うつ病になって働くことができない場合、障害年金を申請することができます。だたし、障害年金の受給には、いくつかの条件があります。ここでは、受給要件や認定基準となる障害の状態、受給額などをご紹介します。

  • うつ病で障害年金が受け取れるケースとは

    ※画像はイメージ

■障害年金の受給要件

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の人も含めて受け取ることができる年金です。

障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに、国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」を請求することができます。この初めて医師の診療を受けた日を「初診日(初診日要件)」といいます。

「障害基礎年金」は障害等級1級・2級に該当する場合に支給され、「障害厚生年金」は1級・2級に加えて3級でも支給があります。また、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残った場合は障害手当金(一時金)が支給されます。

障害年金を受給するためには、次の3つの要件をすべて満たしている必要があります。

<障害基礎年金>

  • 初診日要件

国民年金の被保険者
または、20歳前または国内居住の60歳以上65歳未満の者

  • 保険料納付要件

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間と免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること
または、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

  • 障害等級

障害認定日において、1級または2級に該当していること

<障害厚生年金>

  • 初診日要件

厚生年金の被保険者

  • 保険料納付要件

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間と免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること
または、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

  • 障害等級

障害認定日において、1級から3級のいずれかに該当していること

障害認定日とは、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがの初診日から1年6カ月を過ぎた日、またはその期間に症状が固定した場合は、その日をいいます。

■うつ病の認定基準

障害年金は、身体障害だけでなく、うつ病や統合失調症などの精神障害でも、基準を満たせば受給対象となります。

うつ病の場合、労働に支障が出るなど、次の認定基準に該当すれば障害年金を申請することができます。

※うつ病は気分障害の一つです。

<統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害>

  • 障害の程度:1級

1 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

  • 障害の程度:2級

1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

  • 障害の程度:3級

1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

分かりやすく説明すると、1級は常時援助が必要な状態、2級は日常生活が著しい制限を受ける状態、3級は労働が制限を受ける状態といえます。

たとえば、常に介護が必要でベッドから起き上がれないような状態は1級、働くことができないのはもちろんのこと、日常生活にも支障があり、病院あるいは家から出られない状態が2級、日常生活には支障はないものの、働くことができない状態が3級に該当するでしょう。

1級、2級に該当すると、障害基礎年金または障害厚生年金(障害基礎年金とあわせて)を受給できます。3級は障害厚生年金のみとなります。

■障害年金の受給額

障害基礎年金の年金額は、障害等級に応じた定額です。一方、障害厚生年金は、厚生年金の加入期間に基づく報酬比例の額となっています。ただし、加入期間が300カ月に満たない場合は、300カ月あるものとして計算します。

<障害基礎年金の年金額(令和4年4月分から)>

  • 1級 97万2250円+子の加算額※

  • 2級 77万7800円+子の加算額※

  • 子の加算額 2人まで 1人につき22万3800円
    3人目以降 1人につき7万4600円

※子の加算額はその人に生計を維持されている子がいるときに加算されます。

<障害厚生年金の年金額(令和4年4月分から)>

  • 1級 (報酬比例の年金額)×1.25+〔配偶者の加給年金額(22万3800円)〕※

  • 2級 (報酬比例の年金額)+〔配偶者の加給年金額(22万3800円)〕※

  • 3級 (報酬比例の年金額) 最低保障額 58万3400円

※その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。

障害厚生年金には、障害の状態が3級より軽い一定の障害に該当する場合に支給される障害手当金があります。

■おわりに

うつ病を患い、仕事ができずに生活に困窮するケースは少なくありません。そのような場合に、障害年金が受給できれば、経済面で大きな支えとなります。

しかし、障害年金を受給するためには、診断書などの各種書類を揃えたり、申請書を作成したりと、手間と時間がかかります。病気を抱えながら、これらの作業を行うのは至難の業だと思います。中には、手続きができないために申請を諦めてしまう人もいるでしょう。

うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態なので、以前は簡単にできたことでも困難になってしまうのです。そのようなときには、社会保険労務士などの専門家に頼るのも一つの手です。

1人で抱え込まず、家族やかかりつけの医師、専門家などに早めに相談することが大切です。