確定申告を行う場合に「どの確定申告書を使えば良いかわからない」、「どう書けばいいのかわからない」、ということで戸惑う人が多いようです。税金に関する書類ですから間違ってはいけないと不安に感じてしまうのかもしれません。そこで本記事では、2種ある確定申告書の違いについて説明します。また、基本的な確定申告書の書き方を紹介しますので、参考にしてください。
●確定申告書はAとBのどちらを使う?
確定申告書は国税庁のサイトからダウンロードして利用することができます。しかし、国税庁のサイトを見ると、「申告書A」や「申告書B」、「申告書第三表」、「第四表」……などとたくさんあって、どれを使えばいいのかわからないと思う人が多いようです。
基本的には「申告書A」か「申告書B」のどちらかを使います。それぞれ、第一表と第二表の2枚あります。2023(令和5)年1月からはこれら2種の申告書が統合されて申告書Bのみになりますが、2022年に行う確定申告ではどちらかを選ばなければなりません。選び方は次を参考にしてください。
【申告書A】
申告する所得が次の場合のみの人。
・給与所得
・公的年金等・その他の雑所得
・総合課税の配当所得
・一時所得
たとえば、会社員で医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)を受けるために確定申告をする人や、会社員で20万円を超える副業所得(給与所得・雑所得)があるため確定申告をする人などが該当します。
【申告書B】
申告書Aを利用できない人が使用します。一般的には個人事業主やフリーランスなどの人、家賃収入(不動産所得)がある人などが使用します。申告書Bはすべての所得に対応していますので、会社員などで本来は申告書Aを使用できる人が使っても構いません。
●確定申告書A(第一表)の書き方
ここからは実際に確定申告書の書き方について見ていきましょう。まずは「確定申告書A(第一表)」の書き方です。オレンジ色で示した数字の順に説明していきます。
(1)住所・氏名等
確定申告をする人の住所、氏名、生年月日等を記入します。マイナンバー(個人番号)も忘れずに記入しましょう。
(2)収入金額等
該当する項目に1年間の収入を記入します。会社員の場合は「給与」の欄に収入額を書きましょう。なお、ここに記載する金額は税金や社会保険料等が天引きされる前の額面金額です。会社からもらう源泉徴収票に記載されている「支払金額」を転記すれば大丈夫です。ただし、2カ所以上の事業所から給与をもらっている場合には、すべての給与収入を合計して記入しましょう。
副業等で雑収入がある人は、「雑」の「業務(ウ)」の欄に副業収入の金額も記載しましょう。
(3)所得金額等
「収入金額等」の部分で記載した各収入から所得金額を計算して記載します。
たとえば「給与所得」の場合は、給与収入額から給与所得控除額を差し引いた金額です。源泉徴収票に「給与所得控除後の金額」として記載されていますので転記すれば大丈夫です。ただし、2カ所以上の事業所から給与をもらっている場合には自分で計算しなければなりません。 雑所得がある人は、雑収入の金額から必要経費額を差し引いた金額です。
(4)所得から差し引かれる金額
所得控除の適用を受けるために記入する欄です。自分に該当する所得控除の金額を記入しましょう。「社会保険料控除」額は源泉徴収票に記載されていますので転記すれば大丈夫です。iDeCoに加入している人は1年間の掛金合計額を「小規模企業共済等掛金控除」欄に記載します。なお、「小規模企業共済等掛金控除」や「生命保険料控除」等は会社の年末調整で申告した場合でも確定申告書にあらためて記載する必要があります。
(5)税金の計算
括弧書きで計算式が記載されている欄は、減算、加算、乗算して金額を算出することが必要です。
たとえば、この項目の一番上、「課税される所得金額(26)」の欄には「所得金額の合計(8)」から「所得控除の合計(25)」を差し引いた額を記入します。
「上の(26)に対する税額(27)」欄には「課税される所得金額(26)」に所得税率を乗じて計算し、所得税額を算出しなければなりません。所得税の計算は国税庁サイトにある所得税の速算表を使って計算できます。
その他、住宅ローン控除の適用を受ける場合は、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(29)」の欄、耐震リフォーム等の特別控除を受ける場合は「住宅耐震改修特別控除等(33)~(35)」の欄というように、自分に該当する欄に順次記入していきましょう。
このように人によって記入の要否が異なる欄もありますが、黒色の太枠で囲まれた欄「課税される所得金額(26)」、「上の(26)に対する税額(27)」、「差引所得税額(36)」、「再差引所得税額(38)」、「復興特別所得税額(39)」、「所得税及び復興特別所得税の額(40)」は必ず記入しましょう。
