27日から東京・東京建物 Brillia HALLで上演されるミュージカル『東京ラブストーリー』に出演する熊谷彩春。同作は、1988年に連載開始された柴門ふみ氏の同名マンガで、1991年にドラマ化されると大ヒットを記録し、2020年にも令和版としてリメイクされた。熊谷はマンガを原作としたミュージカル版の海キャストとして、今作の主人公・永尾完治(濱田龍臣)が高校時代から思いを寄せる関口さとみ役で出演する。

今回は、大人気マンガのミュージカル版に出演する意気込みをはじめ、難役だと話したさとみ役へのアプローチや役作りのこだわりなどについてインタビュー。また、幼いころからの夢だったというミュージカルの世界を目指したきっかけや、海外での生活が与えた価値観の変化など、自身の半生についても振り返ってもらった。

  • 熊谷彩春 撮影:宮田浩史

■さとみを演じる難しさ「女性から人気のない役だったと聞いて…」

――今回、ミュージカル『東京ラブストーリー』に出演が決定しました。作品自体はご存知でしたか?

お話を頂く前は名前を知っているだけで、トレンディドラマの代表的な作品だという印象でしたが、出演が決定してから原作のマンガを読ませていただきました。そこからハマってしまって(笑)。かなり前に書かれている作品ですが、現代の若者に通ずるところも多いなと感じて、一晩で読破しました! その後に平成版と令和版のドラマを拝見して、どれも違った良さがあったので、今回のミュージカルでもまた新しい面白さを出していきたいと思っています。

――過去作品は予習済みなんですね。今までの映像作品と今回のミュージカル版ではどういった違いがありますか?

ミュージカルのいちばんの魅力は音楽だと思います。今作でも登場人物の心情表現が音楽なんです。完治、リカ、三上、さとみ4人それぞれの心情を1曲の中で4重奏で歌うシーンは、ミュージカルでしか成立しない表現方法だと思うので、注目していただきたいです。

――令和版ドラマで同役を演じた石井杏奈さんと『リトル・ゾンビガール』(22)で共演されましたが、作品や役についてアドバイスなどはありましたか?

話しました! さとみってすごく難しい役だよね~と(笑)。自分の気持ちがぐちゃぐちゃになる役だというのを共感してもらえました。平成版のドラマでは、さとみは女性から人気のない役だったと聞いて、2人で“私たちだけでもさとみを全力で愛していこうね!”と(笑)。つい先日も会って話をさせてもらえて、役作りで悩んだら連絡させて! と甘えさせてもらっています。

■22歳の現在地「まだまだ自分を確立できていない」

――同じさとみを演じたからこそ分かち合える唯一の存在ですね。熊谷さんが演じる関口さとみと、ご自身との共通点はありますか?

さとみ役が決まってから原作を読んだので、さとみの心情の変化を追いながら読んでいきましたが、さとみは東京に出てきて、右も左も分からない中で、一生懸命生きているといった印象で、本当の自分をまだ見つけられていなくて、見つけるまでの過程が描かれていると感じました。そこが今の私とも重なるなと思います。22歳の今、私もまだまだ自分を確立できていないですし、毎日必死ですね(笑)。さとみは恋やいろんな経験を重ねて、自分の居場所を見つけていくので、その姿を表現すると共に、私もいつかそうなれるように……。

――熊谷さんもまさに自分探しの途中だと。

そのためにミュージカルをやっているといっても過言ではないです。物心ついたときからミュージカルが何よりも大好きで、今こうやってお仕事としてやらせていただいている中で、役を演じながら自分自身と向き合う時間もあるんです。自分だったらどうする? とか1人になって台本と向き合うと、役について考えているはずなのに、結局は自分自身と向き合っているんです。今回のさとみを演じていてもその感覚は強くありましたし、何かつかめそうな気もしています。

■役作りのこだわり「体験できることは実際にやる」

――自分自身のヒントが今作にはありそうです。また、幼稚園の先生であるさとみの役作りのために、実際に先生の1日体験もされたとTwitterでつぶやかれていました。普段から役作りのために、そういった体験をなさっているのですか?

できることはしてから稽古に入りたいと思っていて、今回は幼稚園の先生役だったので、体験をさせてもらいました。あと、さとみは今治市出身なので、今治に実際に行って、舞台になっている場所や登場するご飯、地ビールを飲んだりしました。役作りと言っていいのかは分からないんですけど、楽しかったです。タクシーの運転手さんがすごく郷土愛の強い方で、今治弁やおすすめのスポットなどを教えて頂いて、すごく充実した時間になりました。

また、以前、出演した『笑う男』という作品で、目が見えない役を演じたときには、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という視覚障害について学べる施設があって、2時間半くらい真っ暗闇の中で白杖を手に持ちながら歩いて、目が見えない方の世界を体験しました。本などで得た知識はあったけど、やっぱり経験しないと分からないこともあるなと思っているので、できる限り体験できることは実際にやるようにしています。

――毎作品そうやって役作りをされているんですね。

台本を頂くと、まず読みながらやれることを探します。今回で言うと、さとみの恋人である三上くんは研修医の役なので、医学部に在籍している友人に“これって何?”とか、“この病気はどういう検査をするの?”とか研修医の1日のスケジュールなどを質問しました。彼氏が医療系だったら、一緒に住んでいるさとみもある程度は知っていると思うので、自分の役だけでなくて、関わりのある部分を含めて準備します。