職場で「女なのに化粧しないの?」とか「男が育休?」と言われたら、はいそれアウトです! ……という意識は浸透してきていると思います。でも私たちには、自分でも気づいていない決めつけや思い込みがあって、他意も悪意もなく口にした言葉が、実は相手に違和感を与えていることもある。先入観や思い込みのことをバイアスといいます。そんな無意識な思い込みが潜む言葉、「アンコンシャスバイアス」に“アンコン語”と名前をつけて実態を可視化する、ユニークな試みが行われました。

  • 「LIFULL 新生活アンコン語実態調査」発表会にて。左からラランドのサーヤさん、LIFULLの川嵜鋼平CCO、アンコンシャスバイアス研究所 守屋智敬さん、ラランドのニシダさん

無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスは誰にでもある

企画したのは住宅情報サービスでおなじみのLIFULL。2018年から「しなきゃ、なんてない。」というメッセージを掲げ、既成概念から生じる世の中のさまざまな社会課題の解決に取り組んでいます。

「アンコンシャスバイアスは、過去の経験や見聞きしたことに影響を受けて生まれているため、誰にでもあるものです。でも自分にとっては『あたりまえ』『普通だ』と思うことが、人によってはそうではないことがあります」と、この企画で監修を務めたアンコンシャスバイアス研究の第一人者である守屋智敬さん。

  • 「アンコンシャスバイアスは誰にでもあり、自分自身に対するものもある」と話す守屋智敬さん

たとえば「親が単身赴任中」と聞いたら、お父さんのことだと思いませんか? 実家暮らしの人を、「あ、この人まだ親元で暮らしてるのね」と、ちょっと否定的に受け止めていませんか? カップルの新居に招かれて素敵なキッチンを見て、ナチュラルに「奥さん喜んだでしょ~」と褒めていませんか? これらは、「単身赴任するのは父親」「社会人は実家を出るもの」「キッチンを使うのは女性」という思い込みからくるもの。でも母親が単身赴任していたり、実家で家族の介護をしていたり、夫が料理を担当しているケースだって、たくさんある。自分にとっての普通は、必ずしも相手の普通ではないのです。

「社会人になっても実家暮らしなんて甘やかされてるよね」

というわけで、20代から80代の男女(LGBTQ、外国籍、障害を持つ人、シングルマザー&ファザーなどさまざまな属性を含む)1,000人が、“住まい”に関して「実際に言われて違和感を覚えたアンコン語」をみていきましょう。

  • 違和感を覚えた「アンコン語」ランキング(全体)

カテゴリ全体では、1位が「社会人になっても実家暮らしなんて甘やかされてるよね」、2位が「家事がしやすい間取りは奥さんが喜ぶね」、3位が「女性が家を買うなんてすごい!」と「夫婦で新しい家を探すなら、子ども部屋も考えておかないと」が同率でランクイン。

年代別でみていくと、20~30代男性の1位は「家事がしやすい間取りは奥さんが喜ぶね」、60~80代女性では「キッチンは女性が使うものだよね」と「家事がしやすい間取りは奥さんが喜ぶね」が同率1位で、「家事=女性」という思い込みにはシニア世代の女性だけでなく、世代を超えて違和感をもたれていることがわかります。

  • 20~30代男性が違和感を覚えた「アンコン語」

  • 20~30代女性が違和感を覚えた「アンコン語」

また20~30代男女では、3位以内に「社会人になっても実家暮らしなんて(略)」「同棲ってことは結婚するんでしょ」が入っていることから、「社会人は一人暮らしするのが当然」「同棲の次はもちろん結婚」という決めつけに違和感を抱いている人が多いよう。

  • 40~50代男性が違和感を覚えた「アンコン語」

  • 40~50代女性が違和感を覚えた「アンコン語」

40~50代では男性の2位、女性の3位の回答が多岐にわたりました。ちなみに60~80代男性は「長男だから、いつか親と同居するでしょ」が1位で、古くからの慣習に違和感を覚えている様子。またシングルマザー・ファザーでは、1位が「女性が家を買うなんてすごい!」で、「女性が家を買うのは難しい」という思い込みへの違和感がわかります。

  • LGBTQの方が違和感を覚えた「アンコン語」

LGBTQの方の1位は「社会人になっても実家暮らしなんて(略)」で、「甘やかされているのではなく、親の介護や色々な事情もあるのに」という自由回答もあったそう。また2位に「世帯主といえば男性でしょう」「シングルマザー/ファザーって探せる家が限られそう」が入り、世帯主=男性という決めつけや、マイノリティの住まい事情に対して違和感を持つ人が多いことがわかりました。

自分の中のアンコンシャスバイアスに気づくにはどうすれば?

「アンコンシャスバイアスは、実際にどうかは別として無意識に思い込むこと。ヒト・モノ・コトだけでなく自分自身に対するものもあり、日常の中にあふれていて、誰にでもあるもの」だと守屋さん。自分のアンコンシャスバイアスに気づかないでいると、その影響を受けた判断や発言によって、ときに相手を傷つけてしまうことも。

「大切なのは『決めつけない』『押しつけない』ことを意識すること。受け止め方は人それぞれなので、その時々で異なることに目を向けることで、ネガティブな影響を防ぐきっかけとなる」とアドバイスしました。

  • ラランドの2人が感じた「アンコン語」も発表され、最寄り駅に出待ちの人がしばしば出没するというニシダさんは「男性にはオートロック不要」、サーヤさんは“芸人あるある”として、「芸人って家借りづらい」を挙げた

実は筆者も、これまで「へー、この人実家暮らしなんだ(=自立してないなあ)」なんて思ったことが何度かあります。“社会人になったら実家は出るもの”だというバイアスにより、個々の事情を想像することもなく、十把一からげに「いい年した大人が」と決めつけていたことに、あらためて気づかされました。でも守屋さんいわく、「アンコンシャスバイアスは、新たな経験や、見聞きをすることで上書きできます」。多様な属性、多様な考え、多様な生き方を受け入れて価値観をアップデートしていきたいものです。

「LIFULL 新生活アンコン語実態調査2023」特設サイトでは、今回の調査結果の全貌が公開されています。

  • アンコンシャスバイアスという言葉を全く知らない人は82%

  • 性別でみる「アンコン語」の比較