承久の乱では、総大将に義時の息子・北条泰時(坂口健太郎)を迎えて戦った。ヒール的ポジションとなった後鳥羽上皇役の尾上松也のねちっこい演技も冴え渡っていたが、小栗は松也について「やはり歌舞伎をやられている方たちが時代劇をやると、どうやっても自分たちには出せない色気や声音など、いろんな技術を出せるんだなと感じます。特に松也くんの後鳥羽上皇の嫌らしい品みたいなのは抜群でした」と絶賛。
「台詞1つを聞くだけで、雅な感じが伝わってきました。後鳥羽上皇は義時よりも年齢が下のはずなので、ベストなキャスティングだったなと。義時からすれば本当にうざい存在で、常に武士のことを下に見ているんだろうなと思い、心の中ではものすごくメラメラしていました」と笑った。
無事に幕府軍が圧勝し、名実ともに鎌倉幕府が日本を支配する時代がスタート。このあと、義時と山本耕史演じる三浦義村とのシーンや、義時と政子とのシーンが非常に味わい深かった。
小栗は山本については「耕史さんと現場をやると、彼自身ももちろん面白い芝居をされますが、耕史さんを通して、義時というキャラクターが、お客さんの目にどう映っているのかが、伝わってくるんです。耕史さんは常にそういうリアクションを返してくれる方なので、僕としては共演していてすごく救われました」と感謝する。
続く小池と2人でのシーンで、クランクアップを迎えたという小栗。「納得のいくラストだと思っていたのですが、いざ、自分が実際に演じてみたら、本当にこれで全部が終わったという気持ちになれました。制作統括の清水(拓哉)さんとも話していましたが、『今からもう1回義時をやってくれ』と言われても全くできないし、何も覚えていませんという感じでした。まさにあの日、あの場に全部置いてきたんです」とやりきった感を口にする。
そして、義時の最期について「彼自身はまだあそこで死ぬ気はなくて、『まだまだ生にしがみついていたい』という思いがあるところなんです。ただ、前半、政子と2人でしみじみ昔のことを語っているところでは、『自分の人生の最期を迎えているような状況でしゃべっちゃっているな』と感じていたんですけどね。そんなつもりは毛頭なかったんですけど、そういう感じになってしまったなと、義時を演じながら思っていました」と語った。
「三谷さんが最終回をああいう形で描いてくれたことがすごくうれしかったです」と感無量の様子だった小栗。加えて「今回、三谷さんが大河ドラマをこよなく愛している方だってことが伝わってきました。だから自分は大河ドラマを、三谷幸喜さんの脚本で演じられたことがとてもありがたかったです」と言葉をかみしめた。
小栗にとって代表作の1本に加わったことは間違いない『鎌倉殿の13人』は多くの人々を魅了した。視聴者はしばらく余韻に浸るのではないだろうか。
1982年12月26日生まれ、東京都出身。98年、ドラマ『GTO』で連続ドラマレギュラーデビュー。03年、舞台『ハムレット』で蜷川幸雄演出の舞台に初出演し、蜷川作品の常連となる。主な出演作としてドラマ『花より男子』シリーズ(05~07)、映画『クローズZERO』シリーズ(07/09)、映画『銀魂』シリーズ(17、18)、『罪の声』(20)、ドラマ『日本沈没-希望のひと-』(21)など。また主演舞台『ジョン王』(東京・Bunkamuraシアターコクーン他)が12月26日より幕を開ける。
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