マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の運用が始まったことで、現行の健康保険証は2024年秋を目途に原則廃止する方針が決まりました。「マイナ保険証」には、さまざまなメリットがありますが、医療費が安くなるなら利用したいと思うのではないでしょうか。実は10月1日から「マイナ保険証」を利用すると、利用しない場合よりもおトクになっていたのです。どういうことなのか分かりやすく解説します。

  • 出典:マイナンバーカードの健康保険証利用|マイナポータル

■「マイナ保険証」と今後の動き

政府は10月13日の記者会見で現行の健康保険証を2024年秋を目途に廃止すると発表しました。これはマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への切り替えを促進したい狙いがあるようです。マイナンバーカードの交付率が49%(2022年9月末時点)にとどまっている中で、「マイナ保険証」への切り替えが期限内に行われるかは今後の政府の取り組みにかかってくるでしょう。

また同会見では、2024年度末としてきたマイナンバーカードと運転免許証の一体化の時期を前倒しする考えがあること、さらに、マイナンバーカードの電子証明書をAndroidのスマートフォンに搭載するサービスの提供を2023年5月11日から開始する方針であることを明らかにしています(iPhoneについては今のところ未定)。マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載することで、さまざまな行政手続きがオンラインで可能になります。

いずれにしてもマイナンバーカードの交付率を上げないと始まらないため、マイナポイントによる広報が大事になってきます。

マイナポイントがもらえるマイナンバーカードの申請期限が2022年12月末まで延長になり、マイナポイントの申込期限は2023年2月末となっています。最大で2万円分のポイントがもらえるので、マイナンバーカードを作っていない人はこの機会に申請するといいと思います。

■「マイナ保険証」が使えるところは?

ただし、せっかく「マイナ保険証」にしたとしても、使える医療機関や薬局がまだ少ないのが現状です。前出の会見で河野大臣は、「マイナ保険証に対応するためのカードリーダーの申し込みをした医療機関は8割を超えているが、運用開始をしているところは3割」と述べています。運用にはシステム改修が必要になるため時間がかかるようです。

しかし、2024年秋の現行健康保険証の原則廃止が示されたことで、今後、使える医療機関や薬局が急速に増えてくるでしょう。マイナンバー制度を利用した医療分野のデジタル化が期待できます。

■「マイナ保険証」を使うと医療費が安くなる

*2022年9月まで

これまで、マイナ保険証を使うと医療費が「高く」なっていました。これはどういうことかと言うと、マイナ保険証を利用するためのシステムを導入している医療機関は、導入費用を補うために診療報酬を加算できるようになっています。この加算された診療報酬は患者が3割負担(※年齢や所得に応じて異なる)、残りは加入している医療保険が支払います。

つまり、システムを整備する費用の一部をそのシステムを利用する患者が負担しているわけです。そのため、利用しない人よりも高くなっていました。金額は非常に小さいものですが、初診が21円、再診が12円、薬局利用で9円(いずれも3割負担の場合)従来よりも支払いが増えていました。

*2022年10月から

マイナ保険証の普及を推進しているのに、マイナ保険証を使うと医療費が高くなったら利用するメリットがありません。そこで、これまでの診療報酬の加算「電子的保健医療情報活用加算」は廃止され、新たに「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が設けられました。

マイナ保険証に対応している医療機関で従来の保険証を使うと、12円加算されるところ、マイナ保険証を使うと6円の加算となります。薬局の場合は、従来の保険証は9円加算、マイナ保険証は3円加算となります。(いずれも3割負担の場合)。再診では加算はありません。

  • 医療機関でマイナ保険証/従来の保険証を利用した場合の加算

これはあくまでも、マイナ保険証に対応している医療機関でマイナ保険証を利用した場合に、従来の保険証利用よりも初診が安くなるのであって、対応していない医療機関での利用ではそもそも加算がありません。

しかし、2023年4月から医療機関・薬局において、マイナ保険証による確認システムの導入を原則義務化することになっているため、マイナ保険証の利用が従来の保険証利用よりもマイナスになることはなくなるでしょう。

■窓口負担は限度額まで

マイナ保険証を利用することで、初診時の加算が従来の保険証よりも安くなるといっても、数円から数十円の差です。医療費についてのメリットは、マイナ保険証の利用によって限度額以上の医療費の一時払いがなくなることの方が大きいでしょう。

「高額療養費」は70歳以上の人か事前に申請した人については、窓口での支払いが自己負担限度額までとなりますが、それ以外の人は一旦立て替えて、あとで請求することによって、限度額を超えた分が高額療養費として払い戻されます。中には制度を知らない、忘れてしまったなどで、請求をしないままの人がいます。

マイナ保険証を利用すれば、あらかじめ患者の年齢、所得に応じた自己負担限度額を病院側が把握できるので、それだけを請求できます。これまで、こうした制度を使いこなしていなかった人たちにとっては、無駄に医療費を払うことがなくなるので、大きなメリットとなります。

■まとめ

マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を使えば、ここで述べた「医療費が安くなる」、「窓口での負担が限度額までとなる」メリット以外にも、「マイナポータルを利用して診療・薬剤情報・医療費・特定健診情報などを閲覧できる」、「医療費控除の申請が簡単にできる」など多くのメリットがあります。「マイナ保険証」をきっかけに、今後さらに医療のデジタル化が進めば、正確な情報をより効率的に取得して利用することで、医療の質の向上につながるでしょう。