これまで数々のプロジェクトで言葉を伝えてきた山根。ドラマでも、NHK在籍時には大河ドラマ『太平記』や連続テレビ小説『天花』など、フリーになってからもTBS系日曜劇場『半沢直樹』や『ルーズベルトゲーム』で印象的なナレーションを披露してきた。
「『半沢直樹』はNHKを定年退職したあと、突然事務所に電話が掛かってきて呼んでいただいたんです」と振り返ると、起用理由について「自分で言うのもおこがましいのですが(演出を務めた)福澤(克維)さんからは『きちんと内容を伝えてくれるアナウンサーに読んでもらいたかった』と言ってくださったんです」。
この点について山根は「NHKのアナウンサーというのは、研修の最初から『節をつけるな、歌うな』としっかり意味だけ伝わるように口を酸っぱくして言われているので、まっすぐ読むことだけは訓練されているんです」と笑うと「ドラマのナレーションというのは、短いコメントのなかでしっかり物語に溶け込んで、しかも筋書きが分かるように読むことが求められていると思うんです」と分析する。
続けて山根は「ドラマを好んで選ぶということはありませんが、やってみると面白いですね。これはNHK時代では感じなかったことです。特に『半沢直樹』のときは短いナレーションだったにも関わらず、いろいろな人から『見ました』と言っていただき反響の大きさには驚きました」と振り返ると「NHK時代にも、大河ドラマや朝ドラなどでもナレーションをしていましたが、そのときとは全然違いましたね」と笑う。
同じドラマという題材でも、『渡る世間は鬼ばかり』の朗読はナレーションとはまったく違う経験だったという山根。「セリフとナレーションはまったく別物。セリフを読むのはとても難しいんですよ」と苦笑いを浮かべると、第10シリーズまで続く膨大な作品群に「今回は未開の地を切り開くような感じでしたが、もっと研究して磨いていかなければと思います」と意欲を見せていた。