契約から入金管理までの一連のフローを管理する受発注管理業務は、あらゆる事業の根幹です。それゆえ関連業務も多く、業務の煩雑さに悩まれている方も多いのではないでしょうか。この記事では、受発注管理業務の各プロセスにおける業務効率化のポイントやシステム導入のメリットなどについて、くわしく解説します。

  • 受発注管理の業務範囲とシステム導入による業務効率化のポイント

    受発注管理は事業の根幹となるものです

受発注管理の業務範囲とシステム導入による業務効率化のポイント

まずは、受発注管理全般の業務範囲と、システム導入による業務効率化のポイントをおさえておきましょう。

受発注管理の一般的な流れ・ワークフロー

受発注管理は、顧客との取引である受注業務や、仕入れ先との取引である発注業務を管理することを言います。受注側と発注側とで行う業務は異なりますが、大きくは次のようなフローで行われます。

1.見積もりの依頼 / 作成
2.注文書の作成 / 受領
3.納品 / 検収
4.請求 / 入金

受発注管理の課題は手間と人為的ミス

受発注業務は事業の根幹であり、部署をまたいで多くの人が関わるため、手間と人為的ミスの削減が大きな課題となります。逆にこの課題をクリアできれば、事業全体の業務効率化や売上・利益の向上、競合優位性の確立にもつながります。

受発注管理システムで受注から在庫管理・会計まで一元管理

一連のフローの中で多くの部署が関わり、情報を共有する必要があるからこそ、受発注管理はシステム化のメリットが大きい業務だと言えます。在庫管理から会計までデータを一元管理できれば、手間も人為的ミスも一気に削減できるでしょう。

  • 受発注管理・契約における個別契約書の役割

    個別契約書の役割を知っておきましょう

受発注管理・契約における個別契約書の役割

顧客や仕入れ先と取引を行ううえで、トラブルを回避して円滑に業務を進めるために役立つのが契約書です。受発注管理の業務フローにおいては、初回取引のスタート時に基本契約書を、注文ごとに個別契約書を運用している企業も多いでしょう。ここでは個別契約書の役割について簡潔に説明します。

基本契約と個別契約の違いは取引の範囲

基本契約書と個別契約書の2種類を運用する際には、基本契約書に取引全体の共通事項を記載し、個別契約書で個別の取引内容について記載します。基本契約書を取り交わしておくことで、取引ごとに詳細な契約を取り決める手間を省くことができます。

基本契約と個別契約の優先関係が必要

2種類の契約書を運用する際に気をつけたいのが、2つの契約書の間に矛盾が生じた際にどちらの内容が優先されるのかを定めておくことです。個別契約書を優先すれば柔軟な取引が可能になり、基本契約書を優先すれば統制を取りながら取引を進めることができます。

取引の明確化と円滑化のために基本・個別契約書を用意する

商取引の多くは、契約書の取り交わしが義務づけられているわけではありません。しかし、契約書は後のトラブルを避けるために有効な手段のひとつです。短期的に見ると、書類が増えるのは非効率だと感じるかもしれませんが、長期的には基本契約書・個別契約書の2種類を運用することが取引の明確化と円滑化につながるでしょう。

  • 受発注管理・商取引の契約における電子契約サービスの役割

    電子契約サービスは契約の効率化に役立ちます

受発注管理・商取引の契約における電子契約サービスの役割

契約書を運用するうえで、効率化の助けとなるのが電子契約サービスです。続いては、電子契約サービスの役割について見ていきましょう。

リモートワークを背景に電子契約サービスの需要は増加

電子契約サービスの浸透を促進するきっかけとなっているのがリモートワーク導入です。紙の契約書では、印刷・製本・署名などを行うために出社が必要ですが、電子契約サービスを使えばわざわざ出社する必要がありません。また先方への郵送・訪問も不要なため、場所に関係なくスムーズな契約締結が可能になります。

受発注管理と電子契約サービスのシステム連係で業務負担やミス削減

受発注管理システムと電子契約サービスをシステム連係できれば、さらに業務効率化が進みます。顧客情報などのデータを連係することで入力する際の手間やミスを削減できるうえ、関連部署ともリアルタイムで情報を共有できるため、契約後のフローも短縮できるでしょう。

