『ドラえもん』の生みの親である漫画家、藤子・F・不二雄さんが描いた刺激的でシュールなSF短編漫画が実写化され、2023年春にNHK BSプレミアム・BS4Kで『藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ』(15分×12回予定)として放送されることが9日、発表された。

  • 藤子・F・不二雄さんのSF短編漫画を実写化

『ドラえもん』『オバケのQ太郎(共著)』『パーマン』『キテレツ大百科』など児童漫画の名作の数々を送り出してきた藤子・F・不二雄さん。そんな藤子さんには、もう一つのライフワークがあった。『ドラえもん』の連載が始まる前年の1969年、大人向けコミック誌にSF『ミノタウロスの皿』を発表。その衝撃的な内容が評判となり、その後、生涯にわたり、刺激的でシュールな味わいのあるSF短編を多く執筆していたのだ。その作品数は110以上に上り、未知のウイルスによる未曽有の災厄、核戦争の脅威、食糧危機と超高齢化、神の領域まで浸食する生命科学技術など、まるで21世紀の世界を藤子が予見していたかのような物語が描かれている。藤子ファンにとっては、どれも傑作ぞろいと言われ、長年本格的なドラマ化が待ち望まれていた。

2023年、藤子・F・不二雄生誕90周年の年に、満を持して10作品を実写ドラマとして放送することが決定。今回そのうちの5作品について、作品名と出演者が発表された。

コロナ禍を彷彿させるウイルスのはびこる世界を描いた「流血鬼」(前後編)には金子大地、堀田真由、加藤清史郎、締め切りに追われる漫画家がタイムスリップする「昨日のおれは今日の敵」に塚地武雅、人の心の声が聞こえる不思議な実を手にした青年の物語「テレパ椎」に水上恒司、食糧危機に陥った未来の老人の悲哀を描いた「定年退食」に加藤茶、井上順、悪魔との魂の取引をコミカルに描く「メフィスト惨歌」に又吉直樹、鈴木杏、遠藤憲一といった、若手からベテランまで実力派俳優が揃った。

出演者のコメントは以下の通り。

■金子大地/「流血鬼」

今回お話をいただいて初めて原作を読みました。今の世界にすごくリンクしていて不気味でヒリヒリするのですが、とても面白くて一瞬で読んでしまいました。僕が演じた少年はオカルトや吸血鬼伝説を信じていて、周りの人たちに「何言ってんだよ」と言われるのですが、それがだんだん現実になっていきます。自分自身ももしかしたら都市伝説が現実になることもあるのではないかと思う時があるので、少年の気持ちは想像しやすい部分が多々ありました。原作を読まれた方にはものすごく再現度の高いドラマになっていると思いますので楽しんでいただけたら嬉しいです。

■堀田真由/「流血鬼」

少女Aを演じさせていただきました。衣装合わせの段階から原作に忠実に藤子・F・不二雄さんの世界観溢れるキャラクターを作り上げていくことがとても楽しくて仕方ありませんでした。ある人から見れば正しいことも違う人にとっては悪である。物の見方、それぞれの価値観を今現在を生きる私たちに問われた作品だと思います。私自身これまでにお見せしたことのない姿にも挑戦しているので是非、放送を楽しみにしていてくださると幸いです。

■加藤清史郎/「流血鬼」

子供の頃から読んだり、観たり、ミュージアムに行ったりして触れてきた藤子・F・不二雄先生の作品に携われることが、何より嬉しかったです。『流血鬼』は、SFチックなお話ではありますが、40 年以上前に描かれたものにも関わらず、それはよく考えてみれば、我々が生きる現代の生活にも起こりうると思える、あくまで“すこし・ふしぎ”な作品です。正義と不義は表裏一体。吸血鬼と流血鬼によるサバイバルを、どうぞお楽しみ下さい。

