杉咲が女優として頭角を現したのは、湊かなえ原作のドラマ『夜行観覧車』(13)あたりからだろうか。映画では、野田洋次郎と共演した『トイレのピエタ』(15)で注目され、『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)では第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞をはじめ、その年の助演女優賞を総なめにした。

昨年は朝ドラ『おちょやん』やドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(21)でも主演を張った杉咲。『おちょやん』の共演者に取材をした時には、毎日完璧に台本を頭に入れてくるし、いつも笑顔でいてくれると、その座長ぶりを称える声が多く上がった。そんな杉咲が座長としてとてもリスペクトしていると名前を挙げるのが、映画『無限の住人』(17)で共演した木村拓哉だ。

「勉強になることばかりでした。木村さんは、俳優部が椅子に座って休憩するようなタイミングなどでも、常に現場に立っていらっしゃいました。作品に対する責任や大きな愛情を感じますしたし、だからこそ現場がひとつになっていくのだなと学ばせていただきました。私もそんな姿勢を大切にして、体現していきたいと思っています」

続けて『無限の住人』撮影時での木村とのエピソードも話してくれた。「アクション映画ということで、木村さんは特に殺陣のシーンが多く、当時、撮影途中で靭帯を怪我されてしまい足がとても痛かったはずなのに、本番と同じ熱量で、私の目線上でアクションをしてくださったんです」と心から感謝する。

「ご自身が映らないシーンでもいつもお付き合いをしてくださる木村さんの姿から、相手のためにお芝居をすることが、どれほど大切なことなのかとあらためて実感しましたし、私も同じようにしていきたいと思いました」

また、『プリズム』の現場で、座長として心がけていることについて聞くと「皆さんとコミュニケーションを取りたいという思いは、やはり常に持っています。本当に周りの皆さまが素敵な方ばかりで、撮影においても少しずつ話し合いを重ねながら、一歩一歩進んでいる感覚で、皆さんとともに二人三脚で進んでいます」と答えてくれた。

そして、『プリズム』の見どころを語ってくれた。「それぞれの登場人物が自分自身や相手と向き合い、一歩ずつ進んでいく物語だからこそ、日々、綱渡りのような感覚で皆さんと試行錯誤しながら進んでいます。本作を通して今の社会に流れる空気感のようなものにできるだけアンテナを張りながら、今この作品を描くことの意味を探しています。作品を観てくださった方々が、自分自身や大切な人、顔も名前も知らない誰かのことを考えられるようなきっかけを与えてくれる作品になっていたとしたら、うれしいです」

■杉咲花
1997年10月2日生まれ、東京都出身。2016年に映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞・新人俳優賞を受賞。『花のち晴れ~花男 Next Season~』(18)で連続ドラマ初主演、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(18)で実写映画初主演。連続テレビ小説『おちょやん』(20~21)でヒロインに抜擢された。そのほか近年の主な出演作は大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)、ドラマ『ハケン占い師アタル』(19)、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(21)、映画『青くて痛くて脆い』(20)、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(21)、『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』(21)など。

(C)NHK