E-Bike、乗ったことありますか?
ここ数年、スタイリッシュで個性的なスポーティなモデルが増えるとともに、性能も驚くほど高性能になっています。世界的な大きな都市ならE-Bikeのレンタサイクルはあって当然。日本でもどんどん増えています。今回は北海道上士幌町でレンタルE-Bikeを使ってヒルクライムをしてみました。
■旅先にはレンタサイクル
数えられないぐらい自転車を袋に詰めにして旅してきた。しかし、いつも思う。面倒臭い。それでも出かけていくのだから、自転車で旅をするのは楽しいのだが、持って行かなくてもイイなら、さらに楽しい。というわけで、最近は旅先にいいレンタサイクルがないか、検索をかけてみる。
今回は、ナショナルサイクルルートに選定された“トカプチ400”を自分の自転車で走り終えてから、レンタサイクルでプチツーリングをしてみた。
目指したのは、帯広の北ある上士幌町。ナイタイ高原牧場は、「高原の循環道路は日本でも10指に入る絶景ロード」と絶賛する人もおり、パートナーにも経験させてみたいと思った。問題は練習不足どころか、運動不足状態で、とてもヒルクライムをする状態ではない。
E-Bikeのレンタサイクルを探してみると、上士幌町には何カ所かE-Bikeを貸出している施設もある。私のように自分のスポーツバイクと旅行に出かけて、わざわざレンタサイクルを借りる人は少ないだろうが、マイバイクがあろうか、なかろうが、騙されたと思って、E-Bikeを素敵な景色の中で乗ってほしい。必ずサプライズがあるはずだ。
私が泊まったカミシホロホテルは、オランダのE-Bikeヴァンムーフ社のX3(3台)が滞在中は無料でレンタルできる。一般的にE-Bikeのレンタル代は1時間1000〜1500円ほどするので、3時間も借りれば宿泊費は半額みたいなものだ。部屋はコンパクトだが、かなり手頃な設定である。
ヴァンムーフは2009年にアムステルダムで誕生したE-Bikeメーカーで、スタイリッシュなデザインと機能で“自転車界のテスラ”の異名を持っている。たとえばギヤは4段階の自動変速で、フレームエンドのボタンをキックすればロックがかかり、万が一のときもGSMを利用した盗難防止システムを備えている。他にもトップチューブにドクロマークが出て鳴るアラームなど、操作音のチョイスひとつとっても個性的かつ未来的だ。さらに適応身長は155〜200㎝と守備範囲が広いので、フレームサイズを気にしなくてもいいのは、うれしい。
■E-Bikeなら運動不足の人でも、問題ナシ!
サドルの高さを調整し、充電を確認。見送りに来てくれたホテルの人に
「ナイタイ高原まで行けますか?」と尋ねると
「ええ、大丈夫だと思います」と心強い返事が。
体重や走り方によって消費電力は違うものの、往復している人がいると思うと安心である。
ナイタイ高原までは約16㎞。
「真っすぐに行って、突き当たったら左。あとは案内が出ているよ」。
そう教えてくれたのは、ホテルの近くにあるサイクルストアー市川のご主人。「坂は登り口から、きっかり7㎞」と言っていたが、それ以前に街の中心地をすぎると、早速ジワリジワリと上りが始まる。しかし、それが気にならないのもE-Bikeのいいところ。なにより、目の前に景色が広くて気持ちがいい。「遠くへ来た」という実感が湧く。
以前、西オーストリアで半径500㎞、街がない所を訪れたことがある。手付かずの自然は美しくもあったが、正直、怖かった。自転車で安心して走るなら、程よく人の匂いがしたほうがいい。そして、そのバランスがいいのが北海道であり、上士幌町は抜群だ。
面積は東京23区よりも少し広く(700.9㎢/622㎢)、人口密度は1㎢あたり7.13人(平成27年国勢調査)、東京23区の1万5471人(東京都総務局統計部調べ)と比較すると、どれだけ静かかは想像がつくだろう。どこを取っても走りやすく、すれ違うクルマはほとんどない。しかも、ガードレールもないだから、気分はいいに決まっている。
アシストのないスポーツバイクの魅力は、わずかな坂や舗装の違いなどを感じられる繊細さだ。一方、E-Bikeの魅力は向かい風や坂の勾配、体力差を気にすることなく走れることにある。北イタリアのドロミテ山塊あたりを走っているカップルだと、女性がE-Bike、男性がロードバイクという組み合わせが多くなっている。体力差がある2人が走るなら、それを補う意味でもE-Bikeはいい選択だし、世界的に人気も高まっている。
いつもなら、すっかり後方に姿を消しているパートナーも、すぐ後ろを走っている。街中から8㎞ほど道道805号線を走ってくると、左折を促す看板がある。ここから先は日本一広い公共牧場“ナイタイ高原牧場”の敷地内を走る。ちなみに広さは東京ドーム358個分(1700ha)、上士幌町の人口の約8倍、4万頭の牛が暮らしているそうだ。
看板に従って左に曲がると、本格的に上りが始まる。勾配は7%近くありそうだが(実際には最大勾配5.9%)、ヴァンムーフのおかげで、苦にならない。言い換えると、苦にならない程度だが、自分の力で坂を走っている実感もある。ひたすらラクをしたいならクルマもオートバイもある。程よく疲れるのが、E-Bikeサイクリングの妙である。
「クルマで景色のいい峠道を走っていると、オートバイの軽快さが魅力的に見える。で、乗り換えてみると、今度は自転車の自由が羨ましい。そして、サイクリストは他を羨ましいと思わない。だから、自転車が最強」
乗り物好きの知り合いが、そう言っていたのを思いだした。まるでヨーロッパのような景色の中にいると、自転車が最強だとつくづく思う。ただ、いつもは体力に見合ったコースをはしっているなら……という但し書きがつくが、今日はそれもない。
ゴールは休憩施設の“ナイタイテラス”。十勝平野を一望する展望カフェは足元から天井までワイドガラスが使われていて、目の前に広がる緑が美しい。ちょっとだけズルした気がしないでもないが、達成感も手伝って満足感高し。写真を撮りながらブラブラ走って、ホテルから1時間ちょっと。カミシホロホテルでは予約がなければ、チェックアウト後にも貸してもらえるという(応相談)。
上士幌町はレンタサイクルに力を入れており、道の駅“かみしほろ”の他、上士幌町交通ターミナル、東大雪自然館でもE-Bike、ファットバイクなどの貸出しを行っている。さらにオプションで乗り捨てサービスや、ダウンヒルツアーもある。
文/菊地武洋