新たな法整備への準拠など電子契約サービスでガバナンスを強化

電子書類については法整備が進められており、電子署名法や電子帳簿保存法、e-文書法など遵守が求められます。今後も政府がデジタル化を推進する中で、対応に遅れることがないようにするためにも、電子契約サービスの活用は有効です。多くのクラウドサービスは法改正に対応していますので、ガバナンスの強化にもつながります。

  • 受発注管理・商取引の電子契約における電子証明書の役割

    電子証明書の役割について解説します

受発注管理・商取引の電子契約における電子証明書の役割

電子契約の普及とともに広まりを見せている電子証明書。電子契約書の本人性を担保するために活用されています。ここでは電子証明書の役割について解説します。

電子証明書はデジタル化された印鑑証明書

電子証明書は、電子契約を行う主体が間違いなく本人であることを電子的に証明する技術であり、「印鑑証明書」と同様の役割を果たします。第三者機関が証明書を発行することで信頼性を担保しています。

電子署名と電子証明書の違い

電子署名と電子証明書は似て非なるものです。

電子証明書は、前述の通り第三者機関によって電子契約の本人性を証明するためのものである一方、電子署名は署名者自身が文書の内容について間違いないことを証明するものです。電子証明書が印鑑証明書の役割を果たすのに対し、電子署名はサインや捺印の代替となります。

電子証明書の有効期間に注意して受発注管理・商取引に活用

電子証明書には通常1~3年の有効期間が設けられているため注意が必要です。これは暗号システムのアルゴリズムを破られるリスクを勘案してのことです。証明書を発行する手間はかかりますが、電子証明書は取引の安全性や電子契約の法的効力を担保するうえで有効な手段です。今後もますます活用されていくことでしょう。

  • 受発注管理・商取引の契約における受注管理の役割

    受注管理の役割について説明します

受発注管理・商取引の契約における受注管理の役割

受発注管理の中でも顧客との取引を管理する受注管理は、迅速かつ正確な対応が求められます。ここでは受注管理の役割や効率化のポイントについてお話しします。

注文を受けるだけではなく出荷管理までが受注管理の対応範囲

受注管理には注文を受けるだけでなく、出荷までの一連の流れを把握・管理することが求められます。在庫の確認や仕入れ・製造のスケジュール確認など、販売管理部門や生産部門・調達部門などとの情報連携が重要です。

受注管理業務の主な課題は人為的ミスとシステムトラブル

受注管理業務の主な課題となるのが、人為的ミスやシステムのトラブルです。部門や担当者をまたいだ連携が必要になるため、伝達ミスや個々の作業ミスも発生しやすくなります。また、各部門でデータやシステムを管理している場合には、データ紛失やシステムトラブルが発生する割合も高まりやすいでしょう。

受発注管理システムでの一元管理への移行でミスを削減

上述のような課題の解決に有効なのが受発注管理システムでの一元管理です。データの受け渡しが不要になり、各担当者が情報をリアルタイムで受け取れるため、ミスを削減でき、納品までのリードタイムの短縮にもつながります。

  • 受発注管理・商取引の契約における受注伝票の役割

    受注伝票の役割について説明します

受発注管理・商取引の契約における受注伝票の役割

製造業や流通業など、多くの商品の取引を行う企業で活用されることの多い受注伝票。ここでは、スムーズな取引に役立つ受注伝票の役割について説明します。

会計上の取引内容を第三者でもわかる状態にまとめた伝票

伝票とは「いつ、どのように取引されたのか」を第三者にもわかるようにまとめた書類です。伝票には入金伝票や仕入伝票、振替伝票などさまざまな種類があり、受注した取引の内容について記載したものが受注伝票です。

受注伝票と注文請書・納品書との役割の違い

受注時に使用される他の書類との役割の違いを見ていきましょう。

受注伝票は、受注時に起票しますが、会計用の書類ですので社外には出しません。

注文請書は、顧客から受け取った注文書に対して注文を受けた意思表示として顧客に提出する書類です。

納品書は、受注した商品を納品する際に顧客に提出する書類です。

発行義務はないが受注伝票は発注・納品のミス防止に活用

伝票は発行義務のない書類ですが、多くの注文をミスなくさばくうえで大いに役立つものです。受注管理でのミスを削減したい場合には、導入を検討してみましょう。

  • 受発注管理・商取引の契約における売上管理の役割

    売上管理の役割とは?

