好きな方なので、「この人のグループに入れば、でんぱ組inc.さんみたいになれるかもしれない」と思って。

レナ オーディションはどういう内容だったんですか?

十束 歌とダンス、質疑応答だけでしたね。オーディションで入ったのは私と佐藤まりあだけで、あとはスカウトで入ったメンバーなんです。

レナ 全貌が見えない感じだったんだ。

十束 そう、本当に怪しくて(笑)。オーディション会場の外に看板も出てなかったんです。それで道に迷っていたら、あんさん(佐藤)が通りかかって。声をかけたらすごくいい人で「一緒に行きましょう」と言ってくれて、そのままオーディションを受けて2人で合格したんです。

レナ アイドルを作る、ということ以外は何も知らされていなかったんですね(笑)。

十束 どういう音楽をやるのかも知らなかったので、こうなるとは誰も思ってなかったと思います。

レナ 半分騙されたみたいな?(笑)

十束 いや、半分じゃ効かないかもしれないです(笑)。私は王道のアイドル然としたかわいい楽曲やかわいい衣装を想像していたので。でも今思えばいい意味で期待を裏切られました。

アイドルは“愛され力”が無意識に培われる職業

レナ 実際にアイドルになってみて、社会人経験を生かせた部分はありましたか?

十束 “報連相”をしっかりするとか、目上の人に対して正しい言葉遣いで接するとか、遅刻はしないとか……そういう社会人としてのマナーは役に立ったかもしれないです。

レナ 確かに社会人経験がないとマナーの部分は疎かになりがちかもしれないですね。逆にフィロのスを卒業して改めて社会に出てみて、アイドル時代に培ったスキルが役立ったことは?

十束 役に立つことだらけというか、どんなお仕事も人と人が助け合って成立していると思うんです。アイドルは“愛され力”が無意識に培われる職業だと思っていて、「みんなを幸せにしなきゃ!」というモードに無意識になれる。そのモードで誰に対しても接することができるのは、アイドル活動の賜物だと思いますね。たぶん私はアイドル力を持ったまま墓に入るんだと思います(笑)。

レナ それはすごい(笑)。十束さんのアイドルスイッチは睡眠時間以外はオンになってる?

十束 はい。オンのままですね。

レナ 疲れたりはしないですか?

十束 うーん、もうオンの状態が普通になっているんです。アイドルになって気が付いたのですが、私は人に喜んでもらうのが好きみたいなんですよ。それがセカンドキャリアであったり、自分が今後どういう人生を歩んでいきたいかの軸になっていくんだろうなとアイドルを辞めて改めて感じました。

レナ なるほど。

十束 “24時間アイドル”という状態を7年間続けてきたので、自然と「常に誰かに見られている」という意識になったんです。私はアイドルになるまで美容にあまり関心がなくて、美容室に行くのも1年に1回程度だったんですよ。でも、アイドルになってからは「自分がかわいくなることが楽しい」と思うようになって。客観的に自分がどう見られているかを考える力が身に付いたのはアイドル活動があったからこそだと思います。

レナ 確かにオンの時間のモチベーションを保つのは難しいですもんね。

十束 そうなんですよ。だから私はファンの方々に育ててもらったと思っています。ありがたいことに今でもSNSとかで褒めてくれるんです。いつか偶然街でファンの方に会ったら「かわいくなったな」と思ってもらえるようにがんばります。

レナ すごい! 私ならスルーしちゃうかも(笑)。応援してくれたファンへの恩を大事にしているんですね。

夢眠ねむに見た理想のアイドル像

十束 ファンの方にはアイドルを辞めてからも「推していてよかった」と思ってほしいんです。私が真っ当な人生を生きて、幸せになることこそがファンの皆さんへの恩返しになると思うんですよね。だからこそかわいくありたいし、しっかりとセカンドキャリアを歩んでいきたいです。

レナ それは十束さんがアイドルを推していた立場だったことも関係があるのかな?

十束 あると思います。私の場合、夢眠ねむさんが永遠の推しメンなんですけど、彼女の生き方はオタクとして報われたし、すごく幸せな気持ちになったんです。だから自分もアイドルをやるんだったらこういう人生を歩みたいと目標にしていました。

レナ 夢眠さんにはどんなアイドル像を見ていましたか?

