生命保険を販売するには、生命保険協会が開催する試験を受験します。まずは「一般過程試験」を受験し、合格したらより上位の試験へとステップアップしていくのです。そして、最終段階には「生命保険講座」という試験があります。

「最後に受ける試験」となると難しい印象がありますが、生命保険講座とはどのような試験なのでしょうか。この記事では、生命保険講座の内容や受験概要、スムーズに合格するためのコツをまとめました。

■生命保険講座はどんな試験?

<生命保険講座とは>

生命保険募集人となって生命保険を販売するには、まず、生命保険会社の研修を受けなければなりません。その後、生命保険協会が実施する業界共通の試験を受験します。一番はじめに受ける試験が「生命保険募集人資格 一般過程」で、この試験に合格することで生命保険を販売できるようになります。

そして、一般過程に合格したのちは「専門課程」、その次は「応用課程」と、より上位の試験にチャレンジしていきます。応用課程の次のレベルの試験は「大学課程」となりますが、ほとんどの生命保険会社では大学課程の取得は必須とはされていません。一方、応用課程までは、多くの生命保険会社で取得が推奨されています。

「生命保険講座」は大学課程のさらに上位であり、生命保険協会が主催する最難関の業界共通試験です。この試験を受験する人は、生命保険会社の総合職が大半を占めています。営業職の場合、応用課程または大学課程までの受験が一般的で、生命保険講座の受験を求められることはありません。

生命保険講座は、生命保険会社で働く職員の知識向上を目的とする試験です。そのため、合格できなかったとしても、業務に支障が出ることはありません。ただし、不合格になると人事査定に影響する可能性も考えられます。総合職なら、気合を入れて合格したい試験といえるでしょう。

ちなみに、他の業界共通試験と同様、たとえ合格しても退職すると無効になってしまいます。

試験の内容については後ほど詳しく解説しますが、ひねくれた問題は出題されず、テキストや過去問題が頭に入っていれば、クリアできる試験のようです。ただし、難易度は大学課程から各段に上がりますので、しっかりと勉強する必要があります。

<生命保険講座の優秀賞>

生命保険講座の試験で優秀な成績を収めた人には、「優秀賞」が与えられます。生命保険講座の科目数は8科目ありますが、優秀賞を取るには「全8科目それぞれに合格し、かつ合計点が720点以上」という条件を満たす必要があります。

優秀賞を獲得すると、生命保険協会から賞状がもらえ、人事査定にもプラスに働くようです。 優秀賞を狙うならそれなりの勉強時間を確保しなければなりませんが、優秀賞を取る人は多くありませんので、社内向けのアピールとして活用できるでしょう。

■生命保険講座の受験概要

次に、生命保険講座の試験について、科目や合格ライン、試験日、試験方法などを解説します。

<試験科目>

生命保険講座の試験は、下記の8科目で構成されています。

・生命保険総論
・生命保険計理
・危険選択
・約款と法律
・生命保険会計
・生命保険と営業
・生命保険と税法
・資産運用

試験内容は、生命保険講座以前の試験に比べて専門性が高くなります。また、8科目全てに合格しなければなりません。

<合格ライン>

試験の合格ラインは、所属している生命保険会社でそれぞれ定められていますが、60~70点で合格としているところが多いようです。受験者が限定されていることで合格率は比較的高いですが、科目数が多く、ある程度の労力がかかる覚悟は必要でしょう。

なお、先述の通り、8科目全てに合格し、合計で720点以上取ると優秀賞が授与されます。

<試験日>

生命保険講座の試験は、8~9月、10~11月、12~1月、2~3月の年4回の時期に、2科目ずつ実施されています。つまり、各科目とも年1回しか受験する機会がないのです。不合格の場合、翌年の試験を待って受験する必要があります。

8科目全てに合格するのは大変なことですが、しっかり準備をして、できれば一度で合格したいものですね。

なお、所属する生命保険会社によっては、受験時期や年間の受験可能回数が異なるケースがあります。試験のスケジュールは、事前によく確認しておきましょう。

<試験方法>

2020年より、生命保険業界共通試験は、「紙の試験」から「CBT(Computer Based Testing)」へ変更となりました。CBTとは、全国に100~150ある指定の会場へ行き、コンピューターを使用して実施する試験方式です。

試験がCBTに移行されたことにより、各試験開催期間中の希望する日(土日祝および年末年始休暇を除く)・時間帯に受験ができるようになりました(開催都市・会場により受験可能日・時間帯は異なる)。

ただ、各科目において、受験のチャンスは年1回であることに変わりはありません。

試験時間は、1科目あたり80分です。なお、指定された集合時間までに来場できなかった場合は欠席扱いとなり、受験ができません。この場合、受験料は返金されず、他の試験への振替もできませんので注意しましょう。

