マツダが社長交代を発表した。次期社長は取締役専務執行役員でコミュニケーション・広報・渉外・サステナビリティ・管理領域統括を務める毛籠(もろ)勝弘さん。北米マツダでCEOを5年務めた経歴を持つ営業畑出身の新社長は会見で何を語ったのか。

  • マツダの社長に就任する毛籠さん(左)と現社長の丸本明さん(右)

    マツダの社長に就任する毛籠さん(左)と現社長の丸本明さん(右)

営業系の社長は珍しい?

2023年6月の株主総会後にマツダ社長に就任する予定の毛籠さん。自らの役割としては、2022年11月に発表した「2030年に向けた経営の基本方針」の具体化、実行を挙げる。会見では、業界を取り巻く大きな変化の波を乗り越えるべく、社員全員の力と知恵を結集させていきたいと決意を語った。マツダの今後としては、変化していく時代に適合しつつも「走る歓びで移動体験の感動を量産するクルマ好きな会社でありたい」とした。

2023年3月17日の会見で報道陣から新社長に寄せられた主な質問と回答は以下の通り。

――課題は?

過去3年以上、丸本現社長のリーダーシップで経営改革に注力してきた。実感としては相当、会社の構造がよくなっており、収益を出せる体質へと着実に変わってきている。一方で、特にここ2年は想定以上の外部環境の変化があった。より一層、経営効率を高める必要がある。2030年の経営方針の具体化に向けては、一人一人が全力で実力を発揮できる風土作りが課題。全員野球、総力戦で取り組む。

――アメリカでの経験が豊富だが、どういかすか。

2016年から2021年の途中まで北米マツダのCEOを務め、ビジネスの構造改革に取り組んだ。その過程でいろいろな事柄、例えば政治、経済、州ごとの違い、文化、販売網、法律などに精通することができたことが大きな財産。実行の計画を作り、環境が変わっても迅速にアジャストしていくことで、アメリカでのビジネスを堅調に成長させていきたい。

――来季(2023年4月からの1年)は具体的に課題にどう対応していくか。

やらなければいけない主なことは、まずマツダを成長軌道に乗せること。その大きなドライバーがラージ商品群の展開だ。これを成功させたい。もうひとつはマツダが将来、しっかりと経営効率を高めるため、サプライチェーンを含め全社的な原価低減活動を進め、全体をさらに筋肉質にする。将来のカーボンニュートラル対応に向けた布石を打つことも大切。

  • マツダ「CX-60」

    ラージ商品群の第1弾「CX-60」

――トヨタ自動車との関係、あるいは異業種を含む関係構築をどうしていくか。

トヨタさんとは非常に広範な提携で、重要なビジネス基盤を一緒にやらせてもらっている。それ以外については検討の段階だが、いろいろな人たちとパートナーになって難局を切り抜けていきたい。

――北米事業について。

今の北米マツダは堅調に成長中。新世代店舗は300店舗を目標に進めていたが、間もなく360店舗くらいが切り替わっていく。重要なのは、販売網に投資した現地のディーラーとともに、成長を確かなものにしていくこと。まずは彼らの店舗ごとの販売台数で1,000台をターゲットとし、次は1,200台に取り組む。マツダのビジネスで儲けて、再投資してもらうというサイクルが重要。北米での目標販売台数をいうのは時期尚早だ。電気自動車については、規制にしても細則がまだ出ていない状況で(3月中には出てくると期待しているが)、それをきちんと評価したいし、州ごとに顧客の状況も違うので、現実に立脚した取り組みを着々と進めていきたい。ブランド価値経営をしっかり進めるのが一番ピン。

――社長就任の経緯は。

2022年の暮れも押し詰まったころ、現社長の丸本から「新体制について頭の体操をしておいて」との話があり、正月中、頭を悩ませた。そのときは覚悟ができていなかったし意外だった。

――営業が長いと思うが、マツダの歴史では珍しい。強みは。

マツダの場合はモノづくりの力が非常に強いし、それが強みでもある。営業系の社長は、少し前だが山内(孝)社長がいらっしゃった。マツダの厳しい時に苦労して、再建した方だ。その頃、私は役員になりたてで、そばで見ていて社長の覚悟を実感した。私も、これまでの時間の中で徐々に覚悟を決めて、今ここにいる。

――電動化の加速が課題。どんな決意で取り組むのか。

カーボンニュートラル達成のための手段のひとつとして、避けては通れないであろう取り組みだと思う。マツダはマルチソリューションが強みだが、段階的に電動化に移行する必要があると覚悟している。3つのフェーズで進めるが、マツダのようなスモールプレイヤーはビッグプレイヤーと時間軸が違う。フェーズ3以降、本格的に電動化の取り組みに移行していくと想定している。

――座右の銘と最終学歴。

グローバルのフィールドで長く仕事をしてきた経歴がある。その中で「和魂洋才」を意識してきた。自分の由来、アイデンティティをしっかりと持ったうえで、異なった意見をしっかりと取り入れていくということを、自戒を込めながら、ときどき思い出して仕事に取り組んだ。最終学歴は京都産業大学。