東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『最高のオバハン中島ハルコ』(毎週土曜23:40~)で、“美濃のマムシ”こと政財界のドン・海藤道三役を演じる俳優の佐野史郎が、自身の役どころや主演の大地真央とのエピソードなどについて語った。

  • 佐野史郎 =東海テレビ提供

――「マムシはしつこい」とハルコさんに言われていますね。

海藤道三は、岐阜出身の大物政治家で策略家。次から次へと策を編み出し、有事以外は自ら動かず、部下たちに指示を出しています。その部下たちが本当に使えないので困っているところですが(笑)。

衣装合わせの段階から「いずれはハルコと直接対決がある」ということを聞いてはいましたが、ドラマ内での出方としては第1話からずっと“思わせぶりな登場場面”が1〜2シーンしかないので、見ている方からしたら不思議な存在だったしょうね(笑)。とは言え「いつもの悪役の、怪しげな佐野がまた出てきたか」という感じもあるでしょうから、そのご期待に応えられるよう、こちらも楽しんで演じています!

――特徴的なセリフが怪しさを増幅しています。

『Blha Blha Blha……(ブラブラブラ)』というのは英語で、説明のできない時の「こんな感じ」や、重要でない部分を省略する時の「なんとかかんとか」に相当する言葉らしいですが、最初、台本読んだ時は「どういう態度なんだろう?」と少々悩みましたね。結局、言い方などは現場で監督と相談しながら決めましたが、 海藤の怪しさを象徴するセリフですよね。先週放送の第8話のラストでは「政治は義理と人情だ」という海藤のセリフがありましたが、それは口先だけで実際は「政治は金」「義理と人情は金のために使う道具」だと思っているような人ですよね。

――佐野さんにとって「俳優」とは?

海藤のセリフにあった「(政治は)義理と人情」の正反対という意味で「俳優は無縁と非情」かな。「義理」や「人情」というのは「縁(人と人の関係)」にがんじがらめになる側面もある。 俳優の仕事は「縁」や「情」といった浮き世の決まりごとに縛られず、かつ描かれた世界に順応し“在るがままの姿”を提示することかもしれない。「無縁と非情」と言いながら、時代の鏡となるよう、悪役といった反面教師も含めて、時代を映すような仕事でありたいですね。

――大地さんとの共演経験&印象について。

大地さんとは6年ぶり2度目の共演。その時は、それ程からむ役ではなかったので、今回ガッツリ向き合うシーンがあるのが楽しみでした。第7話の“ハルコとの初対面シーン”の撮影は面白かったですよ。実際のところは存じ上げませんが、芯が強く堂々と生きてらっしゃるように見える大地さんは、何が起ころうとマイペースなハルコそのもの。こちらが役として何をやろうともびくともしないところなんかは、最近は会うことが少なくなった“大物女優”そのもので昭和の人間としては嬉しくなりましたね。

本作にはデフォルメした設定や演技、荒唐無稽な展開もあり、リアリズムで言ったらツッコミたくなる点も多々あるけれど「現実をデフォルメするとこんな感じだよな」と説得力を感じさせられる方がお相手だと、俳優としては心強い限り! 撮影合間には「コロナで打ち上げがなくて寂しいですね」なんて話もしました(笑)。

――視聴者へのメッセージをお願いします。

最終章では、ついにハルコと海藤が直接対決します。いつも海藤は指令室にいて、部下から報告を受けていますが、 ついに本丸に乗り込み、ハルコのやり方を目の当たりにするわけです。そこで“本当の政治”を行うハルコに、皆が心を動かされる様子を見て海藤がどのような反応をするのかも見ものですよ。「政治は義理と人情だ」と言いつつ 「政治は金」だと思っている海藤ですが、最近ニュースを騒がしている状況が笑っちゃうくらいリンクしているので、 政治と金に対する不満や不信感という意味でも見る方のリアリティーが一段と増すと思います。 近年ドラマも配信の時代となり、後からいつでも見られるようになりました。本作も実写版コミックとして何度も繰り返し見てもらっても楽しめる作品となっていますが、是非今夜はリアルタイムで見てもらえると嬉しいですね。