スポーツシーンや芸能ニュースなどで「破竹の勢い」という表現を耳にしたことはありませんか? 前後の文脈からなんとなく意味は想像できるかもしれませんが、正しい意味をしっかりと説明できる方は少ないでしょう。

本記事では、その「破竹の勢い」の意味や三国志にまつわる由来について解説します。シーンごとの使用例や類似表現、対義語も紹介します。

破竹の勢いの意味とは?

  • 破竹の勢いの意味とは

    「破竹の勢い」はポジティブな表現として使われることが多い言葉です

「破竹の勢い」は「止められないほど勢いが良い」という意味です。連戦連勝しているときや急成長しているときなど、一般的にポジティブな表現として使われます。スポーツニュースなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

読み方は「はちくのいきおい」です。

「破竹の快進撃」のように、省略して「破竹」だけで使用することもあります。また「勢い破竹のごとし」ともいいます。

破竹の勢いの由来・語源は、中国の三国志に描かれた時代に起きた戦から

  • 破竹の勢いの由来は、三国志にも関係する

    「破竹の勢い」は中国の武将の発言によりできた言葉です

「破竹の勢い」の由来となった言葉は「今兵威已振、譬如破竹」です。これは三国志にも登場する国、晋の歴史を著した『晋書 杜預伝』に記載されています。

意味は「今、兵は勢いがあり、例えるならば竹を割るようなものである」です。280年、晋軍が敵国、呉への侵攻について話し合う場面で、いったん兵を引くべきという意見がある中、呉が弱体化していることを見抜いた武将・杜預(とよ/どよ)が発した言葉でした。

杜預は、竹は数節刃物で割ればあとは一気に割れるように、このまま一気に攻め続ければ、今の呉は滅ぼせると提言し、見事に呉を攻略しました。呉が滅亡することで、長く続いた魏・蜀・呉の三国時代の幕が下ります。

破竹の勢いの使い方・例文

  • 破竹の勢いの使い方・例文

    「破竹の勢い」について、例文を覚えておくと便利です

「破竹の勢い」の意味と由来について説明してきました。次は実際に「破竹の勢い」の具体的な使い方を、シーン別に例文とともに解説します。以下の説明を参考にイメージしてみましょう。

スポーツシーン

まずは、スポーツシーンにおける例文をご紹介します。

  • 誰も注目していなかったチームが破竹の勢いで連戦連勝し、一気に決勝戦まで駒を進めた。

これは今まで大きな活躍もなく注目されていなかったチームが、とある大会でどんどんと対戦相手を倒し決勝戦へと進んだ状況下での例文です。競争相手がいるスポーツシーンで、よく「連戦連勝」などとともに使用されます。

ビジネスシーン

次にご紹介するのはビジネスシーンにおける例文です。

  • 前期の業績は芳しくなかったが、インフルエンサーとのコラボが功を奏し、後期は破竹の勢いで売り上げを伸ばした。

この例文では、前期の業績に伸び悩んだとある企業が、インフルエンサーに自社商品の宣伝を依頼します。それが成功し後期には売り上げをどんどんと伸ばしていった場面を表しています。ビジネスシーンでは売り上げや業績が勢いよく上がったり、企業が急成長していったりする場面で使用されます。

芸能界

最後は芸能界人気についての例文です。

  • この女優は連続テレビ小説への出演後、映画やドラマの主演が次々に決まり、破竹の勢いでスター街道を駆け上がった。

とある作品への出演をきっかけにどんどんと他作品の主演が決まり、人気が勢いよく上がるシーンを表した例文です。芸能界ではよくあるこのようなシチュエーションでも使用できます。

破竹の勢いの類義語・言い換え表現

  • 破竹の勢いの類語

    「破竹の勢い」は、勢いが良いという意味で類義も多数存在しています

前述のように武将である杜預(とよ)は、勢いの良さを、数節割ると一気に割れていく竹になぞらえ「破竹」と表現しました。これと同様に勢いの良さを他のものに例えた類義語が複数あります。

今回はその中から3つご紹介します。それぞれの意味をしっかり理解しましょう。

飛ぶ鳥を落とす勢い

まずご紹介するのは「飛ぶ鳥を落とす勢い」です。「飛ぶ鳥を落とす勢い」は、飛んでいる鳥も圧倒されて落ちてしまうほど勢いがあることを表した言葉です。

「空飛ぶ鳥も落とす」「飛ぶ鳥も落ちる」「飛鳥も落つ(とぶとりもおつ)」などとも言います。

昇竜の勢い

次にご紹介するのは「昇竜の勢い」です。「昇竜」は「しょうりゅう」と読み、「昇竜の勢い」は竜が天に昇るように勢いが良いという意味合いを持ちます。

旭日昇天の勢い

最後は「旭日昇天(きょくじつしょうてん)の勢い」です。旭日(朝日のこと)が勢いよく天に昇る様子を表した言葉です。昇る朝日を止めることは誰にもできません。それほど勢いが良く、調子づいているときに使用できる表現です。

「朝日の昇る勢い」とも言います。

破竹の勢いの対義語

  • 破竹の勢いの対義語

    勢いが良いという意味の、反対の意味の言葉も多数存在します

「破竹の勢い」の対義語とその意味を紹介します。「破竹の勢い」は止められないほど勢いが良いことを表します。そのため、今からご紹介する表現はその反対で、ネガティブな意味合いを持つ言葉です。

衰退の一途をたどる

「衰退の一途をたどる」の読み方は「すいたいのいっとをたどる」です。「衰退」は勢いが衰える、弱くなる様子を、「一途をたどる」はある状態が一定の方向に進んでいくことを表します。よって、勢いが一段階下がるだけでなく、どんどん衰え続けることを指す表現です。

「一途をたどる」は他にも「崩壊」や「破滅」など、ネガティブな意味合いを持つ言葉とセットで使われることが比較的多い言葉です。

斜陽

「斜陽(しゃよう)」の本来の意味は、西に傾いた太陽、またその光です。しかし、現代では太陽が傾き、日が落ちる様子から栄光から転落する様子、没落していく様子も表します。「かつて炭鉱業で栄えたこの町も、斜陽を迎え廃れ始めている」のような使い方が可能です。

また、長きにわたりニーズが減っていく産業を「斜陽産業」といいます。

1947年の太宰治による小説『斜陽』では、敗戦によって没落していく貴族を指す「斜陽族」という流行語が生まれました。

見る影もない

次にご紹介するのは「見る影もない」です。見るに堪えないほどみじめである様子を表します。

「久しぶりに会った彼は見る影もなかった」「かつて炭鉱業で栄えたあの町は、見る影もないほど廃れていた」などのように使用します。

破竹の勢いとは、三国志の時代の出来事に由来を持つ故事成語

勢いが良いことを表す「破竹の勢い」は、三国志の時代の出来事に由来を持つ故事成語です。使用できるシーンも多く、日常でも使いやすい言葉です。また、前述の通り類義語や対義語も多数存在します。

この記事で意味をしっかり理解し、適切な場面で正しく使えるようになりましょう。