十束 夢眠さんはすごく情熱を持ってアイドル人生をまっとうしていて、推していて1回も悲しい気持ちになったことがないんです。卒業ライブも大泣きしたけど、最後は笑顔で見送ることができた。お店をやられたり、ご結婚されたり、そういうことも全部ファンに報告していて。その姿を見て「幸せに生きていてくれてありがとう」という気持ちになったんです。人生は続いていくものなので、アイドルを卒業したら終わりではなく、「またどこかで会えたときに誇れる自分でありたい」と思うようになったのは夢眠さんがいたからですね。

レナ 十束さんにとって推しの存在は大きいんですね。

十束 本当に生きるモチベーションになってます。

フィロのス卒業の理由、メンバーの反応

レナ フィロのスを卒業するきっかけはなんだったんですか?

十束 2019年に体調を崩して、万全な状態でパフォーマンスができないため1週間お休みをいただいたことがあるんです。メンバーが全力でアイドル活動をやっている中、自分は体調を崩して100%で向き合えなくなってしまった。だからきちんと戦力でいられるうちに卒業したいと思ったんです。ただ当時は、メジャーデビューが決まってみんなでがんばっていこうという時期だったので3年間は続けようと。

レナ そうだったんですね。2019年だと直後にコロナ禍が始まりましたけど、当時はどのように過ごしていましたか?

十束 やっぱりアイドル活動の何が一番楽しかったかと言うと、私はファンの方にライブを観てもらって特典会で感想を教えてもらう一連の流れがすごく好きだったんですね。それができなくなったことで生きがいがなくなった感覚にはなりました。でも、コロナ禍をきっかけにYouTubeを始めてみたり、別の方向にシフトチェンジしてがんばろうとも思えたので、嫌なことばかりではなかったです。

レナ 私は「自分がまだアイドルを続けていたらコロナ禍はどうしていたんだろう?」と考えることがあって。自分なら病んでフェードアウトしていたと思うんです。先が見えない状況で新しいことに挑戦するってすごいですよ。

十束 オンライン特典会や配信ライブができるようになったり、レーベルの方々もいろんな施策を提案してくださったりして。メンバーともリモートでダンスのレッスンをしていたので、あまり寂しい気持ちにはならなかったんです。でも、ファンの人に会えないのはやっぱりつらかったですね。

レナ 2019年に辞めようと思ったときはメンバーに相談したんですか?

十束 いえ……メンバーには相談できなかったです。

レナ それは仲がよかったからこそ?

十束 はい。私自身も本当にそう思っていたんですけど、「みんなでずっと一緒にやっていこう」というムードがあって、自分が抜けてしまうことが申し訳なくて。でも、具合が悪くなってライブの途中でステージからはけちゃったり、メンバーに迷惑をかけている自覚があったので、それ以上は迷惑をかけたくないなと。スタッフさんには事前に相談していたんですけど、メンバーに気持ちを伝えたのは完全に辞める決心をしたあとでしたね。

レナ どんな反応でした?

十束 びっくりしていました。「なんで言ってくれなかったの?」というのが素直な気持ちだと思うんですけど、その場でフィロソフィーのダンスは続けていこうという話にもなって。申し訳ない気持ちもありつつ、グループが続いていくことがありがたかったです。だとしたら私もすぐに辞めるのではなく、ちゃんと引き継ぎ期間を設けて、円満に卒業できるようにしなきゃいけないという覚悟が生まれました。

レナ そういう場面できちんと会話ができる関係性は素敵です。

十束 みんな大人だからよかったのかもしれません。10代だったら殴り合いの喧嘩になってたかも(笑)。

レナ そんな(笑)。

十束 勝手に辞めるわけだから喧嘩になってもおかしくないじゃないですか(笑)。でも、みんなが大人で優しかったので、無事に円満に卒業することができました(参照:ベスト・フォー、最後のぶつかり稽古!フィロのス十束おとは卒業公演で新メンバーに愛の継承)。メンバーには本当に感謝しています。

今の自分は何ができるんだろう?

レナ 十束さんは現在、ゲーマータレントやMC、裏方のお仕事をしていますけど、それらのセカンドキャリアはどのように志したんですか?

十束 資格がないと就けないお仕事もあるじゃないですか。アイドル卒業後に何をしたいのか考えたときに、資格が必要なお仕事は今の自分にはできないと一旦選択肢から外したんです。それで「今の自分は何ができるんだろう?」と考えたら、ずっと大好きなゲームに携わるお仕事が一番向いているし、挑戦してみたいことだと気付いた。ありがたいことに同じ時期にゲーム関連の会社の方が声をかけてくださって、その方の下でがんばってみたいと思ったんです。

