近畿日本鉄道は、新たなラッピング列車「ならしかトレイン」の試乗会を12月3日に開催した。試乗会では、大阪上本町駅の地上ホームから奈良線を通り近鉄奈良駅まで走った。「ならしかトレイン」は12月5日から、近鉄奈良~神戸三宮間などで運行される。

  • 12月5日から運行開始する近鉄の新ラッピング列車「ならしかトレイン」

近鉄では、奈良への観光客やインバウンド客に対して奈良公園への利便性をアピールするため、ラッピング列車「ならしかトレイン」を12月5日から運行する。対象となる車両は1026系1編成(VH27編成 / 6両編成)。外装のイラストは、イラストレーターの「げみ」氏が担当。近鉄奈良駅周辺の風景や鹿などをイメージし、オリジナルで描き下ろしたイラストを車体の全面にラッピングしている。

外装のラッピングは3パターンからなる。1つ目は車両全体に若草山の草原を駆ける様子がラッピングされている。2つ目は桜と東大寺、ならびに春日大社の藤棚が夏の象徴として描かれている。3つ目は興福寺と紅葉、猿沢池と冬景色を表現した。いずれも優しいタッチで描かれ、まるで絵本の世界に入り込んだような印象を受ける。

  • 車両全体に若草山の草原を駆ける様子が描かれた

  • 桜と東大寺を表現した華やかな装飾

  • 春日大社の藤棚は夏の象徴として描かれた

  • 幻想的な雰囲気に包まれた興福寺と紅葉のラッピング

  • 冬を表す風景として描かれた猿沢池と冬景色

車内は「げみ」氏のイラストや鹿をイメージした装飾により、楽しい雰囲気に。シートは鹿の背中をイメージした柄を採用し、優先座席は若草山と鹿を描いた柄となっている。優先座席の柄をよく見ると、白色の鹿もいるので、ぜひ見つけてほしいところ。吊り革は鹿の形をあしらい、持ち手は鹿せんべいと同色になっている。

床面は奈良公園の芝生をイメージした鮮やかな緑色に。他にもステッカーをはじめ、車内の至る所に鹿が見られ、奈良を強く意識するレイアウトとなっている。

  • 車内は「げみ」氏のイラストや鹿をイメージした装飾を施した

  • シートは鹿の背中をイメージした柄に

  • 優先座席の柄をよく見ると、白色の鹿が描かれている

  • 吊り革も鹿をモチーフとしたものに

「ならしかトレイン」の試乗会は大阪上本町~近鉄奈良間で3便運行され、第1便は10時1分に大阪上本町駅地上ホームから出発した。通常、大阪上本町駅地上ホームはおもに大阪線の列車が発着し、奈良線の列車は地下ホームに停車する。そのため、大阪線の列車が使う鶴橋駅2番線ホームに「ならしかトレイン」が停車し、鶴橋~今里間で大阪線(2番線)から奈良線(1番線)へ転線するなど、珍しいシーンも見られた。

「ならしかトレイン」の車内では、試乗会の参加者に鹿せんべいが配られるなどのサービスが行われ、終始なごやかな雰囲気に。運転停車を繰り返しつつ、1時間弱かけて奈良線を走り、10時58分に近鉄奈良駅に到着した。

  • 扉の端にあるステッカーにも鹿が描かれている

  • 近鉄奈良駅の駅名標。副駅名「奈良公園前」と鹿のイラストが加わった

  • 試乗会では、「ならしかトレイン」が鶴橋駅2番線ホームに入線。鶴橋~今里間で大阪線(2番線)から奈良線(1番線)に転線した

近鉄奈良駅では、試乗会が行われた12月3日から、新たな副駅名「奈良公園前」が設定された。駅名標も変更され、副駅名「奈良公園前」とともに鹿のイラストが描かれている。車内の自動放送でも、近鉄奈良駅をアナウンスする際、「奈良公園前」が加わる予定だという。

近鉄企画統括部営業企画部の吉見優一氏は、「ならしかトレイン」について、「奈良公園へ行くには近鉄が便利と国内外にアピールできれば」とコメントした。「ならしかトレイン」は奈良線の快速急行などで運用され、阪神なんば線へ直通して神戸三宮駅にも乗り入れる。固定ダイヤではなく、ホームページ等での公開はしないとのこと。運行時期は12月5日から当分の間とされ、数年単位での運行を予定している。