「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というTENGA社が掲げるビジョンに共感した女性社員たちによって、女性向けブランド「iroha」が誕生して10年。水原希子さんを起用したブランド広告が読売新聞朝刊に掲載された3月3日、ブランド10周年を記念して、「女性の性」をテーマに水原さんとirohaを手がける社員たちのトークセッションが行われました。

10年前、“女性の性”はとことん受け身だった

ここ数年でフェムテックやメノテックという言葉が浸透し、セクシャルウェルネスの重要性に人々が気づき、フェムケア市場が一気に拡大した感があります。でも、10年前の景色はまったく違うものでした。その頃は女性の性的欲求は隠されているべきものだったから、“それ”が語られるのは女性同士の内輪話か、男性目線の“エロい女”として。女性向けの記事は「カレに愛される体を作る」「カレを喜ばせるために」という文脈で組まれることが多く、女性の性はとことん受け身だったのです。

「irohaが誕生する前の2010年当時、性の話はタブー視され、男性と違って女性の性的欲求は、まるで“ないもの”として扱われていました。国内外の市場調査を行うと、国内には女性の身体を思いやったサイズや機能のものがなく、男性目線の商品がほとんど。『だからこそ私たち自身が心から欲しいと思えるものを作ろう』と決心し、開発がスタートしました」と、iroha事業部 アートディレクターの渡辺裕子さんが、当時を振り返ります。

「セルフプレジャー」-新たな言葉の発明

  • 左からTENGA社の渡辺裕子さん、西野芙美さん、青城里圭子さん

「さらに、『マスターベーション』という言葉の再定義も行いました。女性たちはオーガズムだけが行為のゴールではなく、寝つきをよくするため、リラックスするため、パートナーとの行為をよりよいものにするべく自分の気持ち良いポイントを探すためなど、マスターベーションをする理由はさまざまでした。そこで、 “自分なりの悦びを見つける行為”と定義し、『セルフプレジャー』と呼ぶことにしたのです」(渡辺さん)。

たしかに自慰行為を表す既存のワードは、正直、どれも大きな声で言うのをためらうものばかり。ところが“それ”に「セルフプレジャー」という新たな名前が与えられると、言葉のポジティブな感覚、喜びや楽しさを含んだハッピーな語感から、これなら羞恥心や罪悪感なく表現できる、と筆者も感じます。「ときめき」を「Spark Joy」と英訳して全米を熱狂させたこんまりさんではないですが、言葉の持つ力、ネーミングがいかに重要かということがわかります。

大丸梅田店のポップアップストアの成功が転機に

こうして現在までに17種類47アイテムを発売し、セルフプレジャーを「セルフケア」と捉えた幅広いアプローチで製品を開発してきたirohaですが、ブランドが日陰から表舞台に登場するまでの道のりは、やはり簡単なものではなかったそう。

転機になったのは2018年、大阪の大丸梅田店で開催したポップアップストアでした。日本の百貨店にセルフプレジャーアイテムが置かれるという前例のない試みに、13日間で1,500人が来場。女性たちが楽しげにアイテムを選ぶ様子がメディアにも取り上げられ、大丸梅田店5階エレベーター前ポップアップスペースで売上が歴代一位となり、結果は大成功。

「女性向けメディアの掲載も増え始めて、irohaや『女性の性』に関する見られ方が変わってきたのは、ちょうどこの頃です。NHKの朝の情報番組でirohaが紹介され、女性コメンテーターの皆さんが実際に手に取って思い思いの感想を言ってくださるなど、『女性が自身のプレジャーについて考えることは、はしたないことではない。自分で自分の体を知って、プレジャーを得ることは、人生をより豊かにしてくれる』、こういったirohaの伝えたいことが、本当の意味で伝わる時代がやってきたのだと感じました」(国内マーケティング部 部長 西野芙美さん)。

常設店である「iroha STORE大丸梅田店」をはじめ、irohaアイテムを取り扱うお店は、10年間で2,802店舗に拡大。さらにデリケートゾーンケアを取り扱う姉妹ブランド「iroha INTIMATE CARE」の取扱店舗は、約5年間で1万店舗を超え、いまや全国のドラッグストアやバラエティショップで気軽に購入できる環境になりました。

「きもちよさを、自分らしく。」に込めたメッセージ

「女性は二次性徴を迎えてから、心と体は目まぐるしく変化していき、生涯でティースプーンたった1杯程度の女性ホルモンに振り回され、息をつく暇もありません。固有の悩みが多い女性だからこそ、悩みを解決して、それぞれの人生を謳歌してほしいと強く願っています」(iroha事業部 ブランドマネージャー 青城里圭子さん)。

性に関する悩みはもちろん、生理やPMS、妊活、更年期など、ケアするべき不調が生涯を通して各ステージで現れる女性の心身。10周年を迎えたirohaは女性の幸せな人生を包括的に後押しする「フェムケアブランド」を目指して、「女性らしくを、新しく」というブランドのステートメントを、「LOVE MY COLOR きもちよさを、自分らしく。」に一新することも発表されました。女性の性がオープンに語られ始めた時代の変化を受け、女性たちがもっとポジティブに性に向き合えるよう、1人の人間として「自分らしい性の楽しみを見つけよう」という想いが込められているそう。

「やっと女性のためのアイテムが出た! と思った」

この節目の年にブランドアンバサダーに就任したのが、水原希子さんです。「iroha が発売された2013年当時、お店でirohaのアイテムが並んでいるのを見て、『やっと女性のためのアイテムが出た!』と思ったんです」と、ブランドがデビューした頃からのファンであることを明かし、「セルフプレジャーは私たちにとって、とても大切なこと。私がアンバサダーとして発信することで、たくさんの女性たちがセルフプレジャーについて大切な人と話せるようになったらいいなと思います」と語り、会場を沸かせました。

そしてこの日、セルフプレジャーアイテムブランドとして初めて、読売新聞の朝刊にブランド広告が掲載され、「性を楽しむ。女性であることを楽しむ。私の人生を豊かにできるのは、私だ。」というコピーが全国紙の紙面を飾ったのです。性を語ることがタブー視されていた時代から、女性が主体的に自分の性をとらえ、自分でコントロールし、自分で選べる環境になってきたことがうれしい。水原さんの真摯で熱いコメントを聞きながら、素直にそう感じたのでした。

  • 3月3日 読売新聞朝刊に掲載されたブランド広告