「二階から目薬」という言葉の意味を正しく理解していますか? 本記事では、「二階から目薬」の意味や語源・由来を紹介します。

また「二階から目薬」と同じ意味のことわざ・四字熟語や、使い方の参考になる例文・英語表現もあわせて紹介していますので、ぜひ目を通してください。

  • 二階から目薬」とは

    「二階から目薬」の意味や類語、使い方を解説する記事です

「二階から目薬」とは

  • 二階から目薬」とは

    ことわざ「二階から目薬」の意味と語源を覚えましょう

「二階から目薬」は「にかいからめぐすり」と読むことわざです。まずは、「二階から目薬」の意味と語源を紹介します。

「二階から目薬」の意味

「二階から目薬」の意味は次の通りです。

意味1: 物事がうまく進まずもどかしいこと
意味2: 遠回りで効果が出ない物事のたとえ

二階から目薬を差すのは、普通に目薬を差すよりもより困難で非効率的です。そこから、「二階から目薬」は物事がうまく進まずもどかしさを感じるときに使われることわざになりました。また効率の悪さを表したり回りくどい方法で効果を得るのが難しい物事のたとえとして使われることもあります。

「二階から目薬」の語源・由来

「二階から目薬」という言葉は、元禄13年(1700年)、江戸時代中期に発売された西沢一風が著した浮世草子(うきよぞうし)の『風流御膳義経記(ふうりゅうごぜんぎけいき)』が由来です。浮世草子とは江戸時代の上方に誕生した小説の一種で、当時の人情や世相を描いていました。

『風流御膳義経記』には、「二階から目薬をさす仕掛け、さりとは急な恋ぞかし」という句が登場します。これは、「二階から目薬を差そうとするなんて、なんて急な恋かしら」という意味です。複数の解釈がありますが、二階から目薬を差す距離感と男女の距離感をなぞらえ、恋のもどかしさを表現したとされています。

「二階から目薬」と同じ意味のことわざ・四字熟語

  • 「二階から目薬」と同じ意味のことわざ・四字熟語

    「二階から目薬」と同じ意味のことわざや四字熟語が複数あります

ここでは、「二階から目薬」と同じ意味のことわざ・四字熟語を紹介します。

天井から目薬(てんじょうからめぐすり)

「天井から目薬」の意味は以下の通りです。

意味: 回りくどくて効果がない物事のたとえ

「二階から目薬」は『風流御膳義経記』が由来ですが、「天井から目薬」には由来はありません。天井も二階と同じく目薬を差すことが難しい距離のため、「二階から目薬」から変化して「天井から目薬」という言い回しができたとされています。

焼け石に水(やけいしにみず)

「焼け石に水」の意味は以下の通りです。

意味: 努力や援助が足りなくて、何の役にも立たない物事のたとえ

「焼け石に水」は、焼けた石に少量の水をかけてもすぐに蒸発する様子や石がなかなか冷えない様子から生まれました。まったく効果がないわけではありませんが、少しの努力や援助だけでは効果がほぼ期待できないことを表現する言葉です。

隔靴掻痒(かっかそうよう)

「隔靴掻痒」の意味は以下の通りです。

意味: 思うようにいかず、もどかしいこと。核心に触れないため、はがゆいこと

「隔靴掻痒」の語源は中国(13世紀ごろ)の仏教書『無門関』に登場する一節です。『無門関』の中では「棒を振って月を打ち、靴を隔てて痒きを掻く」と書かれており、意味は「棒を振っても月を打つことはできないし、靴の上から足をかいてもかゆみは治らない」です。

上記の一説から「靴を隔て痒きを掻く」の部分が取り上げられ、もどかしさやはがゆい様子を表現する言葉になりました。

杯水車薪(はいすいしゃしん) 

「杯水車薪」の意味は以下の通りです。

意味: ほんのわずかな努力や援助では、何の役にも立たない物事のたとえ

「杯水車薪」の語源は『孟子』の「告子章句上」に記載されている一節です。「告子章句上」の中に「一杯の水をもって一車薪の火を救うがごとし」という一文があり、意味は「杯(さかずき)一杯の水で燃えている車一台分の薪の火を消そうとする」です。

