BSフジのドキュメンタリー枠『サンデードキュメンタリー』(毎週日曜12:00~)では、ゲーム芸人・フジタと、自分を捨てた父との再会を追った『ザ・ノンフィクション特別編「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~」』を、きょう12日に放送する。

  • ゲーム芸人・フジタ

アパートの1室で大量のゲームソフトに囲まれて暮らす男がいる。部屋はおろか、廊下や台所に積み上げられたゲームソフト。残された1畳ほどの空間で寝るかゲームをするか。そんな日々をもう何十年続け、集めたゲームソフトは約3万本にのぼる。レアなゲームは衝動買い、そのため金はなく借金は絶えない。

男の名は藤田真也、45歳・独身。もうひとつの顔は「ゲーム芸人・フジタ」だ。幼い頃から没頭してきたゲームの腕でファンを魅了する。だが、華麗な技の裏には、フジタの悲し過ぎる生い立ちが深く関わっていた。

それは小学校入学直前のこと。母親がクモ膜下出血で突然この世を去り、フジタは父親と2人きりに。しかし、父はフジタの同級生の母、シングルマザーの女性と恋仲になり、生活費をフジタに残し、家に帰ってこなくなる。小学2年生から始まった一戸建てでの「独り暮らし」。フジタは同級生の家に入り浸る父を憎み、孤独と悲しみを紛らわせるため、家でひとりゲームに熱中した。それから約35年が経った。

2021年、80歳を過ぎた父はフジタを呼び出し「今まで悪かった、許してくれ」と頭を下げた。「なぜ僕を捨てたのか?」…長年の怒りの一方で、フジタは父を許し、残り少ない親子の時間を取り戻したいと考える。しかし、許したくても許せないことがあった。恨み続けた同級生の母と父の内縁関係が続いていたのだ。

そして、父に異変が起こり始める。カードのキャッシングで膨れ上がった借金。スーパーでは「買ったモノを盗まれた」と大騒ぎ。支給されてもすぐに底を突いてしまう年金。使い道を聞いても何も覚えていない。挙句の果てに「年金を息子が盗んでいる」と思い込む父…。診断の結果は「認知症」だった。

父は認知症になっても内縁の妻に渡す「毎月の3万円」は忘れない。再び、フジタにとって苦しみの日々が始まった。「金を渡さないと関係が終わってしまう」と懇願され、なけなしの金を父に渡すフジタ。まさか自分を捨てた父親の介護をし、恨み続けた内縁の妻に、自分の金を渡すことになろうとは……フジタの心は大きく揺れていた。

やがて父との関係を修復するために、内縁の妻を信じることにしたフジタ。年金をすべて預け、父に渡してもらうことにする。しかし1カ月後、内縁の妻は父の金遣いの荒さに嫌気がさし「やっぱり面倒はみられない」「月末の3万円も受け取らない」とフジタに電話をしてくる。再びフジタと父との葛藤が始まった。過去のトラウマを忘れるにはどうすればいいのか。

フジタは、自分が結婚し家庭を持てば忘れられるのではないかと思うようになる。父もその話を聞いて喜んでくれた。早く孫の顔を父に見せたい…45歳の独身芸人は、遅すぎる婚活を始めるのだが――。