給与や報酬等源泉徴収されている税金も「源泉徴収税額(43)」への記入が必要です。源泉徴収税額は源泉徴収票に記載されていますので転記すれば大丈夫です。
これらを順に差し引いていった結果、算出された金額がプラスであれば「納める税金(44)」へ、マイナスであれば「還付される税金(45)」に記入します。
(6)その他
該当する項目のみ記載します。たとえば、「公的年金等以外の合計所得金額(46)」は公的年金等の収入がある人だけ記入する欄です。現役の会社員等で公的年金等をもらっていない人は記入する必要はありません。また、「配偶者の合計所得金額(47)」も配偶者特別控除を受ける人のみ記入します。
(7)還付される税金の受取場所
税金の計算の部分で「還付される税金(45)」に記入した場合は、税金の還付分を振り込んでもらう銀行口座情報を記入しましょう。
●確定申告書A(第二表)の書き方
基本的には第一表で記入した金額を転記するようになりますが、所得や所得控除などの内容を具体的に記入する必要があります。緑色で示した数字の順に説明していきます。
(1)住所・氏名
確定申告をする人の住所・氏名を記入します。
(2)所得の内訳
1年間に得た所得の詳細を記載します。「所得の種類」欄には所得区分(給与・雑など)を記入します。「種目」欄は給与所得であれば「給与」、雑所得であれば原稿料、雑貨販売、暗号資産など具体的に記入します。「給与などの支払者の名称」欄には、支払いを受けた会社名と本社住所を記入します。
(3)本人に関する事項
寡婦、ひとり親、勤労学生、障害者、特別障害者である場合にそれぞれ丸を付けます。また寡婦、勤労学生の場合にはそれぞれ該当する区分にチェックしましょう。
(4)寄附金控除に関する事項
ふるさと納税ほか、国や日本赤十字社、公益社団法人等に寄附をした場合に寄附先の名称と寄附金額を記入します。複数ある場合には、「○○市、△△ほか」などとして、合計金額を記入して構いません。
(5)配偶者や親族に関する事項
配偶者や子ども・親などを扶養している場合には、扶養親族の氏名・マイナンバー(個人番号)・続柄・生年月日・障害者・国外居住・住民税・その他に該当する項目を記入します。
(6)保険料控除等に関する事項
社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除がある場合、各該当事項を記入します。
なお、生命保険料控除・地震保険料控除の欄は、第一表では「控除額」を記入しましたが、第二表では「実際に支払った保険料の金額」を記入します。間違わないように注意しましょう。
(7)雑損控除に関する事項
災害や盗難、横領によって住宅や家財などに損害を受けた場合などで雑損控除の適用を受ける場合に記入します。
(8)特例適用条文等
課税の特例を受けている場合に記入する欄です。たとえば、住宅ローン控除の適用を受けている場合は居住開始年月日を記入します。
(9)住民税に関する事項
住民税に影響を与える事項について、該当する場合に記入する欄です。たとえば、ふるさと納税をしている場合は、「都道府県・市区町村への寄附(特例控除対象)」欄へふるさと納税額を記入します。
●確定申告書B(第一表)の書き方
次に「確定申告書B(第一表)」の書き方を説明します。オレンジ色で示した数字の順に説明していきます。
(1)住所・氏名等
確定申告をする人の住所、氏名、生年月日等を記入します。確定申告書Bは自営業者等も使用することから、屋号を記載する欄もあります。マイナンバー(個人番号)も忘れずに記入しましょう。
(2)収入金額等
該当する項目に1年間の収入を記入します。個人事業やフリーランスでの収入は「営業等(ア)」、不動産収入(家賃等)がある場合は「不動産(ウ)」、会社等から給与を受けた場合は「給与(カ)」など、該当する欄に記入します。
なお、確定申告書Aの場合と同じように、ここでは「収入額」の記入であることに注意してください。
(3)所得金額等
「収入金額等」の部分で記載した各収入から所得金額を計算して記載します。たとえば事業所得や不動産所得がある場合は、事業収入(不動産収入)の金額から必要経費等の金額を差し引いた金額です。会社員が確定申告書Bを使用する場合は、申告書Aのところで説明したように、源泉徴収票から転記しましょう。
(4)所得から差し引かれる金額
所得控除の適用を受けるために記入する欄です。「社会保険料控除」は(国民)健康保険料や国民年金保険料など、2021年中に支払った全額を記入します。「基礎控除」は合計所得額が2,500万円以下の場合は全員適用されます(金額は48万円、32万円、16万円のどれか)。他にも自分に該当する所得控除の金額を記入しましょう。
(5)税金の計算
括弧書きで計算式が記載されている欄は、減算、加算、乗算して金額を算出することが必要です。確定申告書Aで説明した書き方とほぼ同じです。
