女優の川口春奈、アイドルグループ・Snow Manの目黒蓮らが出演するフジテレビ系ドラマ『silent』(毎週木曜22:00~)。本気で愛した人と、音のない世界で“出会い直す”、切なくも温かいオリジナルラブストーリーで、放送されるたびにSNSのトレンドを席巻、見逃し配信で様々な記録を塗り替えるなど、今最も話題を集めているドラマだ。
メイン演出を担当するのは、風間太樹監督(AOI Pro.)。深夜で異例のヒットを記録し、映画公開もされた『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(20年、テレビ東京)や、不貞行為の瀬戸際を繊細に描いた『うきわ-友達以上、不倫未満-』(21年、同)、お笑い芸人が脚本を担当した『脚本芸人』(22年、フジ)など、次々に話題のドラマを送り出している。
初演出となるゴールデン・プライム(GP)帯ドラマで再び話題作を生み出している風間監督に、今作でのこだわりや脚本への信頼、そして今後の見どころなどを聞いた――。
■衝動と自制の揺らぎを繰り返す人間臭さが描かれた脚本
GP帯初演出について、「身構える気持ちがなかったかと言われれば、やはりありました」という風間監督。それでも、「プロデューサーの村瀬(健)さんとは5年くらい前からの付き合いで、『思い切ってやっていい』という話を初めにしてくださったので、その胸を借りるというか、自分がやりたいことを詰め込んでいけるような作品にしたい、ワクワクする気持ちの方が大きかったです」と今作に臨んだ。
今回メガホンを取ることになった何よりの決め手は、連ドラ初挑戦となる生方美久氏の脚本だったという。
「第1話の脚本を読んで、これは挑戦したいなと思いましたし、シンプルに面白かったんです。ずっと自分が挑戦したいと思っていた純粋なラブストーリーでもありましたし、登場人物たちの中に潜在的にあった誰かへの想いや、意識、あるいは思い残りに対して、どうしても動いてしまう気持ちを繊細に描きつつ、衝動と自制の揺らぎを繰り返す人間臭さも描かれていて、それを連続ドラマとして時間をかけて仕上げていくことはすごく面白いなと感じました」
■ドラマチックな場面で煽情的なBGMをかけない
そんな魅力的な脚本から映像へ落とし込む際に意識したのは、「人と人との距離感や時間的な距離感を、“音”の表現を通して演出できるシークエンスが多いだろうなと感じて、“音”を重視した演出を考えていけばいいなと思いました」。その通り、“音”に対するこだわりが随所に感じられる。
例えば、ドラマチックな場面でBGMをかけ、視聴者を煽情的に盛り上げるということをしないのだ。それについては、「やっぱり生方さんの脚本の構成であるとか、会話のテンポであるとか、場の空気感みたいなものが、すでにひとつの“音”として表現されているんですね。だから、できるだけ会話の中にある言葉やリズムをストレートに届けられるほうがいいと思いました」と判断した。
また、「編集をしていく中で、『ここは音楽いらないな…』と考えていくと、実はどのシーンも、言葉とキャラクターの動きで見せきる魅力がもうあるんだと気づいたんです。だから音楽をどこにかけていくかというのは、引き算をしていく感じですね」と、脚本の力を信頼していることがうかがえる。