参加したすべての作品が自分にとっては欠かせないものだという山田。その上で、ターニングポイントになった作品について話してくれた。

「皆さんがターニングポイントだと思っている作品と、僕の思うターニングポイントになった作品はもしかしたら違う」と前置きした上で、「満足のいく演技ができたという意味で自分にとってターニングポイントになった作品は、『ここは今から倫理です。』や『HiGH&LOW』、『ホームルーム』、『東京リベンジャーズ』、『ストロボ・エッジ』、これから公開される『夜、鳥たちが啼く』など。朝ドラ『なつぞら』も、こういう風に見せられたらいいなというお芝居ができたなと思います」と作品を挙げていく。

自分が納得できた作品は「役と心が通いすぎた」という感覚になれたもので、役と心が通うと「思考がいらなくなる」という。

「すべて感覚で動いているという感じ。セリフだけ覚えて、あとはその場で動いているみたいな。いつも役とのシンクロ率を上げようとしていますが、僕と役の人間性が近いからシンクロできたのか、それとも近くはないけど寄せることができたのか、そこは冷静に突き詰めるようにしています」

役と心が通じ合えたと感じた最初の作品は、廣木隆一監督の映画『ストロボ・エッジ』(2015)だったという。「廣木監督によって強制的に絞り出されたみたいな感覚でした。同じシーンを20回くらいやって、何度も何度も『違う、もう1回』って。廣木監督と出会って、初めて役と通じ合うことができました」

引き出してくれた廣木監督にはとても感謝しているそうで、「あの現場は一生忘れないですね」と振り返る。

「例えば教室のシーンだったら、僕の演技に対して『そこ椅子座り直す?』『カバンいつ持っていくの?』とか指摘されるんですけど、僕に自由を与えてくれているわけじゃないですか。(作品によっては)このセリフのときに立ってくださいというところまで決まっていることもありますが、廣木監督は全部自由に考えさせてくれて、『違う』って言われながらですけど、『それいいじゃん』と言ってくれることもあって。だから考え続けることって大事だなってすごく思います」

また、俳優業のやりがいについて「多くの人に何かを届けることができるのはすごいなと感じます。SNSをフォローしてもらったこともわかりますし、コメントを見ればどのように思ってくれているのかわかります」とも話した。

やりがいが増していく一方で苦悩も。「追求していけばいくほど悩むし、苦しむ」と吐露するが、「自分の表現が間違っていないか疑い続けることが大事」だと考えている。

「お芝居だなと思うお芝居と、本当の顔をしているお芝居とがある。その違いはなんだろうって研究したときに、『あ、音か!』と思ったんです。本心で話している人の音がある。今、僕が話しているのは本当の音。これがセリフでできたら完璧なんですけど、どうしてもお芝居しようとすると声を作ってしまったりする。そういうのを日々考えています」