映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』(9月23日公開)で主演を務めた香取慎吾と、同僚役を演じた井之脇海、余貴美子にインタビュー。共演の感想や現場でのエピソードを語ってもらう中で、それぞれの魅力や、ユーモアを交えて現場を牽引する香取の座長としての姿が見えてきた。

  • 左から余貴美子、香取慎吾、井之脇海 撮影:蔦野裕

市井昌秀監督が脚本も手掛けた本作は、表向きは仲良し夫婦という田村裕次郎(香取慎吾)と日和(岸井ゆきの)のゆずらないバトルをコミカルに描いたブラックコメディ。裕次郎は、平凡で情けないダメな夫。そんな夫にイライラする日和は、SNSの「旦那デスノート」に愚痴をぶちまけるように。そしてある日、裕次郎もその存在を知ってしまい、引くに引けない夫婦ゲンカに発展していく。

井之脇と余が演じたのは、ホームセンターで働く裕次郎の同僚。井之脇は、やがて結婚の恐ろしさを知ることになる後輩・若槻広人、余は、裕次郎と日和のケンカのキーパーソンとなっていく蓑山を演じた。

――まず、ご自身の役を演じる際に意識したことを教えてください。

香取:裕次郎は、空回りしているとか、先が見えていないとか、マイナスな言葉が似合う男で、僕と全然違って(笑)、あまり好きになれない男ですが、初めてこういう役を演じたので新鮮で面白かったです。基本、力を抜いて、袖とかめくれていたら直しそうになるけど、コイツはこんなんでいいんだという感じで演じていました。

井之脇:若槻は、先輩の裕次郎にタメ口をきいたり、ちょっと生意気だけど先輩からかわいがられるところがあって、僕はタメ口をうまい距離感で使えないので、どうやったらみんなからかわいがられるようなキャラクターになるのか考えながら演じました。「〇〇っすよ」みたいなところから始めてちょっとずつ関係性ができていったのかなと思います。

:蓑山さんは「何があっても田村くんの味方よ」というセリフがあるのですが、仲間を大切にするとか、責任を持つことをすごく大切にしている女性で、同僚を大切にする人間だと思いながら演じました。

――香取さんと井之脇さん、井之脇さんと余さんは初共演。香取さんと余さんは、TBS系ドラマ『いちばん大切なひと』(1997)以来の共演のようですが、合っていますでしょうか?

香取:そうだと思います。

:25年も前ですか? 記憶がおぼろげですが、もう当時からスターでしたから、顔も見られませんでした(笑)

香取:僕もあまり覚えていませんが、今と変わらず優しかったことは覚えています!

――香取さんは今回、余さんと共演していかがでしたか?

香取:僕はこれまでヒーローや熱い心を持った役が多かったのですが、今回はそういう役ではなく、周りの人に支えてもらわないといけない役で、余さんがいなかったら本当にダメな感じで終わっていたと思います。蓑山さんは「味方よ」と言いながらも、「は?」と思っているところもあるのですが、いろいろ助言をくれたり、役としても香取慎吾としても支えてもらいました。共演できることもうれしかったです。

――井之脇さんとの共演の感想もお願いします。

香取:初共演でしたが、結婚式のスピーチのシーンが終わったときに、「すごく響きました」って言いに来てくれて、「なんていい青年だ!」と思いました。褒められたら伸びるほうなので、「よかった! 今日いいぞ!」と思ってうれしかったです(笑)

井之脇:ありがとうございます(笑)。本当に響きました。

香取:あと、セリフの発し方を組み立てる頭の中の感じがちょっと僕と似ているのかなと思って、ご一緒できて気持ちよかったです。

――セリフの発し方を組み立てる頭の中の感じが似ているというのを、もう少し具体的に教えていただけますか?

香取:考えていないようで考えている、すらーっとセリフを話しているけれど自分の中ではああでもないこうでもないと考えているみたいな。僕はうまくいかなかったことも、うまくいったこともあまり言いたくないタイプで、井之脇くんもそうなのかなと感じました。しれっとしているけど、今の気になっているんだろうなと感じるときがあって。

井之脇:そうなんです。僕は事前にめちゃめちゃ考えて、現場では忘れてというか、削ぎ落として行くのですが、事前に考えている分、自分がアウトプットしたときに誤差があると気になることがあります。それが面白いときもありますが。でも、決定権は監督にあって、監督がいいといったらそれがいいですし、あまり言わないようにしています。