• 鈴鹿央士(左)と川口春奈 (C)フジテレビ

生方氏の中で、物語はどのように作られているのか。

「基本的に心情に沿って書いています。先々の展開を考えながら書いていても、物語が進むにつれて結局変わっていきました。どこに向かわせるかで物語を作るというよりは、心情のほうを優先して書いている感じです。さすがに今の段階で最後の構想はもちろんあるんですけど、第1話を書いた段階では、最終回をどういう展開にするかとか、何も決まっていなかったです」

瑞々しいセリフの数々や、独特の言い回しも今作を鮮やかなものにしているが、こちらについても「特にそんなに意識してセリフは考えていないんです(笑)」という。

「何にこだわって書いているとかはなくて、最初にキャラクター設定を作ったので、その子がしゃべるならこういうこと言うだろうなとか、そういう感じで作っていますね」といい、独特なセリフ回しについても、「普通にしゃべっていても、逆説になったりとか、“え”とか“うん”とか普通は言うじゃないですか。そのほうが自然だなと思っているので、意識しているとすれば、セリフの中で、そういった、“え”とか“うん”とかをわざわざ書くようにしていますね」と教えてくれた。

生方氏を起用した村瀬健プロデューサーは、物語が決まったときに「生方さんが登場人物の設定はこんな感じという“プロフィール”を作ってきてくれたんです。それがA4ペラ1枚2枚とかの文量だったんですけど、とても良くできていて、それぞれの登場人物たちにどういう出来事があって、どういう人生を送ってきたのかがすごく分かるようなものでした」と明かす。

さらに、「彼女の才能を信じているので、良い意味で、好き勝手に書いてもらっています(笑)。そして出来上がったものに対して、僕らはそれが一番面白いと思っているし、そのまま受け入れているという感じですね」と絶大な信頼を寄せていた。

その信頼はスタッフだけでなく、出演者からも。「大作家先生ではないので、一字一句変えちゃいけないという感じでは全くないんですけど、セリフのディテールがとてもいいので、役者さんも本を愛してくれていて、強制するわけではないのに“てにをは”まで変えずにしゃべってくださっています」(村瀬P)とのことだ。

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■参考にしたのはキャストたちのインタビュー映像

こうして生方氏が紡いだセリフによって、“演じている”という印象を感じさせず、それぞれのキャラクターに合った“自然な言葉”を発しているように見える点も、共感度を高める要因の1つだろう。その背景に、キャストたちの素のしゃべり方の分析があった。

「元々ドラマや映画が好きで、川口さん、目黒さん、鈴鹿さんの3人の作品もよく見ていたのですが、今回参考にしたのは、演技をしているところというより、インタビュー映像でのしゃべり方とか、声のトーンとか、そういうところを反映しました。無理にキャラクターを当てはめるのではなく、それぞれのイメージに合うものを意識しました」(生方氏)

最後に、生方へ視聴者の反響の大きさについて伺うと、「みなさん、私が書くときより頭使って見てるんだなって思っています(笑)。もちろん、自分の遊び心に気づいてくださる方もいらっしゃいますが、私が意図していなかった部分に反応してくださる方も多くいらっしゃいますね」と、熱心なウォッチャーたちに感心していた。

制作者の思いや意図以上に視聴者が盛り上がるのは“良い作品”である何よりの証拠だ。それは生方氏が丁寧に丁寧に物語を紡いでいるからこそで、これから最終回に向けて、私たちの想像力を大いにかき立てる“豊かな作品”を見せてくれることに期待したい。

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