■塚地武雅/「昨日のおれは今日の敵」

漫画原作であり、何より敬愛する藤子・F・不二雄先生の作品なので、まず見た目から似せたい!というところから始まりました。ご存知の方には似てる!と評判。ところが台詞覚えが大変!ほとんど 1 人喋りの 27 ページ。(締め切りに追われているのに寝てしまう)主人公と同じく途中で諦めて寝てしまう夜もあり…。笑。なので役作りはバッチリ!撮影時は台本、漫画を照らし合わせてと 2 倍の労力。コマや吹き出しに合わせるところ、でも現代に設定を変えているのと感情の言葉として変えた方が良いところ。そんなバランスも考えながら演じました。大変だった分、達成感も一入。忘れられない作品になりました。

■水上恒司/「テレパ椎」

ここ数ヶ月間、今回の作品とは全く関係無く、藤子・F・不二雄さんの異色短編集と出会い、その世界観と作品の密度の濃さに魅了されていました。そこに今回のお話を頂き、不思議なご縁を感じると共に無駄なことは無いなと思うばかりです。さて、今回の鳥留梨男は私自身、初めて原作に忠実に芝居を重ねて参りました。こんなにも原作のスケールが大きくなると緊張感が凄まじかったです。時が経っても風化せず常に時代に問いかける力を持つ藤子・F・不二雄さんの『テレパ椎』楽しんでご覧ください。きっと、あなたもテレパ椎を持っているはず。

■加藤茶/「定年退食」

この原作はまるで現代版「楢山節考」ですね。50年前にこの未来を見通していたってすごいな、と思いました。今回は、原作マンガに寄せてハゲヅラかぶったほうがいいかな、とも思ったけど、やめました(笑)。 実は僕は真面目な役でドラマに主演するのはこれが初めてなので、この作品では、僕の真面目な部分、あまり普段見せていない部分を見てほしいな、と思います。売れない時代にジャズ喫茶で出会って以来の友人・(井上)順ちゃんと共演できて、幸せでした。2人で演じるのはおそらく「かくし芸」以来。またいろいろ共演したいです。

■井上順/「定年退食」

撮影はとにかく楽しかったです。高齢社会とは言え何時お迎えが来るかも知れないこの時期に、大好きなカトちゃんが醸し出す温かさや安堵感の中に一緒に過ごした時間は、人生の貴重なオマケのようでした。藤子・F・不二雄先生が50年前に描いた未来はブラックですが、「人との繋がりを失っちゃいけない」というのがメッセージだと思います。演じた役・吹山も、良いオツマミとなれば幸いです。どこでもドアとかタケコプターとかいろいろ夢を与えてくれた藤子先生だけど、現場では、アンキパンが一番欲しかったなぁ(笑)

■又吉直樹/「メフィスト惨歌」

この作品はメフィストのキャラが圧倒的に面白いですね。悪魔は人を苦しめる怖い存在っていう決まりを藤子さんが大胆に捉え直しをしているところはやっぱり斬新だなと思います。主人公は、淡々としていて、無感情で、人間っぽくない人物ですが、僕はそういう人物こそ実は結構人間的だと思います。何を考えているかわからないようなイレギュラーな動きをする人っていますよね。そんな意外な人間と意外な悪魔が、意外な物語を作っていくところを是非ご覧いただきたいと思います。

■鈴木杏/「メフィスト惨歌」

又吉さんとご一緒できるという幸運に恵まれてとても嬉しかったです。佇まいから醸し出されるものが原作の漫画が持つムードそのままで、とても素敵でした。撮影が1日だけだったので、もっと観察していたかったです(笑)。遠藤憲一さんと又吉さんの掛け合いも、拝見するのがとても楽しみです。また、シリーズの他の回を観るのも、楽しみにしています。

■遠藤憲一/「メフィスト惨歌」

このようなぶっ飛んだナンセンスな物語が40年以上前に書かれたとは驚きです。最初は原作ほどテンションを上げないでいこうと思っていたのですが、結果的に、はちきれた演技になりました。一言一句、台詞を繰り返し覚えつつも、一度壊さないとこの役は面白くないと思って、アドリブなのか台本なのか分からないような域に到達するようにしたつもりです。ナンセンスの中に人間の生命への深いメッセージがあるのが、藤子さんらしさですね。僕が悪魔に相談するとしたら、子供の頃の肉体の自由さを取り戻したいかな(笑)