修学旅行などで多くの人が1度は訪れる奈良。奈良公園で「鹿せんべい」を買ったら、鹿の群れに囲まれてしまった経験を持つ人も少なくないでしょう。

奈良公園の鹿は「神の使い」として大切にされている一方、同じ奈良県内で「缶詰」になる鹿も……。そんな現実を目の当たりにした卑屈な奈良県民bot(@nntnarabot)さんのツイートが話題になっています。

  • @nntnarabotより引用

友人「奈良の鹿は神様の使いとちゃうんか? なんで道の駅に普通に鹿肉の缶詰が売られとるんや?」

ワイ「奈良公園におる鹿は神の使いで特別天然記念物やが、保護区外で畑を荒らす鹿は堕天した悪しき神やから最早カレーの具以外の何者でもない」

友人「逆ゴールデンカムイかよ」(@nntnarabotより引用)

この会話はツイ主さんと友人が奈良県内の道の駅で、鹿肉の缶詰を目にしたときのこと。

「奈良公園の鹿は『神の使い』なのに、なぜ同じ奈良県内で鹿肉の缶詰が売られているのか」と疑問を呈する友人に対し、ツイ主さんは「奈良公園におる鹿は神の使いで特別天然記念物やが、保護区外で畑を荒らす鹿は堕天した悪しき神」だと説明します。

それに対し、友人の「逆ゴールデンカムイかよ」というツッコミが炸裂。

漫画『ゴールデンカムイ』には、「人に悪いことをするカムイ(神)を『ウェンカムイ(悪神・魔物)』と呼び、彼らを食べること・毛皮を取ることはしない」というアイヌの教えが登場します。この缶詰は“堕天した悪しき神”を食用にしているので、“逆ゴールデンカムイ”と表現しているのですね。

リプライや引用リツイートでは「ウェンカムイなのに食べるのか!?」「いわゆる、不都合な現実というやつである」「致『鹿』たない」といった、驚きや諦めなどさまざまな反応が寄せられました。

「奈良で鹿を殺すと石子詰(いしこづめ)の刑で生き埋めにされると聞いていましたが、市内だけだったんですね」という声もあるように、神の使いである鹿殺しの罪で生き埋めの刑を受けた子どもの伝説「石子詰の三作」が語り継がれていたり、奈良県内でも地域によって鹿の扱い方に差があることがうかがえます。

卑屈な奈良県民bot(@nntnarabot)を運営している「中の人」の1人、「あをにまる」さんにツイートのきっかけなどを聞きました。

"逆ゴールデンカムイ"、投稿者に聞いてみた

――今回の投稿のきっかけを教えてください。

実は、この写真を撮影したのは今からちょうど1年半ほど前のことです。が、つい先日「福島大、山形大、奈良教育大の研究チームによって、奈良の鹿は独自の遺伝子型を1,000年以上にわたって維持していることがわかった」というニュースを目にして、以前に撮影した鹿の缶詰のことをふと思い出し、改めてTwitterにアップしました。

もっとも、私が写真を撮影した奈良県天川村と奈良公園はかなり距離が離れており、一概に「奈良の鹿」といってももはや完全に別物なのですが、同じ奈良県内でも北部と南部でこれだけ扱いに差があるのは地元民としてもなかなか興味深いですね。

――大峯鹿の缶詰、食べたことはありますか?

缶詰は食べたことがありませんが、鹿肉自体はローストなどで食べたことがあります。

一緒に食べた友人は「意外と牛肉に近い味」だと言っておりましたが、私の感覚では濃厚で歯ごたえのあるマグロのような味に近かったと思います。普段なかなかお目にかかれない食材ですが、味はとても美味しかったです。

――今回の投稿には大きな反響が寄せられましたね。

たくさんの反響をいただきありがとうございます。

もしご興味を持ってくださる方がおられましたら、ぜひ奈良県に遊びに来て下さいね。有名な観光スポットである奈良公園や東大寺以外にも、こちらの写真を撮影した奈良県南部の天川村などは温泉地としても有名なので、必ずやご堪能いただけると思います。

――「卑屈な奈良県民bot」の中の人でもある「あをにまる」さんは、昨年12月には著書「今昔奈良物語集」も出版されています。

『竹取物語』『浦島太郎』といった昔話のほか、『走れメロス』『山月記』などのパブリックドメインの名作文学の舞台を現代奈良に置き換えた短編集です。誰もが知る名作のストーリーを基にしておりますので、奈良県のことをあまり知らなくてもクスッと笑えるような作品となっております。

現在、ご好評につきおかげさまで発売から1カ月を待たずに重版が決定いたしました。ぜひ多くの方にお手に取っていただけると幸いです。


奈良というと、奈良公園や東大寺がある奈良市のイメージが強いですが、鹿肉の缶詰が販売されていた天川村は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する大峰山を擁する修験道の聖地。知られざる奈良の魅力、いつかもっと深堀りしてみたいものですね。