作品世界に自然に溶け込み、佇むだけで語れる女優・松本穂香が、ジャパニーズホラーの第一人者であり、近年も『事故物件 恐い間取り』をヒットさせた中田秀夫監督の最新作『“それ”がいる森』に出演。主演を務める相葉雅紀の息子が通う小学校の北見先生を演じ、目を見開き、叫ぶ、新たな姿を見せている。

ホラーはもともと好きだという松本が、小さな町に現れ、人々を恐怖に陥れる正体不明の本作の“それ”を完成作で観た感想や、子どもたちを守る役にちなみ、松本自身が周囲に守られている、支えられていると感じた出来事などを語った。また「思っていた以上に、本当に優しい方だった」という相葉のジェントルマンぶりが垣間見られるエピソードも聞いた。

松本穂香 撮影:望月ふみ

松本穂香 撮影:望月ふみ

■相葉雅紀が自然に取った行動に「なんて優しい方なんだとビックリ」

――中田監督のホラー作品に初出演です。決まったときは?

ビックリしましたが、ホラーが好きなので、中田監督の作品ということでとても嬉しかったです。中田監督は現場ですごく優しくて、みんなに気を使う方でした。年齢やキャリアなど関係なく平等に接してくださって、子どもたちにも、私や、ベテランの役者さんたちにつける演出の仕方と変わらずに丁寧に演出されるんです。素敵な監督さんだなと思いました。

――ホラー特有の演出などはありましたか?

「目を見開いて」といった演出が、純粋に面白かったです。普段はあまり言われるワードではないので。ほかにも「もっと息を多めに」とか。面白かったですし、ハァハァしていると、自ずと自分もドキドキしてきたり、ちょっと大きめのお芝居がちょうどいいというのが新鮮でした。

――小学校の先生役でした。松本さん自身は向いていると思いますか?

向いてないです(苦笑)。子供たちの今後の人生の基盤となるすごく大事な時期に預かれるほどの力を持っていないです。私は自分ひとりをコントロールするのも精一杯なのに、先生って本当にすごいなぁと思います。教科にしても、小学校の先生って全部を教えないといけないですから大変ですよね。あえて選んで教えられるとしたら国語ですかね。

――初共演となった相葉さんが、松本さんは「物怖じしない」とコメントされていました。

そんなことないんですけどね(苦笑)。でもありがたいです。そんな風に言っていただいて。相葉さんとは、これまでにバラエティ番組に一度ゲストで出させていただいてご挨拶した程度でした。今回は、撮影の合間の時間に結構お話させていただきました。

――どんな印象の方でしたか?

いい意味で思っていた印象と変わりませんでした。でも、想像以上に優しい方なんだなと思いました。たとえば、学校の外の廊下で話しているシーンがあって、寒かったので一旦室内に戻ることになったときに、相葉さんが先に中に入って、私のスリッパを手前に「ハイ」と出してくださったんです! 「寒いでしょ。早く早く」という感じで自然にスッと。なんて優しい方なんだとビックリしました。

相葉さんの息子役で事務所の後輩でもある(上原)剣心くんへの接し方も素敵でした。寄りの撮影などで、剣心くんが回数を繰り返すこともあったのですが、相葉さんは現場で優しく肩を寄せていました。練習で回数がかさんだりすると、そのたびに私に「ごめんね、ありがとうね」と相葉さんが言ってくださるんです。「あー、お父さんだな」と感じましたし、本当に優しい方だと思いました。

40代くらいになった自分は、想像できなさすぎて楽しみ

――北見先生は子どもたちを守ってくれる存在ですが、松本さんが、お仕事をしている中で、人に助けてもらった経験を教えてください。

ちょっと疲れたなと思った時期に、以前お仕事させていただいた監督から「松本は大丈夫だよ」とご連絡をいただいたんです。特に私のほうから何か相談したわけではなく、「最近どう?」みたいなご連絡で、「今も新しい作品をやっています」といった話をしていただけなのですが、そのときに「松本は大丈夫」と言っていただいて楽になりましたし、私はいろんな人に支えられているんだなと実感しました。

――ここ最近で、周りの方からかけてもらって嬉しかった言葉はありますか?

昔お世話になった監督さんが、撮影中の現場に遊びに来てくれて「大人っぽくなったね。立派になったね」と言ってもらったことでしょうか。当時の自分のことを思い出しましたし、すべて繋がっているんだなと感じられました。この先も繋いでいって再会できたらと思いますし、周囲からの支えは常々感じています。

――先輩たちの姿からは何を感じることが多いですか?

自分をすごく律している姿を見て、「すごいな、自分も頑張ろう」というのは毎回思いますね。どれだけベテランの方でも、緊張されていたり、反省していたりするんです。そうした姿を見ると刺激を受けて、「自分もしっかりしなきゃ!」と思います。

――現在25歳ですが、40代くらいになった自分を想像して楽しみにしていることはありますか?

想像ができなさすぎて楽しみです(笑)。仕事以外にも、家庭を持つといった変化もあるとは思うのですが、あまりに未知すぎて、でも未知だからこそ楽しみです。年齢的にも、プライベートも広がっていくんじゃないかなとは思っています。

――ありがとうございます。改めて出来上がった本編ですが、“それ”がかなりの衝撃です。

そうですね。私も衝撃でした。現場でも何となくは分かっていたのですが、どんな動きになるのかは分からなかったので、完成した映画を観て衝撃でちょっと声が出そうになりました(笑)。学校の中から、近づいてくる“それ”を見るところがあるんですけど、その近づき方が特に気持ち悪くて面白かったです。

――最後に、本作が気になっている人にメッセージをお願いします。

今回、ホラー作品に出演してみて、ホラーはあまり観ないという方が思っている以上に多いと感じています。「相葉さんは好きだけどホラーは苦手だから」といった人も多いかもしれませんが、そうした方でも絶対に楽しめる映画になっていると思います。ちっちゃい子を連れて行っても楽しい映画です。年代を問わずに観ていただけたら嬉しいです。野間口徹さんとか、周囲のキャストも素敵な方ばかりです。ぜひ楽しんでください。

■松本穂香
1997年2月5日生まれ、大阪府出身。2015年に『風に立つライオン』で長編映画デビューを飾った。2017年前期の連続テレビ小説『ひよっこ』で脚光を浴び、2018年には『この世界の片隅に』で連続ドラマ初主演を果たす。映画初主演となった『おいしい家族』から『わたしは光をにぎっている』『酔うと化け物になる父がつらい』『君が世界のはじまり』『みをつくし料理帖』と立て続けに主演映画が公開された。今年は映画『今夜、世界からこの恋が消えても』、Netflix『桜のような僕の恋人』に出演しており、来年は主演映画『恋のいばら』の公開も控えている。