受発注管理・商取引の契約における売上管理の役割

受発注管理の中でも経営に直結するのが売上管理業務です。続いては、売上管理の役割について見ていきましょう。

売上管理は売上目標達成と利潤確保のための情報の整理

売上管理の目的は、期初に立てた売上目標を達成し、利潤を確保すること。そのためには、全社の売上推移だけでなく、商材別・部門別の売上構成をチェックするなど、多角的に情報整理をすることが求められます。

売上管理を効果的に行うためのデータ構成

売上管理によって、早期に課題を発見し打開策を講じるためには、データを収集・分析する視点にも工夫が必要です。時系列での比較や、事業別・商材別・顧客別での詳細な要因分析、あるいは部門・担当者別の売上管理など、複数の視点を持つことが重要です。

売上管理は可視化して終わりではなくあくまで施策の立案・達成のため

売上管理の最終目的は、売上目標の達成と利潤の確保ですので、可視化して終わりでは意味がありません。PDCAを回すため、現状を正しく振り返り、新たな施策を立案できるような体制・フローを構築していきましょう。

  • 受発注管理・商取引の契約における定量発注方式の役割

    定量発注方式の役割について知っておきましょう

受発注管理・商取引の契約における定量発注方式の役割

受発注管理において、コストを抑えるための在庫・仕入れ管理も重要な要素の一つです。ここでは、一般的な発注方式である定量発注方式と定期発注方式について説明します。

定量発注方式は薄利多売方式向き

定量発注方式は、在庫が一定量を切ったタイミングで毎回決まった量を発注する発注方式を言います。需要予測などの発注時の手間を省ける効率的な方法と言えます。しかし需要の変動には対応しにくい面もあります。定量発注方式は多くの場合、需要や価格が安定している安価な商品をまとめて発注する際に活用されます。

定期発注方式は高単価高利益方式向き

もう一方の定期発注方式は、週1回や月1回など一定の発注間隔で発注する発注方式です。発注の都度、在庫量や需要を把握して発注量を決める必要があるため手間がかかりますが、需要の変化に対応しやすい方法です。一般的に、売上への影響が大きい主力商品や、需要変動の大きい商品などの発注に活用されます。

ABC分析を通じた発注方式の使いわけで欠品リスクを減らす

定量発注方式も定期発注方式もそれぞれメリット・デメリットがあるため、商品ごとの発注方式の使いわけが重要です。売上構成比を評価軸にABC分析でクラスわけを行い、売上構成比の高いAクラスの商品は定期発注方式、B・Cクラスの商品は定量発注方式といったように商品に合った発注方式を選択しましょう。それが欠品リスクの低下や発注・在庫管理のコストダウンにつながります。

  • 受発注管理・商取引の契約における検収書の役割

    検収書の役割とは?

受発注管理・商取引の契約における検収書の役割

続いては、納品後の検収作業時に用いられる検収書の役割について簡潔に紹介します。

検収書とは発注者が商品・サービス等を検収したことの証明書類

検収書は、納品された商品・サービスの内容に問題がないことを証明する書類です。検収後に、発注側から受注側へ提出します。

電子化して保存する場合の取扱いは請求書や納品書と異なる

ペーパーレス化に伴い、検収書を電子化したい場合には、電子帳簿保存法に則る必要があります。その際、検収書は重要度の低い「一般書類」に該当するため、スキャナ保存の要件は請求書や納品書とは異なります。また、検収書は課税文書には該当しないため、紙かデジタルかに関わらず収入印紙は不要です。

検収書の発行が納品トラブルの防止に

検収書は発行義務のある書類ではありませんが、活用することで納品後のトラブル防止につながります。受注側・発注側双方にメリットがありますので、上手に活用して円滑な取引に役立てましょう。

