東京商工リサーチは8月23日、「賃上げに関するアンケート」調査の結果を発表した。調査は8月1日~9日、資本金1億円以上の大企業、および1億円未満(個人企業等を含む)の中小企業を対象にインターネットで行われ、6,204社の有効回答を得た。

  • 賃上げ動向 年度推移

    賃上げ動向 年度推移

2022年度に賃上げを実施した企業(予定含む)は82.5%で、コロナ禍で落ち込んだ21年度の70.4%から12.1ポイント上昇。コロナ前の官製春闘で、賃上げ実施率が80.9%だった2019年度を上回る水準に戻したことがわかった。規模別では、大企業が88.1%と9割に迫ったが、中小企業は81.5%にとどまり、両者の差は6.6ポイントとなった。

産業別にみると、「実施した」の割合が最も高かったのは「製造業」で87.2%。以下、「卸売業」(84.5%)、「建設業」(83.7%)と続き、最低は「農・林・漁・鉱業」で60.7%だった。一方、規模別では、大企業は「農・林・漁・鉱業」「運輸業」「建設業」「製造業」で実施率が9割を超えたが、中小企業は最高の「製造業」でも86.7%で、全産業が9割を下回る結果に。規模や業種間の格差が広がっており、人手不足が深刻化するなか、今後は中小企業の人材確保に影響を与えることも懸念される。

  • 賃上げの実施内容

    賃上げの実施内容

賃上げを実施した企業に、その内容を聞いたところ、最多は「定期昇給」の81.0%。次いで、「賞与(一時金)の増額」(44.2%)、「ベースアップ」(42.0%)、「新卒者の初任給の増額」(18.2%)と続き、特に「ベースアップ」については、21年度の30.3%を11.7ポイントも上回った。ベースアップの実施企業が4割を超えたのは、2019年度以来3年ぶり。

賃上げ率は、「3%未満」が69.8%に対し、「5%以上10%未満」は7.5%で、中小企業のアップ率が目立った。ただ、「3%未満」は、コロナ禍の業績悪化で賃上げに消極的だった2020年度(57.7%)、2021年度(50.7%)の水準よりもさらに高い。政府は「成長と分配の好循環」を掲げるが、原材料価格や人件費上昇を価格転嫁することが難しいなか、賃金の上昇ペースは鈍化している。