東京商工リサーチは10月5日、第13回「地ビールメーカー動向」調査の結果を発表した。調査は9月1日~29日、全国の主な地ビールメーカー239社を対象にアンケート調査を実施し、結果を分析した。

  • 地ビールメーカー出荷量

    地ビールメーカー出荷量

出荷量が判明した主な地ビールメーカー66社の2022年1-8月の総出荷量は7,814.8klと、前年同期比を20.1%上回った。

出荷量が最も多かったメーカーは、地ビール醸造の全国第1号「エチゴビール」(新潟県)が11年連続の圧倒的な強みをみせた。出荷量はダントツの2,302kℓ(前年同期比9.0%増)。2位は「伊勢角屋麦酒」の「二軒茶屋餅角屋本店」(三重県)の656kℓ(同156.3%増)、3位は「べアレン・クラッシック」の「ベアレン醸造所」(岩手県)の532kℓ(同6.8%増)、4位は「網走ビール」の「網走ビール」(北海道)で482kℓ(同35.4%増)、5位は「オラホビール」の「信州東御市振興公社」が294.5kℓ(同2.3%減)で続き、1-8月の出荷量が100kℓを超えた地ビールメーカーは18社で、前年より3社増えた。

アンケート回答が得られた71社のうち、出荷量が「増加」したのは69社(構成比97.1%)。「減少」および「横ばい」は2社(同2.8%)だった。出荷量増加の要因は、「スーパー、コンビニ、酒店向けが好調」が34社、イベントへの参加や観光需要回復など「その他」が25社、「飲食店、レストラン向けが堅調」が24社と、コロナ禍での需要開拓が実ったよう。

売上比率の一番大きい販売先(有効回答70社)をみると、「スーパー、コンビニ、酒店」(31社・構成比43.7%)が最も多く、次いで「自社販売(イベント販売含む)」(19社・同26.8%)。

また、2022年の商流の変化についても、「スーパー、コンビニ、酒店向けの販路を拡大した」「スーパー、コンビニ、酒店向けの売上が伸びた」がともに26社で最多となり、スーパー、コンビニ、酒店向け販売が急回復へ。さらに、「インターネット通販の売上が伸びた」(19社)や「インターネット通販の販路を拡大した」(11社)も多かった。

  • 今後の事業展開

    今後の事業展開

今後の事業展開(有効回答71社)については、「自社地元」の販売に力を入れるが49社(構成比68.1%)と約7割を占め、次いで「東京都市部」への進出に意欲をみせるメーカーも13社(同18.1%)あった。

また、大手4大メーカーが地ビール、クラフトビールの製造販売に乗り出す動きも本格化しているなか、4大メーカーとの差別化を図るため、中小の地ビールメーカー46社(6割以上)は「独自の味」に注力する。一方で、「大手を意識せず従来通りの営業を進める」と独自の道を究めるメーカーも27社見受けられ、大手メーカー参入が市場掘り起こしにつながると前向きに受けとめ、独自路線に意欲をみせる地ビールメーカーは多い。大手メーカー参入を契機に、市場の健全な共存共栄を目指す中小メーカーが増えている。

  • 商品価格と新型コロナウイルス感染拡大による今後の懸念

    商品価格と新型コロナウイルス感染拡大による今後の懸念

商品価格について聞くと、「まだ実施していないが今年中に値上げを予定」が26社(構成比36.1%)、「この1年で値上げを行った」が18社(同25.0%)と、6割超のメーカーが値上げを予定、もしくは値上げ実施済み。一方、「値上げはしたいができない」「値上げの予定はない」は各14社(同19.4%)だった。

コロナ禍での今後の懸念は、「原材料の高騰(燃料代含む)」(65社)がダントツのトップに。次いで「為替(円安)」(32社)、「物価上昇による更なる消費の減退」(30社)、「イベントの減少や外出機会が元に戻らない」(29社)と続いた。