千葉県船橋市とNTT東日本は、地方創生に向けた官民連携のまちづくりと若手職員・社員のキャリア開発を目指し、地域異業種交流会「Fun a bridge」を開催した。参加した、船橋市を中心に拠点をおく12団体の若手職員・社員は、同市の課題にどう向き合ったのだろうか。

  • 「Fun a bridge」に参加したNTT東日本の小峯氏(左)と船橋市役所の近藤氏(右)。中央はふなばしセレクションPRキャラクター目利き番頭 船えもん

官民12団体が集った地域異業種交流会

10年後の船橋市のさらなる発展と成長に向け、業種・職種を超えて次世代を担う人材を創出するべく開催された地域異業種交流会「Fun a bridge」。その目的のひとつ目は、船橋市商工業戦略プラン、Society 5.0やSDGsといった課題を自ら把握し、理解する力を育むこと。ふたつ目は10年後の船橋市の成長に向けたアイデアを出すこと。そして3つ目に地域活性を"我が事化"することだ。

参画したのは、行政から船橋市、船橋市観光協会、船橋商工会議所の3団体、民間からイケア・ジャパン、千葉ジェッツふなばし、東武百貨店、JTB、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、京葉ガス、東京電力パワーグリッド、NTT東日本など9事業者、計12団体となる。

2021年12月8日に行われた初の交流会では、「『日本一元気な船橋』の実現に向けて」というテーマのもと、サスティナブルなまちづくり、人が集まる元気なまちづくり、誰もが暮らしやすいまちづくりを目指したグループワークを実施。全4グループ24名の若手職員・社員が、11月29日の事前オリエンテーションからわずか一週間ほどの間に考え出した斬新な案を披露した。

  • 船橋商工会議所内で行われた「Fun a bridge」当日の様子

若手が注目したのは船橋市北部の活性化

「Fun a bridge」では各グループごとに全員が発表を行ったが、その中から代表してNTT東日本 千葉西支店の小峯健太郎氏、船橋市役所の近藤沙紀氏にその感想を伺ってみたい。

「私は、企業や自治体さんが持つ考えを学べるという点、そして自分の中の視野を広げるという点に魅力を感じて交流会に参加しました。東京都に近い千葉県北西部は、ベッドタウンのイメージが強いエリアです。特に船橋市は、商店街の力の衰退などが課題としてあると日頃から感じていました」(NTT東日本 小峯氏)

  • NTT東日本 千葉西支店 ビジネスイノベーション部 第三バリュークリエイトグループ 小峯健太郎 氏

NTT東日本の小峯氏が参加したグループのテーマは「人が集まる元気なまちづくり」。グループ内では、まず「10年後の船橋をどういう姿にしたいか」からディスカッションが行われた。その結果生まれたのが、北部地域と南部地域をともに活性化させ「ONE FUNABASHI」とするビジョンだ。

「北部と南部には坪単価に大きな差がありました。活性化の進んでいない北部地域を強化するために、官民連携事業としてのホテル事業や、自動運転車両の整備などを提案しました」(NTT東日本 小峯氏)

  • 小峯氏が参加したチームは「ONE FUNABASHI」をテーマにした

「私が参加したのは上司からの推薦です。市役所は営利を目的としない団体ですけれど、今回参加されるのはそうではない方々です。『目的が違う団体さんとどうやって"まち作り"をしていくのか、みなさまの考えをよく聞いて、コネクションを作って』と上司からは言われておりました」(船橋市役所 近藤氏)

  • 船橋市 市長公室 秘書課 近藤沙紀 氏

一方、船橋市役所の近藤氏が参加したグループのテーマは「サステナブルなまちづくり」。一定の人口をキープすれば税金も入ってくるという観点から、ビジョンは『老若男女過ごしやすい街』とした。子どもからお年寄りまで配慮に含めた展開を考える中で、やはり近藤氏のグループも北部と南部の違いに行き着いたという。

