「紛争」「戦争」の意味や違いについて解説します。「紛争」「戦争」という言葉は、日本国内では身近なできごとではないため、「紛争」「戦争」について言葉の意味はなんとなく知っていても違いをきちんと答えられる人は少ないでしょう。
この記事では、「紛争」「戦争」の基本的な意味や違い・使い方や、よく似ている言葉である内戦・テロとの違いについても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
「紛争」「戦争」の違いをわかりやすく解説
はじめに、「紛争」と「戦争」の意味と原因をそれぞれ簡単に解説します。意味や原因を知ることで、「紛争」と「戦争」の違いを正しく理解できるでしょう。
「紛争」の意味と原因
「紛争」は、人間関係の広い範囲におけるもめごとのことをいいます。一般的に国家間や民族間の諍い(いさかい)をイメージする人が多いかもしれませんが、家庭内の夫婦喧嘩・親子喧嘩や、企業において労働者が経営者に反発することも「紛争」といえます。
一方が民間人で、一方が武器を持った組織である場合も、「紛争」と呼びます。戦闘で命を落とした人の数が1,000人を超える場合、「高強度紛争」に分類されることもあります。
紛争は幅広い意味を持つので、紛争の原因も多岐にわたります。家庭内の些細な諍いからはじまることもあれば、国境が曖昧なためにはじまった衝突が紛争に発展することもあります。宗教の名のもとにおこなわれる紛争や、民族や文化の違いによって引き起こされる紛争もあります。
「戦争」の意味と原因
「戦争」は、軍隊同士が武器を持って争うことをいいます。特に国家間において、自国の目的を達成するために武力を行使する場合を指し、宣戦布告によって開始されることが国際法によって定められています。
一方で、苛烈な争いを表現するときにも使われ、「受験戦争」「交通戦争」といった使い方をすることもあります。
紛争と同様に、戦争の原因も多岐にわたります。民族や宗教などの文化や思想の違いから生まれる戦争や、資源や領土の取り合いによって引き起こされる戦争、国内の政治に不満を持つことからはじまるクーデターなども戦争に発展することがあります。
多くの場合、いくつかの原因が重なって引き起こされるので、戦争の原因を1つに絞ることはできません。些細な諍いが戦争に発展した歴史もあり、広い意味で戦争も「紛争」のひとつといえるでしょう。
「内戦」「テロ」との違い
「紛争」「戦争」とよく似た言葉で、「内戦」「テロ」があります。
「内戦」も広義では「紛争」に含まれますが、内戦は特に国内の同じ国民同士の争いのことをいいます。「内乱」にも同じ意味があります。
「テロ」は「テロリズム」の略で、特定の思想や主張のもと恐怖や不安を抱かせることで目的を達成しようとする暴力主義的破壊活動のことをいいます。小規模の武力集団が敵対勢力に勝てないとき、一般の人々を巻き込むことで敵対勢力に心理的・経済的打撃を与えることを目的としています。テロを行う人のことを「テロリスト」といいます。
先進国の多くはテロ対策を施しており、日本でも公安調査庁・警察庁がテロの情勢や組織情報をまとめています。
「紛争」と「戦争」の使い方と例文
「紛争」と「戦争」の違いを理解するために、「紛争」と「戦争」の使い方と例文をみていきましょう。
紛争は「小規模な武力衝突」
紛争は「事がもつれて争うこと、もめごと」のことをいいます。些細な諍いから大きな闘争まで幅広く「紛争」ということができますが、主に「小規模な武力衝突」のことを紛争と呼ぶことが多い傾向にあります。
紛争を使った例文
例文① 家庭内のどのようななささやかな紛争にでも、必ず弟は顔を出す
例文② 当局はそこから生じる紛争を警戒している
例文③ つねに軍事紛争を引き起こしている
戦争は「2つ以上の国の衝突」
戦争は軍隊と軍隊が武器を持って争うことをいいます。「受験戦争」など身近な競争についていうこともありますが、主に「2つ以上の国の衝突」について戦争ということが多い傾向にあります。
戦争の例文
例文① 戦争のとき、出征して負傷した
例文② 戦争に勝てたのは、戦略を立てるのが上手だったからかもしれない
例文③ A国との戦争が長引いている
2022年も続いている紛争や戦争
「紛争」や「戦争」は今では歴史の教科書の話と思う人もいるかもしれません。しかし、令和の時代になった今でも、世界のどこかで紛争や戦争が起きています。2022年現在でも続いている紛争や戦争の事例をまとめました。
2022年も続いている紛争
世界中で起きている紛争の数は、2020年時点で50を超えるといわれています。中には2022年現在も続いている紛争があります。
- クルド対トルコ紛争 トルコ政府とクルド人による武力衝突が、クルド対トルコ紛争です。
クルド人は「国を持たない民族」といわれていますが、トルコ政府はそれを良しとしません。両者の政治思想と民族文化の違いによってはじまった紛争です。
1984年、クルド労働者党(PKK)によるトルコ政府へのテロ攻撃を発端に、クルド人が自治体の確立を目的に複数の組織でテロ活動をおこなっています。内戦が続くシリアの混乱に乗じて同国にクルド人が居住地域を支配下に置くと、トルコ政府がシリアに越境攻撃を仕掛けるなど、いまだに紛争が収まる気配はありません。
2022年も続いている戦争
2022年も続いている戦争は、今なお多くの人の関心を集めているロシア・ウクライナ戦争です。
ロシア・ウクライナ戦争は、2022年にロシア軍がウクライナに侵攻したことではじまりました。ウクライナをロシアの一部だと考えているプーチン大統領が、ウクライナがNATOに加盟するのを嫌がったことがきっかけといわれています。
ウクライナはロシアの一部でひとつの国だ、とプーチン大統領が主張する一方、ウクライナ側はロシアに軍事力で脅されてきた歴史もあり、ロシアに対する恐れがあります。
国連での取り決めで戦争は禁止されているのにもかかわらず、強大な国のロシアがルールを破って戦争をはじめてしまい、どこの国も止められなくなっているのが現状です。
紛争や戦争が続くとどうなる?