レナ 以前、吉田豪さんの番組「豪の部屋」に出演した際に、動画編集の勉強をしているなどアイドル卒業後の人生を意識した発言をしていましたよね。

十束 あの頃には卒業すると決めていたんです。グループのことを考えて2、3年後に卒業しようとは思っていたけど、それと当時にアイドルとは別軸で自分自身の人生設計を考えていて。長い間アイドルを続けている人はリスペクトに値しますし、素晴らしいと思うけど、そういう人って本当にひと握りじゃないですか。特に女性アイドルは結婚や出産の問題もありますし。今は両立している方もいらっしゃいますけど、アイドルを辞めるきっかけの1つになるとは思うんです。いざ、自分も卒業を意識し始めたときに「自分は辞めたらどんな仕事をするんだろう?」「足りない能力はなんだろう?」といろいろ考えるようになって。

レナ 十束さんは現役時代にもゲーム関連のお仕事をされていましたけど、当時は特にセカンドキャリアは意識していなかった?

十束 はい。ただ好きすぎて言葉に出していたらお仕事が舞い込んできて、対応しているうちにお仕事が増えていったんです(笑)。実際にお仕事をさせていただいたときに、すごくエンタメ性が高いし、楽しくてやりがいがあると感じて。世界に向けて発信できるコンテンツですし、もっと大きくなる業界だと感じたので、自分も深く関わりたいとは思っていました。

レナ お話を聞いていると、十束さんは女の子の人生で経験しておきたいことをしっかり押さえてる感じがする。大学に進学してきちんと就職して、アイドルのようなキラキラした世界も経験しつつ、今は新しくやりがいが感じられるお仕事をされていて。私もそんな人生を送りたかった(笑)。

十束 でも学生時代はすごく陰キャでしたよ?(笑)

レナ 豪さんのアンテナに引っかかるアイドルはどことなく暗いイメージがあるんだけど(笑)、十束さんは暗いけどダーク感がないというか。自己肯定感をしっかり持ち合わせているような感じがするんです。

十束 学生時代、卒業アルバムにコメントを書いてもらうじゃないですか。クラスの明るい女の子に「十束さんはオタクだけど明るい」と書いてもらったことはあります(笑)。

レナ オタクの中の陽キャというかね(笑)。その性格が人生の先を見ながら前向きに歩んでいける秘訣なのかなと思いました。十束さんは自分の中で目標を立てて、その目標に向けてしっかりと努力を積み重ねてる。自信だったり自己肯定感だったりがないと、途中であきらめてしまったりするのかなと思うんです。なんだろう……育ちのよさなのかな?

十束 確かに褒められて育ってきて、親からは、ごはんを食べただけでも「偉い」、どの洋服を着ても「かわいい」と言われていたので自己肯定感は高いのかもしれないです(笑)。でも、学生時代は本当にクラスに馴染めなくて、暗い青春時代を送っていたので順風満帆ではないですね。ただ、「自分は最高だ」という気持ちは常に持っています。

レナ それはすごい(笑)。

十束 学校が小中高どれも肌に合わなくて。受け入れてもらえない悲しさみたいなものを経験した結果、自分で自分を愛すればすべてが解決すると気付いたんです。それは確かに親からもらった愛情がベースにあったからかもしれないですね。中学受験をしたのも小学校に馴染めなかったからで、「この子たちと同じ中学に行くのはいやだ!」と思ったのがきっかけですから(笑)。

レナ (笑)。その頃から自分の道は自分で決める力があったんですね。

十束 自分で自分を励ましながら生きています(笑)。

十束おとはに感じるゲーム愛

レナ 今のお仕事は具体的にはどんなことをしているんですか?

十束 表に出る仕事としてはMCをやらせていただいたり、ゲーム番組やイベントに出演したり、自分で配信をやったりしています。裏方としてはeスポーツやゲームイベントに携わる会社に所属していて、いろんな方々と協力しながらイベントを作り上げる仕事ですね。

レナ ゲームのイベントを企画するということですか?

十束 はい。まだ入社したばかりなのでいろいろと教えていただいているところですが、主にイベントの企画運営をお手伝いしています。

上司 僕たちの会社がeスポーツの部署を作ったのはわりと最近なので、根っからのeスポーツ好きがそこまで多くなかったんです。なので本当にeスポーツが好きな人にもプロジェクトに参加してもらいたいと思っていて。

レナ 十束さんに声をかけた理由はなんだったんですか?

