2022年の相場はみなさんにとっていかがだったでしょうか。今年の相場は各国の金融政策の転換を背景に、株式市場には向かい風となりました。一方で、為替市場はアメリカの利上げによってドル買い・円売りが進み、ドル/円は約32年ぶりの150円台をつけました。しかし、11月以降は金融緩和姿勢を続けていた日本銀行も政策変更を示唆するなど様相が打って変わり、ドル/円は再び130円台まで下落をするなど、近年稀にみる乱高下を見せています。

今回はマクロ経済動向を中心に今年の相場を振り返っていこうと思います。

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■金融政策が大きく転換した1年

まずは世界の動きから見ていきましょう。世界的にインフレが進行し、そのインフレを抑えるために中央銀行は利上げを行いました。アメリカの中央銀行制度であるFRB(連邦準備理事会)が3月から、ユーロ圏の中央銀行であるECBが7月から利上げを実施し、そのほかにも各国で利上げが行われました。金利の推移を見てみると、今年に入ってから急激に上昇したことがわかります。

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金利上昇に伴い、低金利下での相場状況とは逆の動きとなり、特にこれまでの相場を牽引してきたハイテク株を中心に値を下げる展開となりました。イーロン・マスクCEOで注目を集めているテスラ、キャシー・ウッド氏が運用するハイテク株を中心で構成されるARKKのETFなど、コロナ禍の上昇相場を牽引した代表的な銘柄・ファンドが大きく下落しました。

来年以降も引き続きアメリカの金融政策動向には注目が集まります。金融引き締めに伴い、一時約40年ぶりの高値をうかがっていたインフレ率も、秋以降は落ち着きを見せています。今後の市場の焦点は、インフレが長期化するかどうかに移ってきており、その見通しによって今後の金融政策・市場の反応も変わってきます。

■日本にも遅れてきているインフレ・金融緩和終了の波

続いては日本の状況を見ていきましょう。日本は海外諸国と比べ、新型コロナに対する財政出動・行動制限の手法などが異なったことにより、インフレの状況も異なっていました。しかし、ここにきてデフレ体質であった日本にもインフレが遅れてきています。先日発表された11月分の消費者物価指数の総合指数は、前年同月比で+3.8%と約40年ぶりの高値を記録しています。

これまでのインフレとの違いは、消費者がインフレを受容しており、複数回にわたる値上げが許容されているという点です。今年に入り主に春先と秋の2段階にわたり広範な品目での値上げが行われており、それが徐々に消費者物価指数が上昇している背景です。加えて、すでに2023年冬にも値上げを予定している企業は多く、一段のインフレ圧力にも注意が必要です。

これらの状況の変化に対し、直近で日本でも大きな動きがありました。日銀は12月20日にこれまで行っていたYCC(イールドカーブコントロール)の政策目標の変更をサプライズ的に発表し、市場を驚かせました。これは簡単に言うと長期金利の変動幅の許容範囲を拡大するもので、実質の値上げと市場では捉えられています。

このサプライズに対し、市場はどう反応したのでしょうか。12月19日週の業種別騰落率を見ると対照的な動きをしています。上昇率TOPは金利上昇の恩恵を受けると好感された銀行、下落率TOPは金利上昇が逆風となる不動産となっています。

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金利上昇が住宅ローン金利上昇を招き、住宅販売に影響が出るとの見立てから不動産業は大きく下げました。これまで金利が上がらなかったことから、住宅ローンの金利タイプに変動金利を選択している比率も非常に高く、今後はそれによる家計の影響も考えられます。不動産は景気のバロメーターにもなるため、動向には注意が必要でしょう。

一方で、金利上昇で貸し出しによる収益改善が期待され買われた銀行セクターには注意も必要です。たしかに、金利上昇による収益へのプラスインパクトはありますが、金利上昇は国債価格の下落を伴うため、国内債券を保有している場合は含み損の拡大につながります。短期的に幅広く銀行銘柄に買いが集まっていますが、最終的にはファンダメンタルズ次第で銘柄ごとの買いの強さは変わってくることが予想されるため、銀行への注目は上げておきつつも、それぞれの企業の中身の精査は必要でしょう。

2023年は、今回の政策変更による市場への影響、並びに日銀の更なる政策変更の動きに注意をする必要があるでしょう。

■個人投資家の投資環境が大幅に改善か

最後に、政府の個人投資家に対する政策も変化が見られました。NISA制度の改正です。これまでは制度を活用できる期限が決まっていましたが、無制限となる予定です。そのほかにも金額の上限の増額や、途中での売買で買い付け枠が回復することなども検討されており、制度としては大幅にパワーアップされています。

詳細はまだ判明していない部分もありますが、税制メリットを得られる金額の上限が上がったことや、年数が無制限となったことにより、活用できる選択肢が増えたことがポイントだと筆者は考えます。

NISAに関する議論はこれまでも多数行われてきましたが、今後一層注目となっていくでしょう。証券会社としてもNISA口座をフックとして顧客獲得をしていく機運が高まっていくことが考えられ、投資家層の拡大に期待ができます。

■環境変化をうまく乗り切ろう

2022年を振り返ると、市場の環境変化を伴いながら、政府の動向を中心に株式投資へフォーカスが強まった1年ではなかったでしょうか。特にNISA制度の議論に関しては、ポジティブに捉えると、個人投資家には追い風の環境であり、すでに投資をしている人にとっては投資を加速させる機会、これから始める人にとっても税制をはじめメリットを活かしやすい環境となっています。

年末年始のタイミングで、社会の動向について振り返りつつ、今後の資産形成の戦略について一度向き合ってみてはいかがでしょうか。