BSJapanextの番組『西川貴教のバーチャル知事』(毎週月曜21:00~)で、“バーチャル知事”となって愛する故郷・滋賀県の様々な課題解決に取り組む西川貴教。今年3月の番組スタートから早くも様々な成果が上がっているといい、手応えを感じているようだ。ここまでを振り返っての感想や、今後への展望など、話を聞いた――。
■発想の転換だけで変えられることがたくさんある
――番組がスタートして5カ月が経過しましたが、手応えとしてはいかがですか?
まだ始まったばかりなんですけれど、先日、以前取り上げさせていただいたボートレースびわこの新規顧客誘致という「課題」について、実際に現地で現状を把握しようということでロケに行ったんです。そしたら、もう早速いろんな形で取り組みが始まっていて。いやあ、非常にうれしかったですね。
――すごいスピード感ですね。
実は発想の転換だけでも変えられるということがたくさんあって、番組の中で出てきたものを早速実行に移していただいていたんです。こういうことって、やっぱり事業者の皆さんや自治体で取り組んでらっしゃる皆さんはなかなか俯瞰(ふかん)で物事を見られないと思うのですが、我々みたいな者が入ってきて少し冷静な目で見させてもらうだけで、問題点が浮き彫りになって、それを指摘するときちんと返していただける。これは本当にこの番組を始めて良かったなと、改めて思いました。
――放送を見ていると、「番組」というより「会議」をしている感じです。
そうなんです。ラップトップ(=ノートPC)を置きながら収録しているので、その場で情報を収集しながら意見させていただいて。現地の方とはオンラインという形ではあるんですけど、コミュニケーションの精度としては変わらないので、現場の生の声を伺って、それをゲストの識者の皆さんと一緒に揉みながら解決の糸口を見つけていくという感じですね。
――番組で「今日は学んだなあ」とよくおっしゃっているのが印象的なのですが、特に気づかされたことは何でしょうか?
滋賀県は、2年に1回大河ドラマがやってくるくらい歴史遺産がすごいんですよ。明智光秀をやって、もうすぐ紫式部(『源氏物語』の始まりの地と言われるのが石山寺)も始まりますし、安土桃山時代の安土城は滋賀ですから。平城京、平安京の前に「大津京」もありました。こうやって歴史をひも解くと滋賀はゆかりの土地ばかりなんですけど、なかなかそういったところに皆さんが着目していただけない。そして、交通インフラが整っているがゆえに、せっかく来ていただいても、京都・大阪・奈良に泊まってしまうんですよね。
それと、僕はもう地方の行政に携わる家族が多かったりして、どこをどう切っても「西川さんとこの息子さん」みたいな感じで逃げようがないですから、最初から「滋賀県出身です」なんて申し上げていたんですが、かたや愛知、かたや京都・大阪という大都市の狭間になっているような自治体で、なかなか「滋賀県出身です」「滋賀県民です」ということを主張される方が少なくて。だから、てっきりみんな地元のことを冷ややかな目で見てらっしゃるのかなと思ったら全然そんなことはなくて、実は内側にものすごい郷土愛と誇りをお持ちなんですよ。お隣に京都とか名古屋とかがあるものですから、主張ができずにいただけなんですね。でも、「もうこれからは控えめでいるのはやめましょう。僕らの地元をもっと誇り高いものにしましょう」とお声がけすると、みんな「いいんですか!?」と喜んで、本当に笑顔で地域の魅力を発信してくださるので、これは勇気につながりました。てっきり、「おせっかいだからやめてよ」っておっしゃるんじゃないかと思ってたんですけど、行ってみると「待ってました!」と言っていただけるようになったので、本当にうれしいです。
■番組の取り組みが『イナズマロック フェス』に直結
――西川さんが長年取り組んでいる滋賀での音楽フェス『イナズマロック フェス』がありますが、番組で学んだことを生かす部分はありますか?
この番組で林業を扱う皆さんと課題や問題点を会議させていただいて、いろんな取り組みを考えていたんですけど、今年の『イナズマロック フェス』で「カーボンオフセット」の取り組みを行います。楽器や照明といった部分で使う電気や、お客様は最寄りの駅からバスのピストンで移動していただくことになるんですけど、そこで出るおおよその二酸化炭素の分の「びわ湖カーボンクレジット」を購入し、そのお金が地元の森林や山を守る事業に使われていくという取り組みです。
「びわ湖カーボンクレジット」は、 国の認証制度である「J-クレジット」に認証されたものの中で、県内で生み出されたクレジットのことです。滋賀県は県内の二酸化炭素削減や排出量の見える化を進めるため、この「びわ湖カーボンクレジット」の普及促進の取り組みを進めています。特に県内の森林組合等で創出の取り組みが進んでおり、今回は滋賀銀行様が滋賀県や森林組合から購入したこの「びわ湖カーボンクレジット」の排出権を、「イナズマロック フェス」のために拠出いただけることになりました。滋賀県の地銀である滋賀銀行様と一緒にこのような取り組みをできることは、我々にとって非常に意義のあることです。
この『バーチャル知事』という番組の取り組みが、まさに『イナズマロック フェス』に直結する形になったなと思います。
――改めて、成果がすぐに出る番組ですね。
そこが国政と違って地方のいいところですよね。フットワーク軽くいろんなことを形にしていける。むしろ地方の場合はスピード感を持って取り組まないといけないところが多くて、実際この間も北陸から西日本で大雨の災害がありましたが、滋賀県でも洪水の被害がありまして。幸いなことに人的被害はなかったんですけど、そういう被害を未然に防いでいくためにも、林業や山を守る事業というのが大事だなと改めて思いました。