民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)の10月改編情報が9日、出そろった。視聴率の下降トレンドが続きながらも小幅な改編にとどめ、配信戦略により注力する動きや、一度終了した番組のレギュラー復活、そして前回の改編から続くクリエイター育成・コンテンツ開発のトライアル枠強化といった傾向が見えてきた。各局の改編説明会から、この10月編成の動向をまとめた。
■前回改編を根付かせ、既存番組をブラッシュアップ
今年4月から、特にGP帯(ゴールデン・プライム帯)のPUT(=総個人視聴率)が急降下している。4月クール(4月4日~7月3日)はG帯(19~22時)32.4%、P帯(19~23時)30.4%で、前年同期比の下げ幅はG帯3.3ポイント、P帯3.1ポイント。同クールのテレビ東京の実績が、G帯3.2%、P帯2.8%なので、インパクトの大きさが分かるだろう。
ある局の関係者は「今や全番組が改編対象」とも言っていたが、フタを開けると低改編率の局もいくつかあった。G帯改編率で見ると、日テレ1.4%、テレ朝26.2%、TBS23.1%、テレ東20.5%、フジ4.3%といった具合で、フジは開局以来初のGP帯バラエティ無改編となっている。
もちろん、改編率が低くても無策というわけではない。日テレの木戸弘士編成部長は「月曜日の21時(『しゃべくり007』)・22時(『月曜から夜ふかし』)、水曜日の21時(『上田と女が吠える夜』)ですとか、4月に取り組んだ改編を、さらに10月以降も深く根付かせていく」と説明。同局は、9月から『1億3000万人のSHOWチャンネル』(土曜21時)を刷新しており、既存番組のブラッシュアップが行われている。
フジの立松嗣章編成制作局長は「4月に週末強化で大きな改編を行いまして、日曜日はある程度いい結果も出始めています。この10月改編は小規模になりましたが、それぞれのレギュラー番組が内容を強化して、進化させていくタイミングだと捉え、判断しました。それぞれの番組に、まだ伸びしろがあると考えているので、より一層思い切ったチャレンジをして、個性を出していってほしいと考えています」と語る。同局でも、4月末から『VS魂』(木曜19時)が『VS魂 グラデーション』となり、7月には『今夜はナゾトレ』(火曜19時)をリニューアルさせている。
■TVer中心に配信コンテンツに活路
PUT低下の大きな要因の1つとして、若年層を中心に動画配信サービスのコンテンツ視聴が進んでいるというライフスタイルの変化が挙げられるが、今後PUTが劇的に回復するという見通しがない中で、活路を見出そうとしているのが、視聴者を奪われた配信というステージでの反転攻勢だ。
TBSの渡邉真二郎編成部長は「TVerのリアルタイム配信のデータを見ますと、これまで放送波だけではリーチできなかった若い層にリーチできているというデータも出ておりますので、そういう総合的な施策でPUT全体、あるいは我々の作るコンテンツをご覧いただける環境を頑張って作っていきたいと思っています」とコメント。
フジの立松局長は「我々が制作しているコンテンツを見てもらっていないということではなくて、TVerは番組によって非常に高く配信数が回っております。上昇気流に乗っているというのもあるので、我々としてはとにかく面白いコンテンツを作れば、出口はどこであれ視聴者に見ていただくということで、今後も積極的にやっていきたい」と意欲を示した。
日テレは、かつての“地上波編成ファースト”という考え方から、“コンテンツファースト”を改めて位置づける狙いで、6月に「編成局」を「コンテンツ戦略局」に改組。今後の改編で、配信をはじめ、映画、舞台なども含めた様々な形でコンテンツ価値の最大化を図るタイムテーブルをより推進していく方針だ。
テレ朝は4月改編で、月~水曜深夜に「スーパーバラバラ大作戦」として、30分枠の番組を9本そろえたが、ここまでの実績として、奥川晃弘総合編成部長は「枠も増えましたので、(TVerの再生数に)間違いなく貢献しています」と手応え。さらに、「地上波以外の展開についても概ね好調に推移しておりまして、これからも地上波の放送だけにとらわれることなく、様々なことにチャレンジしていきたいと思っております」と語った。