9月25~27日にアメリカで行われた経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」では米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長らが利上げを続行する発言をしました。また、一部報道機関において基本給を上げるベースアップ(ベア)の動きがこの夏相次いでいるという報道がありました。

一見、住宅ローンと関係なさそうに見えるジャクソンホール会議とベアですが、住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFS取締役COOの塩澤崇氏は、それぞれ住宅ローン金利と深い関係があると指摘します。それは一体どういうことか取材しました。

  • 住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFS取締役COOの塩澤崇氏

■米国金利の動きが住宅ローンの固定金利に与える影響

――そもそもジャクソンホール会議とは何ですか?

ジャクソンホール会議とは毎年8月に世界各国の中央銀行総裁や政治家などが集まって金融政策を議論する経済シンポジウムです。この場でFRBから重要な声明が発表されることが多く、注目を集めます。

――どんな声明が出され、それがどう住宅ローン金利に影響を与えそうですか?

FRBのパウエル議長は「インフレ退治をやり遂げるまでは金融引き締め(利上げ)をやり続けなければならない」と発表しました。ですので米国では当面の間、高金利が続きます。

また、日本の長期金利の代表銘柄である10年国債ですが、日本銀行が金利の上限(0.25%)を設定しており、それを超えないように管理しています。そして、その上限値以下であれば市場の動きに委ねており、米国金利の動向との相関が高いです。

ですので、米国の金利が上がれば日本の10年国債の利回りも上がり、結果として固定金利も上がります。米国の高金利維持を受け、固定金利は年内高止まりすると考えられます。ですが、来年は米国のインフレもおさまると考えられ、固定金利は下がると思います。

■賃金が上昇しマイナス金利が解除されれば変動金利は上がっていく

――ベア(基本給アップ)は住宅ローン金利とどうつながっていますか?

賃金上昇は、住宅ローンの変動金利と深く関係しています。

変動金利は短期金利(期間が1年以内の金利)を基準に決められます。この短期金利は日銀がマイナス金利政策でマイナス圏にがっちり抑え込んでいるので低い状態ですが、仮にマイナス金利が解除されると短期金利が上がり、それに連動して変動金利も上がるのです。

日銀はマイナス金利をいつまで続けるのか? ですが、「賃金上昇→物価上昇→売上拡大→賃金上昇……」という経済の好循環が生まれるか次第です。こうなれば、もはや景気を刺激するために金融緩和を続ける必要はないと日銀は判断しますので。要するに、いま日本経済に一番欠けているピースは、賃金なのです。

ですので、賃金が上昇すればマイナス金利が解除されて、変動金利は上がるという訳です。

――この夏のベアは今後どの程度広がるのでしょうか?

今回のベアは、円安による輸出企業の業績拡大が主な要因であると考えています。問題はこれが輸出企業以外に波及するか、そして実質賃金が十分にプラスとなりそれが持続するかです。なお、足元の実質賃金は前年同月比-0.6%とマイナス成長です。

賃金上昇を促す主な要因は「事業成長」「転職」「労働組合」の3点と考えていますが、今の日本はどれも弱い状況です。ですので、円安による輸出業界の業績回復によって賃金が上昇したとしても一時的な動きとなり、持続的な賃金上昇にはまだ遠いと考えています。

■変動金利はいつ上がる?

――いつ頃賃金が本格的に上昇し、変動金利も上がり始めるのでしょうか?

本格的な賃金上昇はバブル世代の退職がきっかけになると考えています。人口の多いバブル世代が退職すると労働力供給が大きく減り、需要超過となります。時期は2030年以降でしょう。そうなると人の引き抜きなど転職マーケットが今以上に活性化し、賃金が上がり始めると思います。

――いま住宅ローンを選ぶとしたら、変動金利と固定金利、どちらをおすすめしますか?

変動金利上昇はまだ10年以上先と考えていますので、私は変動金利を推奨します。住宅ローンは当初10年間で35年間の金利総額の半分を支払います。金利負担が重い時期にわざわざ高金利の固定金利にする必要はないと考えます。

塩澤崇(しおざわ・たかし)/株式会社MFS 取締役COO

2006年に東京大学大学院情報理工学系研究科修了後、モルガン・スタンレー証券株式会社にて住宅ローン証券化ビジネスに参画。モーゲージバンクの設立やマーケティング戦略立案、当局対応を担当。2009年、ボストン・コンサルティング・グループで、メガバンク・証券・生保の国内営業戦略・アジア進出ロードマップ等の経営コンサルティングに従事した後、2015年9月より現職。