十束 なかったら悲しいので何か言ってください(笑)。

上司 ゲーム愛もそうですけど、十束さんからはeスポーツを盛り上げたいという気持ちが、お話を聞く中でしっかり伝わってきたんです。あとはやっぱり真面目なところ。こちらが期待した分だけがんばってくれるんじゃないかって。それに表に出る仕事としっかり線を引いて切り替えることもできるだろうと思っていて。これだけ挙げれば大丈夫ですかね?(笑)。

十束 ありがとうございます!(笑)

レナ 期待されてますね(笑)。ちなみに十束さんが携わったイベントはもう開催されていたりするんですか?

十束 いえ、まだ入社したてなので、5月に開催予定のイベントに向けた打ち合わせに参加させていただいているところです。「いいイベントを作ろう!」という時期を一緒に歩ませてもらっていて、すごくいいタイミングでチームに入れてもらえたなと思います。

アイドルの助けになりたい

レナ 改めて社会に出てみての発見はありましたか?

十束 私は自分でパソコンを組めるぐらいにガジェットの知識はあるんですけど、TeamsだったりSlackだったり、社会人の方が使っているツールには初めて触れたんですよ。そういうのはすごく新鮮でした。

レナ そっかあ。アイドルやってると使う機会がないですもんね。

十束 アイドルの子たちが普通の会社で働こうと思ったらExcelやWordの知識は必須だと思うんですよ。でも、いきなり覚えて来いと言われてできることではないから、少しずつでも知識を付けておくと社会に出てからの楽さが変わってくると思います。もし会社に勤めたいと思っている子がいたら、少しずつでもいいから勉強しておくといいかもしれない。

レナ アイドル活動をがんばろうと思うと、そういう勉強の時間をなかなか作れないから大変ではありますよね。

十束 そうですね。私はアイドルってアスリートと同じジャンルだと思っているんです。アスリートの方も大会に向けて練習して、オンオフがほぼない中で準備をされているじゃないですか。アイドルもワンマンライブの数カ月前から本当に白目むきながら必死に生きてるんですよね(笑)。だからファンの方にはそこもわかってほしいというか、皆さんが思っている以上にアイドルは真面目に真剣にやってるんだということを理解してもらえるとうれしいです。

レナ だからこそ報われてほしいし、幸せになってほしいよね。

十束 本当にそう思います! アイドルのみんなには幸せになってほしいので、その手助けができるように私もがんばりたいと思っていて。

レナ それは昨年末にツイートしていたこと?

十束 そうです、そうです。アイドル時代に大学生のキャリアに関するラジオ番組をやっていたんですよ。大学生の子に悩み事をもらって、みんなで答えるという番組をやっていて。そこでキャリアコンサルタントという資格について知る機会があったんです。当時一緒に番組をやっていた人たちが続々とその資格を取っていて、その資格があればもっと専門的に助言ができるかもしれないと思って、私も今年から学校に通う予定なんです。

レナ えーっ! 三足のわらじじゃないですか。

十束 でも通うのは週1でいいんですよ。なのでお仕事と被らないようにスケジュールを組もうと思っています。アイドルの子は「辞めたあとどうする?」というのが大きなテーマの1つだと思っていて。一般的には転職エージェントみたいなサービスを利用すればいいかもしれないけど、「アイドルしかやったことない人間はどこに相談すればいいんだろう?」と悩んでいる人は多いと思うんですよ。その状況を変えたくて。

レナ 十束さん自身はそういう悩みを相談できる人はいたんですか?

十束 私、人に相談しないんです(笑)。もちろん業務的な相談はするけど、将来のことなんかは1人でバンバン決めちゃうタイプで。でも、今は逆に相談されたくなっていて。例えばアイドルが自分と同じような状況になったときに、相談できるのが運営さんしかいないという状況を変えたいんです。中の人に相談するのもいいですけど、外から客観的に自分のことを見てくれて、なおかつ一緒に道筋を立ててくれる人がいたらいいじゃないですか。

レナ それは自分にそういう存在がいなかったから?

十束 そうですね。アイドルは根が真面目な子が多いから相談できなかったり、グループを辞める自分に対して負い目を感じたりすることもあると思うんです。

レナ ゆくゆくはそういう人たちをサポートする会社を立ち上げたりも?