なお、確定申告書Bでは最終的な納税額の下に「予定納税額」を記入する欄があります。 予定納税とは、簡単にいうと、所得税の一部前払い制度のようなものです。前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付しなければなりません。そのため確定申告の際に、先に納付した税金分を差し引いて納付最終回分(第3期分)の税額を計算します。
予定納税の対象となっている人には6月頃に税務署から「令和3年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」が届いているはずですので、その金額を転記すれば大丈夫です。
これらを順に差し引いていった結果、算出された金額がプラスであれば「納める税金(51)」へ、マイナスであれば「還付される税金(52)」に記入します。
(6)その他
該当する項目のみ記載します。たとえば、「公的年金等以外の合計所得金額(53)」は公的年金等の収入がある人だけ記入する欄です。公的年金等をもらっていない人は記入する必要はありません。また、「配偶者の合計所得金額(54)」も配偶者特別控除を受ける人のみ、「専従者給与(控除)額の合計額(55)」や「青色申告特別控除額(56)」は青色申告をする人のみ記入します。
(7)還付される税金の受取場所
税金の計算の部分で「還付される税金(52)」に記入した場合は、税金の還付分を振り込んでもらう銀行口座情報を記入しましょう。
●確定申告書B(第二表)の書き方
緑色で示した数字の順に説明していきます。
(1)住所・氏名・屋号
確定申告をする人の住所・氏名・屋号(あれば)を記入します。
(2)所得の内訳
1年間に得た所得の詳細を記載します。「所得の種類」欄には所得区分(事業・給与・雑など)を記入します。「種目」欄は事業所得であれば「営業等」、給与所得であれば「給与」など具体的に記入します。「給与などの支払者の名称」欄には、支払いを受けた会社名と本社住所を記入します。
(3)総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項
総合課税となる譲渡所得や一時所得を記載する欄です。たとえば、不動産を売却して譲渡所得を得た場合、生命保険金(一時所得となるもの)を受け取った場合などです。
(4)特例適用条文等
課税の特例を受けている場合に記入する欄です。たとえば、住宅ローン控除の適用を受けている場合は居住開始年月日を記入します。
(5)社会保険料控除等に関する事項
社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除がある場合、各該当事項を記入します。
なお、生命保険料控除・地震保険料控除の欄は、第一表では「控除額」を記入しましたが、第二表では「実際に支払った保険料の金額」を記入します。間違わないように注意しましょう。
(6)本人に関する事項
寡婦、ひとり親、勤労学生、障害者、特別障害者である場合にそれぞれ丸を付けます。また寡婦、勤労学生の場合にはそれぞれ該当する区分にチェックしましょう。
(7)雑損控除に関する事項
災害や盗難、横領によって住宅や家財などに損害を受けた場合などで雑損控除の適用を受ける場合に記入します。
(8)寄附金控除に関する事項
ふるさと納税ほか、国や日本赤十字社、公益社団法人等に寄附をした場合に寄附先の名称と寄附金額を記入します。複数ある場合には、「○○市、△△ほか」などとして、合計金額を記入して構いません。
(9)配偶者や親族に関する事項
配偶者や子ども・親などを扶養している場合には、扶養親族の氏名・マイナンバー(個人番号)・続柄・生年月日・障害者・国外居住・住民税・その他に該当する項目を記入します。
(10)事業専従者に関する事項
個人事業主のうち家族が従業員として働いている人は、家族(事業専従者)の氏名・マイナンバー(個人番号)・続柄・生年月日・従事月数や仕事の内容・支払った給与などを記入します。
(11)住民税・事業税に関する事項
住民税・事業税に影響を与える事項について、該当する場合に記入する欄です。たとえば、ふるさと納税をしている場合は、「都道府県・市区町村への寄附(特例控除対象)」欄へふるさと納税額を記入します。
●記入後はミスがないかよく確認を
今回、確定申告をするときの主な書き方について説明しましたがお分かりいただけたでしょうか。確定申告書には記入する項目が多くて面倒に思う人もいるかもしれません。しかし、正しく申告・納税することは国民の大切な義務です。また、逆に確定申告をすることによって払いすぎた税金を戻してもらう権利もあります。今回説明した書き方例を参考に、面倒がらずに正確に記入していきましょう。記入した後はミスがないかよく確認をしてから提出するようにしてください。