バイク未来総研(運営:Bike Life Lab supported by バイク王)はこのほど、中古バイクの価格高騰について独自考察を交えたレポートを公開した。

  • 「注目6車種の過去3年間の中古オークション相場から見る需要の変化」を考察

2020年から続く新型コロナウイルスの蔓延と、それに伴うバイク部品や半導体不足・物流の混乱・生産遅延などが断続的に発生しているにも関わらず、国内の新車出荷台数は上昇の傾向を見せるバイク業界。

同社では中古バイクにまつわるデータや社会情勢から読み解き、今後の中古バイク価格動向について全3回に分けて発信している。第1回目は過去10年間のオークション相場から見る中古バイク価格について考察。第2回目となる今回は、「注目6車種の過去3年間の中古オークション相場から見る需要の変化」を明らかにしていく。

【調査車種】

コミューター代表 ホンダ・PCX
人気爆発小型レジャーバイク ホンダ・CT125ハンターカブ
初心者や女性にも大人気 ホンダ・レブル250
令和に復活したクォーターマルチ カワサキ・Ninja ZX-25R
永遠のスタンダードネイキッド ホンダ・CB400 SUPER FOUR
ネオレトロブームをけん引 カワサキ・Z900RS

■注目6車種の新車価格と中古オークション状況は?

今回は長年多くの人々に愛され、それぞれ特徴をもったバイクに焦点を当てて考察。下図は6車種を新車価格と年ごとの中古オークションで集計し、推移を表したものとなる。

  • 注目6車種の新車価格と中古オークション価格の推移

算定基準は以下の通り。

・国内主要4メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)が国内で販売しているバイク(2022年5月現在・逆輸入車を除く)
・新車販売価格は2022年4月現在の価格を基準
・カラー等により価格が複数ある場合は、最安値を基準に算定
・モデルチェンジが実施された場合は、最新モデルのみを対象とする
・期間内に、バイク未来総研独自の規定台数に達する流通があるバイクを対象とする

■コミューター代表 ホンダ「PCX」

  • ホンダ「PCX」

スクーターは通学や通勤と生活面での需要が高いため、新型が出たら前回モデルの価格は下がる傾向にある。にもかかわらず「PCX」は、新型が登場しても前回モデルの価格が上がっているバイクとなっている。

前回モデルの「PCX」は、新型「PCX」が2021年3月頃に中古市場にでてきたタイミングで一時的に価格が下がったものの、同年9月頃から上昇に転じている。

新型「PCX」もほぼ新車価格に近い価格で取引されていることから、新車の納車遅延が現行モデルのみならず、旧モデルの価格にまで影響を与えている様子が見て取れる。

■人気爆発小型レジャーバイク ・ホンダ「CT125ハンターカブ」

  • ホンダ「CT125ハンターカブ」

「CT125ハンターカブ」が発売されたのは2020年6月頃。2020年4月は緊急事態宣言が発令された。発売当時はコロナ禍によるアウトドアブームやバイク志向の高まりなどもあり、その当時から新車価格を上回る価格で取引されている。

2022年7月にホンダは現行モデルの一部機種について注文が生産計画に達した場合、受注を一時停止する旨を発表しており、受注一時停止機種の中には「CT125ハンターカブ」も含まれる。

人気が高く入手困難なバイクが受注一時停止になるということは、今後の需要=価格がさらに高まる要因になるのではと予想する。

■初心者や女性にも大人気 ホンダ「レブル250」

  • ホンダ「レブル250」

近年の軽二輪で人気がある「レブル250」は2020年12月頃から価格が上昇し、2021年6月頃には新車価格を超える時期もあった。今では新車価格を下回り落ち着いてきているところを鑑みると、新車の需要と供給のバランスが取れている。

現在は落ち着ている価格も、前述した受注一時停止機種には「レブル250」も含まれるため、受注停止後の需要動向によっては再度価格が上昇する可能性もある。

■令和に復活したクォーターマルチ・カワサキ「Ninja ZX-25R」

  • カワサキ「Ninja ZX-25R」

発売発表時からエンジンや仕様が話題を呼んだバイク。人気の高さと「CT125ハンターカブ」と同様にコロナ禍に販売したため入手困難の要因が重なり、発売から数カ月後には新車価格を超えるプレミアム価格がついた時期もある。

2021年5月頃から価格は下がり始め、2022年1月頃には新車価格を下回り通常の相場まで落ち着いた。「レブル250」と同様に需要と供給のバランスがとれているため、急激な価格変動の可能性は低いものと予想する。

■永遠のスタンダードネイキッド ・ホンダ「CB400 SUPER FOUR」

  • ホンダ「CB400 SUPER FOUR」

「CB400 SUPER FOUR」は、ネイキッドブームが盛り上がりつつあった頃に販売され、エントリーライダーからベテランライダーまで年代や経験を問わず、多くのユーザーに支持されている。

新車が手に入りにくいため、すぐに購入できる中古の人気が高まり、2021年5月頃から価格が上昇、同年10月には新車価格を上回った。

さらに、2022年4月にはホンダが「同年10月生産分をもって生産終了とさせていただきます」と発表。ロングセラーの人気車種であることに加えて、生産終了により絶版車になるということにより、年式の古さや状態で価格が下がるものがあるものの、新車に近い状態のものはすでに大きく値上がりし、新車価格を超えるプレミアム価格になっている。また「PCX」同様、旧型となるNC39型も価格が上昇傾向だ。

■ネオレトロブームをけん引・カワサキ「Z900RS」

  • カワサキ「Z900RS」

近年の中古市場で需要の高い「Z900RS」は「CB400 SUPER FOUR」と同様、需要が供給を上回ることにより2021年3月から価格が上昇、翌々月には新車価格を上回り何度かプレミアム価格まで上昇した。

2022年に入り新車価格と同水準まで落ち着いてきたが、2022年にカワサキが「昨年より発生しております部品入荷および物流の遅延が長期化していることから、引き続き生産の見通しが不透明な状況となっており、弊社よりカワサキ正規取扱店に対するモーターサイクル納入時期の案内が困難となっているほか、一部のモーターサイクルにつきましては当初予定していた生産台数の確保ができない等の状況が発生しております」と発表していることや、「Z900RS」が多くのライダーから支持されていることを鑑みると、今後も高水準を維持すると予想する。

■バイクメーカーの物流遅延の背景と今後は?

バイクメーカーからの供給が遅延している背景には、要因のひとつとして半導体部品の不足があるが、半導体メーカーはより市場の大きいスマートフォンなどの電子機器向けの供給を優先し、シェアの低い自動車・バイク向けの増産には消極的だとの話も聞こえてくる。

IntelのCEOを務めているPat Gelsinger氏は、半導体不足は2024年まで続くと予想している。

今後、「レブル250」や「Ninja ZX-25R」のように需要と供給のバランスが取れているバイクは通常の相場で推移することが予想されるが、「PCX」「CT125ハンターカブ」など引き続き需要が高いバイクや「CB400 SUPER FOUR」のように絶版車となるバイクは高水準で推移することが見込まれる。

今回の調査結果を受けてバイク未来総研のレポートでは、「中古車の価格が高くなりすぎることはエントリーユーザーが気軽にバイクを購入し、楽しむ機会を阻害する事にもつながりかねず、バイク業界としてもあまり歓迎できることではないのではないでしょうか。少しでも早く今後の新車供給状況が安定し、中古バイクが買いやすい価格になってくることを期待するばかりです」とのコメントを掲載している。