かつての人気番組の復活というのも、今改編のトピック。TBSは不適切な演出が問題となって19年8月に終了した深夜番組『クレイジージャーニー』を、ゴールデンタイム(月曜21時)で復活させる。編成部企画総括の福田健太郎氏は「レギュラーでこの番組を運営していく体制が整ったということと、視聴者から復活のご要望が大きかったことがございます」と説明し、「(不適切演出の)再発防止策としては、番組のスタッフを一新し、面白いこの番組のDNAを残しつつ、一新して頑張っていきたいと思います」とした。

不祥事で終了した番組が復活するというのは異例のこと。新生『クレイジージャーニー』が軌道に乗ることによって、“罪を憎んで企画を憎まず”の精神が業界全体に広がり、魅力的な内容でありながら残念な形で打ち切られてしまった番組を復活させるという動きが出てくることを願わずにはいられない。

日テレは、昨年9月に終了した『アナザースカイ』が、1年ぶりにレギュラー復活。原司チーフプロデューサーは「昨年終了したときには、非常に惜しむ声がありました。よく“惜しむ声”ってあるですけど、この番組の場合は本当に多くて、新入社員からも『アナザースカイって復活しないんですかね』という話をよく聞きました。(MCの)今田(耕司)さんのコメントでもあったように、非常に珍しいレアケースで1年ぶりの復活という形になります。僕ら制作陣も、『そんなことあるんだ!』という驚きを持って今、初回の準備に取りかかっています」と意気込みを語る。

『アナザースカイ』の復活には、世界的なコロナ規制の緩和も背景にあるといい、『クレイジージャーニー』においても、「『世界ふしぎ発見!』『さまぁ~リゾート』などでも海外ロケを少しずつ再開をし始めて、海外でも取材しやすい状況になってきておりますので、このタイミングでお届けするにはベストなのかなと思っております」(福田総括)と言及している。局を問わず、コロナ禍の影響で惜しまれつつ終了してしまった旅番組、ロケ番組の今後の復活にも期待したいところだ。

■次世代クリエイター育成強化、深夜帯の位置づけ変化も

4月改編では、深夜ゾーンを中心にクリエイター育成やコンテンツ開発を目的とした枠を増強する動きが目立ったが、今改編ではそれが加速している。

最も大胆に編成したのがフジ。『ここにタイトルを入力』など話題になるバラエティを発信する『月曜PLUS!』(4月スタート)に加え、ドラマ枠の『火曜ACTION!』、『水曜NEXT!』を移動したネクストクリエイター育成の『火曜NEXT!』、次のGP帯を狙うバラエティ枠『水曜RISE!』を配置した。中村百合子編成部長は「ここから次の時代を担うヒット番組、次代をつくるヒットクリエイターを続々と誕生させていきたいと思っております。この枠にラインナップされるのは、制作者の魂の入った新しくて刺激的なコンテンツであります。視聴者の皆さまにフジテレビの番組で心躍るゾクゾクするようなテレビ体験をしていただきたいので、会社一丸となって頑張っていきたいと思っております」と狙いを語る。

テレ東は、24時台の企画開発枠としては約3年ぶりとなる『ドラスティックマンデー(仮)』を月曜深夜に新設。2週ずつ“テレ東っぽい”攻めた企画を試しながら、将来のヒットコンテンツの発掘と若手クリエイターの育成を目指し、この春話題となった『テレビ東京若手映像グランプリ』の参加者なども積極的に制作していくという。編成部の柴幸伸氏は「現在ゴールデン帯で放送中の『YOU は何しに日本へ?』も『家、ついて行ってイイですか?』も『充電させてもらえませんか?』も、初めは深夜のトライ枠からスタートしました。それらに続く新たなヒットコンテンツを生み出すため、久しぶりに深夜帯にレギュラーのトライ枠を新設。『ドラスティック』という枠タイトルが示す通り、多少荒削りな企画でも“思い切った”編成を続け、将来ゴールデン帯でヒットする番組の種を見つけたいと思います」と鼻息が荒い。

日テレは、金曜24時30分の企画開発枠『ネクプラ』を『フルスイング』にタイトル変更。『ネクプラ』は“ネクストプライム”の略で、今後プライム帯で勝負できる番組開発というコンセプトだったが、「次世代クリエイター、新しいコンテンツを育てていきたいという意味で、思い切ってバッドを振ってもらおうと。新たなチャレンジをして、まだ見ぬ新しい価値を持てる番組を開発しようという意味で、この枠を『フルスイング』にタイトル変更して改編させていただきました」(木戸部長)としている。

コロナ禍でライフスタイルが変化する中で、若年層が深夜にテレビを見なくなっている傾向があるが、その要因には、動画配信サービスに時間を奪われただけでなく、就寝時間が早くなっているという事象もあるようだ。ビデオリサーチが8月に公表した調査では、男性13~19歳の23時の睡眠率が、19年6月に44%だったのが、22年6月は54%と、この3年で10ポイントも増加している。

こうした変化を受けて、今年4月に深夜からプライム帯に進出したと言われるのが、短尺の街頭インタビューが次から次に流れる構成が、YouTube世代と親和性が高い『月曜から夜ふかし』。このように、「深夜帯=若者」という常識が崩れつつある中で、深夜というフィールドが、また新たな位置づけになってきているようだ。

■ウエンツ瑛士、一気にレギュラー3本増

この改編で、ウエンツ瑛士が、TBS『~通しか知らない究極の1日~ 熱狂! 1/365のマニアさん』(金曜20時)、テレ東『日経スペシャル 60秒で学べるNews』(水曜21時)、テレ朝『朝メシまで。』(土曜24時半)と、レギュラー番組3本増となる。

テレ朝の奥川部長は「私もウエンツさんとの仕事は非常に長いんですけど、やっぱりウエンツさんの持ってるコメント力、回しの能力、それに加えてアイドル出身ということでスター性も含めて、唯一無二の存在だと考えております。そういう意味で、今回のMCにもお願いしました」と話している。