健康効果を強調する食品がさまざまある中、気になるのが「GABA(ギャバ)」。機能性表示食品登録件数はナンバーワン。研究の結果得られた最新情報をお届けしたい。
GABA(ギャバ)って何? 基本的な機能のまとめ
そもそもGABA(ギャバ)とはなんなのだろうか。成分の基本的な機能、拡大を続ける市場についておさらいしよう。
GABA(ギャバ)とは、γ-アミノ酪酸(Gamma-Amino Butyric Acid)の略称であり、天然に広く存在するアミノ酸の一種である。ヒトの体内では中枢神経系における抑制系の神経伝達物質として、重要な役割を果たしている。ちなみにGABAは野菜や果物などの天然素材にも多く含まれており、中でもカカオ豆のGABA含有量はトップクラスである。
チョコレートを食べると「気持ちが安らぐ」「ホッとする」と体感する人も多いだろう。この体感に注目した江崎グリコは、カカオに多く含まれるGABA成分の活用研究をスタートさせた。その結果、GABA成分には「抗ストレス作用」などの好ましい機能があることがわかった。それにとどまらず、高めの血圧低下、肌弾力の改善、認知機能の維持など、さまざまな人体へのメリットがあることが科学的に実証されてきた。
チョコレート商品の沿革としては、2005年に江崎グリコがGABA成分を含む「メンタルバランス チョコレート GABA」を発売。2016年に日本で初めて GABA成分を含む機能性表示食品としての届出が受理されると、GABA商品の市場は174億円を突破。過去6年でおよそ8倍の市場規模に成長した。
睡眠に関する著書もある東京大学の酒谷氏からは、GABA成分と睡眠に関し、以下のような説明があった。
睡眠障害の原因の一つはストレスであり、それに対抗しようと脳と体が反応する。このような体を守るため防御反応をホメオスタシスという。しかしながら、長期間強いストレス反応が続くと、心と体にさまざまな障害を引き起こす。アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群などの胃腸障害、そして不眠症などである。
GABAの生理学的な効果、睡眠薬のメカニズムを勘案し検証した結果、「GABAの摂取により寝つきが良くなる、深い眠りが多くなる、スッキリとした目覚めが得られる」といった効果が確認されている。
GABA成分に期待される新たな機能、筋肉量の維持と増加
人生100年時代と言われる中で、健康寿命を延ばすには筋肉量の維持が非常に重要である。加齢による筋肉量の低下は身体能力の低下につながるため、今や世界共通の課題となっている。
ファーマフーズ常務取締役の谷氏からは、ホエイプロテインとGABA成分を摂取することで、筋肉量を増やすという実験について説明があった。
概要は以下のようなことである。
ホエイプロテインはアミノ酸、特にBCAAの含有率が高く、BCAAは筋肉の構成成分となることが分かっている。筋肥大経路を活性化することで、筋肉量を増加させるのだ。一方でGABAは、成長ホルモンの分泌を促進するということが知られていた。それに伴いタンパク質の合成も促進する。しかしながら筋肉量を増加させるという点については仮説の域を出なかった。
そこでホエイプロテインとGABAを一緒に摂取することで、筋肉に対する影響を検証したというわけである。その結果、多量のプロテイン摂取と過度な筋力トレーニングなしに、筋肉量を効果的に増加させることが実証されたのだ。
さらに、日常生活を送る中で、GABAの摂取が筋肉量に与える影響についての検証についても説明がなされた。こちらは中高年女性を対象に運動負荷をかけることなく日常生活を送ってもらいながら、GABAを摂取するという内容だ。その結果、GABAを摂取していないグループよりもGABAを摂取したグループの方が筋肉量の増大・維持されることが確認された。
睡眠、筋力アップと期待は高まる。GABAへの注目度はますます大きくなっていきそうだ。