「奇をてらう」といえば会話やニュース番組など、一度は見聞きしたことがある方も多いはず。では言葉の意味や適切な使い方について尋ねられたとき、正しく答えられる自信はありますか?

本記事では「奇をてらう」の意味や言い換え・英語表現をくわしく解説。あわせて「奇をてらう」の使い方について、例文を交えつつ紹介します。

  • 「奇をてらう」の意味とは

    「奇をてらう」の意味から英語表現まで説明します

「奇をてらう」の意味とは

  • 「奇をてらう」の意味とは

    他人とは違う行動を「わざと」取ることがポイントです

「奇をてらう」とは「わざと変わった行動で周囲から注目を集めようとすること」です。自分の意思に反した行動が原因となり、たまたま注意を引いてしまった場合は「奇をてらう」に該当しません。あくまでも注目を集めるために「わざと」行うことが重要になります。

「奇」は普通ではないことの意味

「奇をてらう」の「奇」は「珍しい」「普通ではない」「不思議」などの意味をもつ漢字です。「珍奇」「怪奇」「奇遇」といった「奇」を使用した熟語を確認すると、意味を捉えやすいでしょう。

「てらう」はひけらかす意味

「奇をてらう」の「てらう」を漢字で表記すると「衒う」となります。意味は「ひけらかす」こと。自身の才能や知識を表に出すことに対して使われます。

「てらう」を用いた慣用句には「才をてらう」があります。意味は「才能をひけらかす」「多くの知識を身につけているかのように見せること」です。あわせて覚えておきましょう。

ことわざでみる「てらう」の解釈

「てらう」はことわざ「玉を衒いて石を売る(たまをてらいていしをうる)」にも使われている言葉です。「価値のあるもの(玉)と見せかけて、実は価値がないもの(石)を売ること」を意味します。

ことわざの由来は「立派な見た目の玉を見せびらかしつつ、実際には無価値な石を売りつけていたこと」。「てらう」は「見せびらかす」との意味で使用されています。

「奇」と「衒」からなる熟語「衒奇(げんき)」

「奇をてらう」に含まれる漢字「奇」と「衒」を用いた熟語に「衒奇」があります。意味は「奇をてらう」とほぼ等しく「不自然な振る舞い」のことです。参考程度に覚えておいてください。

「奇をてらう」の類語・言い換え表現

  • 「奇をてらう」の類語・言い換え表現

    「奇をてらう」の類語は多岐にわたります

「あえて普通ではない行動をして関心を引く」ことの表現方法は「奇をてらう」だけではありません。同じような意味をもつ熟語や慣用句を理解して、語彙力を増やしましょう。

意表を突く(いひょうをつく)

「意表を突く」とは「相手が予測していないことをすること」です。「意表」には「全く思い浮かべていなかったこと」「意外」などの意味があります。

受けを狙う(うけをねらう)

「受けを狙う」とは「周囲の人の笑いを誘うように狙って行動すること」です。「受け」には「世間の反響」「人気」などの意味が含まれます。

エキセントリック

「エキセントリック」は「性格などが変わっているさま」を表す言葉です。「普通ではない」との意味合いから「奇をてらう」の類語として考えられています。

奇異(きい)

「奇異」とは「不思議なこと」「様子が普通と異なるさま」のことです。「怪奇(かいき)」「奇妙(きみょう)」などの類語表現があります。

奇矯(ききょう)

「奇矯」とは「言動の内容が普通と異なること」。「言動が普通と異なるさま」との意味も含まれています。

奇抜(きばつ)

「奇抜」とは「他とは非常に異なる様子で、予想外のことをすること」の意味です。「とりわけ優れている」ことを「奇抜」と表現するケースもあるため、文脈から意味を判断しましょう。

虚仮威し(こけおどし)

「虚仮威し」とは「立派な見た目である一方、中身がないこと」の意味です。「愚かな人間の心を動かす程度のチープな方法」との意味で使われる場合もあるので覚えておきましょう。「虚仮」自体に「愚か」「表面だけで中身がない」などの意味が込められています。

突飛(とっぴ)

「突飛」とは「大きく様子が異なるさま」「あまりにも予想外なさま」「奇抜」といった意味の熟語です。名詞では「突飛さ」として使用されることがあります。

風変わり(ふうがわり)

「風変わり」とは「様子や行動などが通常と異なること」。「異様」「奇体」などの熟語も「風変わり」の類語表現です。

「奇をてらう」の対義語

  • 「奇をてらう」の対義語

    「奇をてらう」と反対の意味をもつ言葉も複数存在します

「奇をてらう」には類語表現と同じく、反対の意味合いで使われている熟語もあります。あわせて覚えておくと、いざというとき役に立ちますよ。

堅実(けんじつ)