上記の一説から「杯水車薪」ということわざが生まれ、ほんのわずかな努力や援助が役に立たない様子を表現するようになりました。

御簾を隔てて高座を覗く(みすをへだててこうざをのぞく)

「御簾を隔てて高座を覗く」の意味は以下の通りです。

意味: 思い通りにならないため、もどかしい様子のたとえ

御簾は竹でできた目の細かいすだれで、公家や大名など身分の高い人が他人に会う際、姿を隠したまま会話するために使われていたものです。御簾越しに身分の高い人がいる高座を覗こうとしてもよくみえないことから、思い通りにいかないもどかしさを意味する言葉になりました。

「二階から目薬」の反対語

  • 「二階から目薬」の反対語

    「二階から目薬」の反対語もこの機会におぼえましょう

「二階から目薬」の反対語には、「麻姑掻痒(まこそうよう)」という言葉が当てはまります。意味は以下の通りです。

意味: 物事が思い通りになること・進むこと。かゆい所に手が届くこと

「麻姑掻痒」の語源は中国(漢の時代)の『神仙伝』という故事です。『神仙伝』の中に「麻姑という仙女にかゆい部分をかいてもらうのは気持ちがいい」という逸話があり、そこから「麻姑掻痒」という言葉ができました。

麻姑は中国における伝説上の仙女で、鳥のような長い爪を持っており、その爪がかゆい部分をかくのにちょうどいいといわれていました。背中をかく道具「孫の手」は「麻姑の手」からできた言葉です。

「二階から目薬」の使い方・例文

ここでは、「二階から目薬」の使い方を紹介します。次の例文を参考にしてください。

・問題点を直接伝えない同僚のやり方は二階から目薬だと思う
・我が社の二階から目薬のような手続き方法では他社に遅れをとってしまう
・厚手の手袋をつけたままカバンの中の鍵を探す行為は二階から目薬ですよ

「二階から目薬」の英語表現

  • 「二階から目薬」の英語表現

    「二階から目薬」の英語表現は複数あります

ここでは、「二階から目薬」の英語表現を紹介します。英文とともに使い方もみてみましょう。

「eye drops from the second floor」

「eye drops from the second floor」は直接「二階から目薬」と訳すことができます。

英語: I am worried because the way she teaches is like putting eye drops from the second floor.
意味: 彼女の教え方は二階から目薬のようなやり方なので心配です。

「frustratingly difficult task」

「frustratingly difficult task」は「イライラするほど難しい仕事」という意味の英語表現です。

英語: Even though we know the job is like frustratingly difficult task, we still need to follow the orders of the president.
意味: 二階から目薬のような仕事だとわかっていても、社長の命令には従う必要がある。

「roundabout and inefficient way」

「roundabout and inefficient way」は「回り道で非効率な方法」という意味の英語表現です。

英語: What may seem like roundabout and inefficient way may actually be a shortcut.
意味: 二階から目薬のようにみえても、実は近道だったということがある。

「something totally ineffective」

「something totally ineffective」は「まったく効果のないもの」という意味の英語表現です。

英語: I think my colleague's way of not directly communicating the problem something totally ineffective.
意味: 直接的に問題を伝えないという同僚のやり方は、二階から目薬だと思います。

「二階から目薬」の意味と使い方を覚えましょう

「二階から目薬」とは「物事がうまくいかずもどかしいこと」や「遠回りで効果が出ないことのたとえ」を表すことわざです。

由来・語源は、江戸時代に誕生した小説『風流御膳義経記』に登場する「二階から目薬を差そうとするなんて、なんて急な恋かしら」という意味の句です。二階から目薬を差す距離感と男女の距離感をなぞらえた句から、もどかしさや遠回りを意味する「二階から目薬」が誕生したといわれています。

「二階から目薬」には同じ意味のことわざや四字熟語が複数あるので、反対語とあわせて確認してください。本記事で紹介した例文や英語表現も覚えておくと、語彙力を高めるのに役立つでしょう。