国立映画アーカイブが11月まで約4カ月にわたって「脚本家 黒澤明」展を開催。「七人の侍」や「羅生門」などの名作映画の数々を生み出し、今なお世界の映画人たちからリスペクトを集める監督・黒澤明を、“脚本家”としての側面から着目し分析、「書く人」としての黒澤明の仕事をたどっている。

「シナリオの修業が映画監督への道である」という日本映画界の慣習により、若き日の黒澤明は多忙な助監督業務の傍らでシナリオ執筆に励んでいたという。

他の監督たちに提供した修業時代の脚本をはじめ、彼にインスピレーションを与えた文豪たちと作品との関連性の考察や、新たに発見された幻の未映像化脚本など、数多くの貴重な資料と共に、脚本家・黒澤の道のりをたどっている。

たとえば、黒澤を含む3名の合作シナリオによる「七人の侍」。シナリオの段階で侍たちのキャラクターがどのように構想され、肉付けされていったのか、その過程を解き明していく。

また、旅館に長期間泊まり込んで4人で書かれた娯楽大作「隠し砦の三悪人」は、そのシナリオのスリリングな生成過程を、デジタル展示システムで丹念に追うことができる。

黒澤作品の専門家の全面的な協力によりシナリオ術に照準をあてた展示は、地味ながら圧巻の内容。興味のある方はぜひ、黒澤研究の最新形を堪能してはいかがだろう。

■information
「脚本家 黒澤明」国立映画アーカイブ 展示室(7階)
東京都中央区京橋 3-7-6
期間:11月27日まで(月曜日、9月6日~9日、9月27日~10月2日は休室)
料金:一般250円/大学生130円/65 歳以上、高校生以下及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)は無料