KDDIウェブコミュニケーションズ(KWC)は、東京本社オフィスをリニューアル。今までオフィスだった約半分の面積にシェアオフィスの機能性とラウンジの居心地のよさを併せ持つ空間「SHARE LOUNGE 外苑前」と、コミュニケーションを生み出すイベントスペース「FLAT BASE」を12月1日にオープンした。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と協力し、「第三の仕事場」として家にいても、職場にいても出会えない人や経験ができる場所を目指す。11月30日にはメディア内覧会が行われ、KWCの山崎雅人氏が両施設の開業背景などを語った。
■本社オフィスを刷新! 隣接エリアをラウンジとイベントスペースに
KWCは、中小企業向けクラウドサービスを展開しているKDDIグループのIT企業。コロナ禍前からテレワークやフルフレックスタイム制などを導入。2020年2月から社員全員が在宅勤務に移行し、現在も東京本社オフィスの社員は在宅勤務を中心とした働き方を継続しているという。
偶発的なコミュニケーションが減少するという在宅勤務のデメリットを解消し、テレワークもオフィス出社も可能なハイブリッド勤務を目指して、このほど東京本社オフィスをフルリニューアル。オフィスの隣接エリアに「SHARE LOUNGE 外苑前」と「FLAT BASE」をオープンした。
両施設はスペースの提供だけではなく、KWCの独自コンテンツやイベントを随時開催し、リアルな接点を媒介にしたコミュニケーションデザイン事業を行っていく。
「会社と人、人と人の関係が大きく変わり、リモートワークの課題も露呈する中で新たなワークスタイルが問われていると我々は考えています。これまで当社ではローカルやWebのコミュニケーションを軸に事業展開をしてきましたが、今回の取り組みはリアルコミュニケーションの領域でのコミュニケーションデザイン事業という位置づけです」(山崎氏)
CCC関東カンパニー社長の安田秀敏氏は、同社の「SHARE LOUNGE」について次のように説明した。
「今回の『SHARE LOUNGE』の業態は、渋谷スクランブルスクエアで2019年10月に1号店が開業しました。恵比寿ガーデンプレイスのリニューアルでも『SHARE LOUNGE』のスペースを大きく割いた『TSUTAYA BOOKSTORE』をオープンし、多種多様な使い方をされてています。『SHARE LOUNGE』は台湾で展開する2店舗を合わせて合計17店舗、提携店の拠点で言うと20カ所以上の規模となりました」
外苑前駅すぐの立地でKWCのオフィスのリニューアルに伴い誕生した「SHARE LOUNGE」は130坪。ホテルやマンションなどでも展開を進める「SHARE LOUNGE」だが、オフィスビルでは初出店となる。
「オフィス環境や働き方のアップデートを狙いにしたとき、プラットフォームの上で今回いろいろコラボさせていただけることが、今回CCCさんと組ませていただいた理由です。しつらえは蔦屋さんの『SHARE LOUNGE』ですが、中身のコンテンツに関してはCCCさんと一緒に考えた独自のものになっています。また、ビジネスを超えた地域とのつながりも、これからの時代は非常に大切だと我々は考えており、そうした観点からもCCCさんと組ませていただく背景となりました。ビジネスパーソンに特化したスタイルが多いシェアオフィスですが、地域との交流のあり方を模索していこうと考えています」(山崎氏)
■充実した音響、映像設備を完備
「SHARE LOUNGE 外苑前」は、書斎のような個室や個人ブース席、会議室など、仕事がはかどる環境を充実させつつ、カフェラウンジのような居心地の良い空間に。仕事の合間や気分転換にフリードリンク&スナックを多数用意し、集中して仕事をしたい人にもリラックスしたい人にも最適な空間とした。
「充実の本棚があっていろんな気づきを得られるほか、IoTの技術を使い、センサーによって感覚をデータ化し、環境のチェックを行います。人はどういう空間が心地よいというのを追求して新たな職場環境をつくりあげていきたいと思います」
オープンに際してSHARE LOUNGEの本棚を手掛けたパートナーは、「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」のCOTEN社、スーパーミステリー・マガジン「ムー」(青土社)、『LISTEN―知性豊かで創造力がある人になれる』(日経BP)を監訳した篠田真貴子氏、北極冒険家の荻田泰永氏。
「FLAT BASE」はKWCが独自で運営するコラボレーションスペースで、ライブ配信スタジオ併設のイベントスペース、アートギャラリーやリラックススペースを備え、多目的に利用可能。充実した音響、映像設備も備えており、セミナーやライブビューイングなどであらゆる表現をサポートする。
「五感を研ぎ澄ますことをテーマに取り組んでいきたいと思っていますが、今回はまず音について紹介します。“100人で車座”を目指して音響システムが組まれており、小さな音量でもどこにいても全方向から同じ音量で聞こえる音響設定が可能な設備となっています」(山崎氏)
KDDIとJR東日本が共同開発した会議システム「空間自在ワークプレイス」も今後導入予定だという。
「遠隔のオフィスとオフィスを繋ぎ、あたかも同じ場所にいるような空間体験を可能にするものです。現在、ギャラリーには北極探検家の荻田さんの写真を飾っていますが、たとえば北極にいるような音響を再現できたり、CDの音源を野外フェスのような雰囲気の音響を再現したり。聴覚や嗅覚といった感覚を刺激しながら、写真や絵画などさまざまなカルチャーを盛り上げ、生活を豊かにすることで仕事がアップデートされる。そんな環境を実現していきます」(山崎氏)
■豊かな表現を実現した音響へのこだわり
パートナーとして今回の音響プロデュースをした、3Dサウンドデザインの第一人者・瀬戸勝之さんは、本施設の音響について説明した。
「単に声やマイクの音量を上げるよりも快適に、マイクを持って話す人が会場で聞く一人一人と線で繋がるような、コミュニケーションを取りやすくなるようなイメージで設計しています。メタバースなどを使い、コンサートや野外フェスのような環境を自宅で手軽に楽しめる時代が2年ほどで来ると私は思っていて。スマホとイヤホンで屋外で音楽を聞いているようなプリセットやアプリの開発もKWCさんと進めていく考えです」(瀬戸氏)
サンシャインシティの噴水広場などにも採用されている瀬戸氏監修の3D サウンドシステム。今回の「SHARE LOUNGE」での新たな試みとして、ソファの下や本棚などにスピーカーを仕込み、自然の環境音をよりリアルに再現する環境を実現したという。
「天井のスピーカーからは鳥のさえずり、床に近いスピーカーからはスズムシの鳴き声や水のせせらぎというように、コンクリートジャングルの中で大自然の雰囲気を再現できるようにしました。あえて物理的に天井から覗くものもありますが、これはある種の見せ方で、基本的には空間デザインでスピーカーを隠しています。スピーカーごとに違う音を流すため、ケーブルを1本1本引いているので、非常に手間とコストをかけています。音源は青森や屋久島で収録したもので、野外のフィールドにいるような感覚で働ける空間の演出を可能にしました」(瀬戸氏)
一般利用開始は2023年1月から。ライブ配信スタジオは追ってオープンする予定だ。