ホンダの新型車「ZR-V」にはステアリングの裏側にパドルが付いている(グレードによる)が、従来は樹脂製だった同パーツをZR-Vではメタル製に変更している。事前の試乗会でも取材会でも、ホンダの開発陣がやたらと「メタル製パドル」であることを強調し、推してきた(と感じた)のだが、そんなに特別なことなのだろうか? 話を聞いてみた。
あっても使わない人が多い?
ZR-Vには2モーターハイブリッドの「e:HEV」搭載車と1.5Lガソリンターボエンジン搭載車の2種類があり、それぞれに「X」と「Z」の2グレードがある。メタル製パドルが標準装備となるのはガソリンの「Z」とe:HEVの「X」「Z」だ。ガソリンエンジン車では手元でシフトが切り替えられる「パドルシフト」として、e:HEVではブレーキオフ時の減速の強さを調整する「減速セレクター」として機能する。ハンドルを握ったまま、指でパドルを操作してシフトや減速感を操作できるので、例えば山のワインディングロードを走るときなどに使えば運転の楽しみが増す。
使えば楽しいパドルなのだが、ホンダの調査によると、付いていても使っていない人はけっこう多いそうだ。手の小さい人など、パドルを操作するのにハンドルから手を離さなければならない人には特に使いづらく、せっかくパドルが付いていても、ないものとみなしてクルマを運転している人もいるらしい。パドルを使える装置とするため、ホンダは素材を見直した。
樹脂製だとパドル先端の厚みを3mmくらいは確保しなければペラペラ、ヘナヘナとしたパーツになってしまうが、メタル製は頑丈なので、厚みを1.8mmまで薄くできた。これにより、指からパドルまでの距離を従来より短くできたのだという。樹脂製の部品を金属製にすればコストはかかるが、素材変更により見た目の質感も上がったし、触感も上がったので効果は大きかった。
開発陣によるとZR-Vはダイナミクス(運動性能)にこだわったクルマで、開発責任者は「神経直結ダイナミクス」という言葉を使って目指す走りを表現している。クルマを操作するうえで指先に伝わる感覚はとても重要なので、パドルもおろそかにはできなかったそうだ。ZR-Vのパドルは操作荷重を最適化することにより、重厚感のある操作フィールを追求したとのこと。これまでパドルを使っていなかった人も、ZR-Vに乗るときは試しに触ってみてはいかがだろうか。