「地産地消や教育といった視点から分析を進めたところ、船橋市の将来人口推計では北部と南部で人口増加に大きな差があることがわかったのです。そこで、柏市や流山市のスマートシティも参考に、北部に再生可能エネルギー100%のSDGsの街を作ろうと提案することにしました。各企業の強みを活かし、家具や住宅、スポーツなども街づくりの中に落とし込んでいます」(船橋市役所 近藤氏)

  • 近藤氏が参加したチームはサステナブルの視点からスマートシティを提案

小峯氏のグループは「人が集まる元気なまちづくり」、近藤氏のグループは「サステナブルなまちづくり」と、異なるテーマを取り扱うことになった。結果として両グループの提案は高く評価され、小峯氏、近藤氏はグループ内MVPを授与される活躍を見せた。

「MVPを獲得したことで上長や先輩方からねぎらいの言葉をいただけましたし、支店長や部長などから直接『今後もこれを活かしてがんばれ』と激励の言葉も頂戴しました。非常にうれしかったですね」(NTT東日本 小峯氏)

「市長から『MVPおめでとう』と言われたのがうれしかったですね。都市計画部の部長からは『新聞見たよ』と、発表の内容を聞かれるアクションがありました。みなさまが注目してくれていたんだな、と認識しました」(船橋市役所 近藤氏)

官民連携で組織にとらわれないアイデアを

全12団体が参加した「Fun a bridge」。その名称は「船=Funa」「橋=bridge」から名付けられている。企画をスタートしたのは、事前オリエンテーションの約2カ月前となる2021年10月。まだまだ新型コロナウイルスの影響が色濃く残るなか、NTT東日本 千葉西支店はまず民間企業4社に声をかけ、続いて商工会議所と市役所に相談を持ちかける。

ここまで約1カ月を要したものの、コロナ禍で社外交流が求められていたのか、「ぜひ参加したい」という企業は順調に増加していった。こうして企業が主導する地域交流イベントながらも「Fun a bridge」は大きな成功を収め、次の開催が待ち望まれている。

「船橋市の未来を幅広く考えられたことがとても刺激的で勉強になりました。『自分が船橋市を作っていくんだ』という個々の意識を調整しつつ、互いに議論し合うことで、我々若い世代が時制に見合う仲間を作っていくことが非常に重要だな、と感じました」(NTT東日本 小峯氏)

「船橋市には将来に向けた課題がたくさんありますが、やっぱり"住みよい街"であり、選ばれ続けなくてはなりません。コロナ禍によって行政に求められるやり方も変わっていますし、企業さまの取り組みも参考にしていかなければいけません。部署を超えた横断的な取り組みをより強化していかなければならないのかなと感じます。全体的な印象でいいますと、やっぱり企業さんの強みを知ることができたのが一番の収穫かなと思いました」(船橋市役所 近藤氏)

  • 船橋市長の松戸徹氏とMVPを受賞したみなさん

官と民、そしてそれぞれの企業がお互いの強みを再確認できたことで、業界を超えた連携はこれからますます加速するだろう。未来を背負う若手のみなさんが、業種・職種にとらわれない考え方で地域活性を実現していくことに期待したい。

「交流会では、官民連携だけではなくて、普段であれば培えないような他業種の方との人脈、そしてみなさんの広い視野を得ることができました。他の自治体さんでも、そういった目指す10年後のビジョンに向けて話し合う機会があればいいなと思います。ぜひ一緒にやりましょう」(NTT東日本 小峯氏)

「船橋市の人口は64万人を超えており、さまざまなイベントを行える市民力、商工業が発達した都市力という強みもあります。PRポイントがたくさんあるというのは市民としても自慢できる点ですし、それは市民や企業の方が市政に積極的に参加してくださっているからだと思います。意見を言える場はたくさんありますので、市民の方でも企業の方でも、ぜひ市役所に意見を寄せていただきたいと思います」(船橋市役所 近藤氏)