<試験当日の流れ>

試験当日の流れも確認しておきましょう。試験会場に来場し、受付が開始したら受付で本人確認を行います。次に、本人確認書類以外の全ての持ち物をロッカーにしまいます。受験票、問題集、電卓、携帯電話、腕時計等も全て試験室へは持ち込めませんので、気を付けましょう。

試験前には「番号札ケース」が試験監督員より手渡されます。試験室へは、本人確認書類、ロッカーキー、番号札ケースのみ持ち込み可能です。試験室に入ると、机上に「ノートボード」とペンがセットされていますので、試験中はノートボードをメモ代わりに使用しましょう。

■生命保険講座に合格するには

最後に、生命保険講座に合格するコツをまとめました。できるだけ短期間で、そして一度で合格するには、戦略を立てて効率的に勉強することが欠かせません。試験の出題形式を分析し、どのように勉強すべきか解説しましたので、ぜひ参考にしてください。

<試験の出題形式>

まず、試験の出題形式を見てみましょう。問題は全50問で、5つのパートに区分されています。それぞれの出題形式、配点は以下の通りです(各科目共通)。

問題1~20:穴埋め問題。語群の中から適切なものを選択(20点:1点×20問)
問題21~25:3肢問題。正しいものを選択(20点:4点×5問)
問題26~30:3肢問題。間違っているものを選択(20点:4点×5問)
問題31~40:正誤問題。正または誤を選択(10点:1点×10問)
問題41~50:5肢問題。正誤と語句の適切な組み合わせを選択(30点:3点×10問)

5つのパートを見てみると、問題21~25、26~30、41~50は1問あたりの配点が大きく、この3つのパートだけで合格ラインの70点に達することがわかります。つまり、この3つのパートでできるだけ点を稼げるよう力を入れて勉強することが、合格への近道になるのです。

特に、問題21~25、26~30は1問当たり4点と、配点が最も大きくなっています。それぞれ、正しいもの、間違っているものを選択する問題ですので、1問も落とさないつもりで勉強できるといいでしょう。

一方、問題41~50は正誤と語句の適切な組み合わせを選択する問題となっており、問題21~25、26~30と比べて複雑で、難易度は上がります。ただ、配点が高いため多く正解できれば安心です。

ここで、合格ラインが70点の場合、各パートでどのくらい正解すれば合格となるのかシミュレーションしてみましょう。たとえば、1問あたりの配点が高い問題21~25、26~30でそれぞれ1問ずつ不正解、問題41~50で3問不正解したとします。ここまでの合計点は、「4点×8問+3点×7問=53点」です。

そして、1問あたりの配点が低い問題1~20、31~40ではそれぞれ6割正解できたとすると、「1点×12問+1点×6問=18点」となります。全て合計すると、「53点+18点=71点」で、合格点の70点を超えることができます。

このように考えると、しっかり対策を立てて勉強しておけば、ある程度の不正解があっても合格に達することがわかり、安心できるのではないでしょうか。

ただ、優秀賞を狙う場合は、配点の高い設問で複数間違えてしまうことは許されません。問題21~25、26~30のうち1問ミス、問題41~50で1問ミス、問題1~20、31~40のうち3問ミスに抑えても、90点です。

優秀賞を取りたいなら、特に高配点の問題でほとんどミスができないことを念頭に、勉強に励む必要があります。

<合格のための勉強方法>

では、合格ラインに達するためには、日々の勉強はどのように進めればいいのでしょうか。生命保険講座の勉強は、会社から支給されるテキスト、問題集が基本となります。

ただ、テキストはこれまでの業界共通試験のものと比べて厚さが増し、内容も難解になっています。科目ごとにボリュームは多少違いますが、これらを全てしっかり読み込むとなると、勉強する前に嫌気がさしてしまい、むしろ逆効果になるかもしれません。

そこで、テキストは読み流す程度にし、問題集を繰り返し解答することに注力しましょう。なぜなら、試験の出題傾向は、毎回ほぼ変わらないからです。そのため、テキストを読み込むよりも、過去問題を反復し、頻出問題を把握する方が効率的なのです。

過去問題を解く際は、試験時間と同じ80分を計測しながら解答し、また、答え合わせでは、間違った箇所を一つ一つ丁寧に確認しましょう。

試験は、過去問題と同じ箇所が出題されることもあります。過去3年分は繰り返し解き、問題のフレーズを覚えるくらいやり込むと力がつくでしょう。

■過去問題を繰り返し、準備万端で臨もう

今回は、生命保険講座について解説しました。働きながら何度も試験を受けるのは、大変なもの。できれば1回で合格できるよう、気合を入れて取り組みたいですね。

生命保険講座は決して簡単ではありませんが、試験の出題形式を理解し、戦略を立てて効率的に勉強すれば、合格できる試験です。過去問題を繰り返し解き、準備万端で試験に臨みましょう。