「堅実」とは「危険がなく確実なこと」「確実で危なげがないこと」を指す熟語です。変わった行動をとらず、確かな行動や考えを選ぶことから「奇をてらう」の対義語と捉え捉えられます。

素直(すなお)

「素直」とは「実際のまま、飾り気がない様子」「素朴」のこと。「従順」「物事が支障をきたすことなく、スムーズに進行すること」など複数の意味で使用されます。

正攻法(せいこうほう)

「正攻法」とは「奇策などを用いず、正面から攻め入ること」です。「決まり切った方法」との意味で使用されることもあります。

正々堂々(せいせいどうどう)

「正々堂々」とは「正しい態度と方法をとること」「布陣を整え、活気づいている様子」のことです。「々(ノマ、同の字点)」の代わりに漢字を用いて「正正堂堂」と表記することもあります。

無難(ぶなん)

「無難」とは「間違い、または危険がないこと」「無事」との意味で使用される熟語です。他にも「欠点がない」「特段優れている部分も、目立った欠点も見当たらないこと」との意味もあります。

平々凡々(へいへいぼんぼん)

「平々凡々」とは「変わった部分や優れた点がなく、どこにでもあるような普通な様子」のことです。言葉自体は「平凡」に漢字を1文字ずつ付け加えたもので、「平凡」の意味を強調しています。表記は「平々凡々」はもちろん「平平凡凡」でも問題ありません。

「奇をてらう」の使い方・例文

  • 「奇をてらう」の使い方・例文

    例文を踏まえて正しい使い方を身につけましょう

「奇をてらう」の使い方には決まりや注意すべき点があります。例文を踏まえつつ、適切な言葉の使い方を学んでいきましょう。

批判するときに用いる

「奇をてらう」が該当するのは、あえて普通ではないことを行って周囲の目を自分に向ける行為や態度のことです。対象は変わった行動や態度を「わざと」とった人物であり、批判的な意味を込めて使用されます。

「奇をてらう」の例文

実際に「奇をてらう」を使った文章を確認してみましょう。さらに使い方への理解が深まるはずです。

・注目してもらいたいからといって、奇をてらった行動に出るのははなはだ間違いである
・奇をてらった行為により、先輩から反感を買ってしまった
・周囲からの評価を下げることになるから、奇をてらう態度はやめたほうがいい

誤った使い方に注意

「奇をてらう」と表現するところを「奇を狙う」とする方がいますが、使い方としては誤りです。「てらう」と「狙う」の発音が非常に似通っているものの、正しい表記は「奇をてらう」であると再確認しておきましょう。

「奇をてらう」をポジティブな意味合いで使用することも間違いです。「奇をてらう」は非難・批判のニュアンスを含む言葉であり、肯定するときに選んではいけません。使い方次第ではトラブルに発展しかねないので注意してください。

「奇をてらう」の英語表現

  • 「奇をてらう」の英語表現

    「奇をてらう」の英語表現もあわせて紹介します

「奇をてらう」は英語でも表現できます。例文を交えつつ解説するので、頭に入れておいてください。

deliberately act oddly

「deliberately act oddly」はそのまま「奇をてらう」の意味です。「deliberately」は「好んで」「じっくり」、「act」は「立ち振る舞い」、「oddly」は「不思議と」などの意味をもちます。

・Deliberately act oddly is unacceptable. (奇をてらう行動をするのは許せない)
・Deliberately act oddly caused a backlash from those around him.
(わざと奇をてらった行動をすると、周囲の反感を買う)

outlandish

「outlandish」は「常識外れ」の意味で使われており、転じて「奇をてらう」の英語表現と認識されています。

・You need to stop being outlandish. (奇をてらう発言はやめたほうがいい)

「奇をてらう」はネガティブな意味で使う言葉

「奇をてらう」とは、あえて人と違う行動をとることで周囲の興味を引きつけようとすること。「奇」には普通ではない、「てらう(衒う)」には見せびらかすとの意味があります。

「奇をてらう」には「エキセントリック」「奇抜」などの類語があり、漢字を入れ替えて「衒奇」と言い換えることも可能です。対義語も「素直」「平々凡々」と複数存在します。

「奇をてらう」を使用するタイミングは相手を批判的に表現するときです。肯定的に捉えるのは誤った使い方なので注意してください。英語では「deliberately act oddly」などと表すことも覚えておきましょう。