十束 実は一緒にラジオをやっていた方が起業されて、実際にキャリアコンサルタントに関するお仕事を始めたんです。会社員をしながら副業的にキャリアコンサルタントを始めることは可能だと思っているので、チャンスがあればやってみたいですね。アイドルをやっていたからには、その経験を生かせるようなことをやってみたくて。全部は経験だと思うんです。ほかの人からもらったやりたいことの種を自分なりに育てて花を咲かせて、次はその種をまた別の人にあげられたらいいなって。

レナ そうか。意外と種は落ちてるんだ。現役のアイドルの子たちにも探してみてほしいですね。

十束 そうですね。バンバン落ちてると思うので、拾って温めておいて怒られないタイミングで花を咲かせたらいいんじゃないかなと(笑)。

自分がやりたいことに素直に生きてほしい

レナ では最後に、将来について悩んでいる現役アイドルの子たちに何かアドバイスをお願いします。

十束 まず、この企画を否定するわけではないんですけど、セカンドキャリアについて真面目に考える余裕がないくらいに本気でアイドルをやれているのってすごく幸せだと思うんです。なので、まずは不安な気持ちは抱かずにアイドルを思いっきり楽しんでほしい。ただ途中でアイドルの道を逸れることになったら、そこが新しいキャリアが始まる日だと思うので、路頭に迷わないようにしっかりと準備しましょうと伝えたいです。私も自分のセカンドキャリアを精一杯歩んで皆さんに還元にできるようにがんばりますけれど、セカンドキャリアを歩むときに“自分が何をしたいか”“何になりたいか”を謙遜せずに決めてほしいんです。たぶん「自分が普通の会社で働けるのかな?」とあきらめちゃってる子も多いと思うんですよ。そういう子たちはまず自己肯定感を高く持って、自分が何をやってみたいのかをざっくばらんに考えてみてほしいです。アイドルの道から逸れてしまう自分を否定せず、謙遜せず、やりたいことをまず紙に書き出してみる。相談できる人がいなかったらDM開放してるので連絡ください。本当に相談に乗ります!

レナ すごい! 女版・吉田豪みたいになってる!

十束 豪さんよりは明るいアドバイスができると思います(笑)。周りに相談できる人がいない子は私が話を聞くので、まずは自分がやりたいことをちゃんと紙に書いて声に出しましょう。決して恥ずかしいことではないので。その夢はちゃんと叶えられるはずだから、自分がやりたいことに素直に生きてほしいです。

レナ 元アイドルだからこそできるアドバイスもありそうですよね。

十束 何度も言いますけど、やっぱりアイドルには幸せになってほしいんですよ。アイドルに関わらず好きなことを仕事にした人ってとても能力が高いと思うんです。でも変なレッテルを貼られがちなので、そうじゃないってところをアピールできるように私も勉強します。だからこの記事を読んで将来に悩んでいる子がいたら、がんばってなりたい自分になりましょう。あれ、なんか変なセミナーみたいになっちゃいましたね(笑)。

レナ そんなことないよ(笑)。私もDMしようかな。

十束 いつでもお待ちしています!(笑)

レナの取材後記

いやー、おとはすちゃん! かなりパワフルな方でした!
お会いする前までおしとやかなお嬢様なイメージだったので、インタビューさせていただいて、かなりパワーをもらいました。
なによりも本人がアイドルを愛し、アイドルとして愛される素質を幼少期に家族からの愛でたくさん持ち合わせていて。それをアイドル活動でパワーアップさせている。
アイドルになるべくしてアイドルとして選ばれたおとはす。おそるべし!!(笑)
何もよりも現在の上司の方が一緒にインタビューを受けてくださったのが、十束さんが愛されている証拠だと思います(笑)。
私はこんなに人に愛し愛されるアイドルを育て上げたご家族にもインタビューしたくなりました。
どんなふうな子育てをされたら、こんなにかわいい愛される子が育つのか。子育て論も気になります(笑)。
アイドルの皆さん、もし悩み事があったら十束さんにDMしてみましょう!

今回も最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

十束おとは(トツカオトハ)

ゲーマータレント、MC、ライターとして活動する傍ら、eスポーツ事業の裏方スタッフとして従事。プロゲーミングチーム「魚群」に所属している。2015年から2022年にかけてフィロソフィーのダンスのメンバーとして活躍し、卒業ライブは2022年11月に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で開催された。趣味はゲーム、自作PC、ガジェット集め、映画鑑賞、アニメ、マンガなど。
十束おとは(おとはす) (@totsuka_otoha) | Twitter
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レナ

2007年にデビューした女性アイドルユニット・バニラビーンズの元メンバー。バニラビーンズはスウェディッシュポップを意識したサウンドとレトロなビジュアルで渋谷系ファンなどから高評価を得る一方で「ガラス張りトラック生活」などの風変わりな活動でも注目を集めた。2018年9月にラストシングル「going my way」をリリースし、10月のライブをもって解散。バニラビーンズ解散後は、トークスキルを生かしてMC・タレント業をメインに活躍しており、“多摩川のおんな”としてボートレース多摩川の選手インタビュー、生配信の番組進行を担当している。
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