紛争や戦争は、一度はじまるとどちらも引くに引けなくなり、長引いてしまうことが多いようです。紛争や戦争が続くことによる問題についてまとめました。
市民の生活が脅かされる
紛争や戦争によって町が攻撃されると、市民の生活が脅かされます。インフラ設備や建造物などが破壊され、市民の生活が成り立たなくなってしまうからです。
また、国連の取り決めで兵士は民間人を攻撃してはいけない、と決められていますが、いざ戦闘になると民間人を巻き込んでしまうのが実情です。紛争や戦争が続く地域では、いまこのときも兵士の攻撃におびえながら暮らす民間の人々がいます。
難民が増える
紛争や戦争が続くと、難民が増えるという問題があります。
前述したように町が攻撃され、そこに住むことができなくなって他の国に移住した人々のことを難民といいます。2021年時点で、紛争によって故郷を追われた難民や国内避難民などの数は世界中で8,930万人にものぼるといわれています。
子どもたちも被害を受ける
紛争や戦争が続くと、子どもたちも被害を受けます。町への攻撃によって住む場所を追われ、学校が破壊されてしまえば学ぶことができなくなってしまいます。
さらにひどいと両親が紛争や戦争に巻き込まれて孤児になってしまったり、戦いに駆り出されて少年兵士として戦って命を落としたりすることもあります。
紛争や戦争をはじめるのは大人たちですが、未来ある子どもたちがその犠牲になっているのです。
紛争や戦争が続く地域のためにできること
世界大戦で大きな傷を負った歴史を持つ日本は、2022年現在は紛争や戦争が起きていません。しかし、世界のどこかでは、まだ紛争や戦争が続いています。 紛争や戦争が続く地域のためにできることをご紹介します。
寄付
紛争や戦争が続く地域のためにできることのひとつ目は、寄付をすることです。 現地の地雷撤去や難民サポートなどの活動をおこなっている団体があります。その団体に寄付することで、間接的に紛争・戦争地域の命を救うことができるでしょう。
寄付先としておすすめの5団体を紹介します。
- 認定NPO法人 難民を助ける会(AAR Japan)
世界16か国で難民のサポートをおこなっています。 - 公益財団法人 日本ユニセフ協会
約190の国や地域で、子どもたちの命を守る基礎的な支援をおこなっています。 - 認定NPO法人 国境なき子どもたち(KnK)
カンボジアやフィリピンをはじめとして、子どもたちの教育や食事を支えています。 - 認定NPO法人ワールド・ビジョン・ジャパン
約100か国の子どもたちを支える団体です。世界最大級の子ども支援団体で、国連にも公認・登録されています。 - 認定NPO法人Reach Alternatives(REALs)
紛争・戦争地域の人々のために、必要な支援を行う団体です。
ボランティア
紛争や戦争地域のために、ボランティア活動に参加して支援する方法もあります。 ボランティア活動は日本で行うので、現地に行く必要はありません。平日だけでなく土日に活動するところもあるので、サラリーマンでも取り組みやすい日程もあります。
紛争と戦争の違いを知り、できることからはじめよう
紛争と戦争の違いについてまとめました。紛争は広い意味での衝突、戦争は武力行使による国家同士の衝突のことをいいます。
2022年になった現在でも、紛争や戦争が続いている地域があります。日本も戦争から復興してきた過去があるので、寄付やボランティアなどの支援につながる行動を、自分たちにできることからはじめてみましょう。