  • 受発注管理・商取引の契約における検収期日の役割

    検収期日に関するルールとは

受発注管理・商取引の契約における検収期日の役割

ここでは、検収を行う際に覚えておきたい検収期日に関するルールをご紹介します。

検収業務における実質的な検収期日は納品から60日以内

下請法では、下請代金の支払い期日は納品日から60日以内と定められているため、実質的に検収は納品から60日以内に行う必要があると言えます。

検収による支払いの遅れで遅延利息の支払い義務が発生することも

また下請法では、60日を経過した日から支払日までの期間について、日数に応じて年率14.6%の遅滞利息を支払うことが義務づけられています。仮に未検収であることを理由に支払いが遅れた場合でも例外ではありません。

検収期日にこだわらず遅滞のない検収・支払いを

検収に時間を要する商品であっても、60日以内の支払いルールは変わりません。納品からすみやかに検収を行い、遅滞なく支払いを行えるフローづくりが肝要です。

  • 受発注管理・商取引の契約における入金管理の役割

    入金管理の役割とは

受発注管理・商取引の契約における入金管理の役割

受発注管理の最終フローとなるのが入金管理です。ここでは入金管理の役割について説明します。

入金管理の役割とは

入金管理は、口座等への入金情報を確認し、請求書の内容と合っているかを管理する業務です。同じ取引先から案件別に振り込まれたり、反対に複数の請求分をまとめて振り込まれたりするケースもあり、取引件数が多いほど作業が煩雑になります。

入金管理の範囲は未入金回収・入金消込まで

さらに入金管理は、入金状況の確認だけではなく、未入金への対応や、帳簿上の入金消込作業までが対応範囲になります。入金管理の対応不備は、会社の信用問題や回収漏れのリスクにもつながるため、正確かつ迅速な対応が求められます。

  • 受発注管理・商取引の契約における然るべき未入金対応の方法・役割

    未入金対応の方法・役割

受発注管理・商取引の契約における然るべき未入金対応の方法・役割

未入金対応は、一歩間違えると信用の損失や会社の損失にもつながりかねない業務です。ここでは未入金対応の方法や役割について解説します。

未入金・売掛金は未回収の債権

未入金・売掛金は商品・サービスの対価として支払われる代金のうち、未回収のものを指します。

未入金確認後の売掛金の回収は迅速に

一般的に未入金の回収は、対応が遅れるほどトラブルにつながりやすいものです。また、売掛金は支払い期限から5年で時効を迎えますので、未入金確認後はすみやかな対応が必要です。

リスク回避のためには受発注管理の徹底も重要

未入金・売掛金未回収は、倒産リスクにもつながります。受発注管理を徹底して、モノの流れだけでなくカネの流れも確実に管理できるようにしましょう。

  • システム導入時に検討したい主要な受発注管理サービス

    主要な受発注管理サービスをチェックしておきましょう

システム導入時に検討したい主要な受発注管理サービス

ここで、受発注管理の効率化に役立つ主要な受発注管理サービスを3つご紹介します。

freee受発注

クラウド会計サービスとして人気のfreeeが提供する「freee受発注」は外注管理にフォーカスした受発注管理システムです。見積もり~発注の書類の確認作業をオンライン化し、サービス上のチャットのやり取りを証憑として活用することも可能。請求業務も自動化します。完全無料で使えるため、システム化を試してみたい方にもおすすめです。

BtoBプラットフォーム 受発注

飲食業やホテル業を中心に4万社以上の導入実績を持つ「BtoBプラットフォーム 受発注」。受注・発注両方に対応しており、帳票類をまとめてペーパーレス化できます。スマホやタブレットでも操作ができますので、店舗・拠点ごとに受発注を行っている企業にも適しています。

楽楽B2B

「楽楽B2B」は 一元管理しにくかったBtoBの受注管理を自動化するサービスです。取引先ごとに掛け率・金額を設定できるうえ、Webに不慣れな取引先にも導入してもらいやすいかんたん発注フォームを搭載。受注時の入力作業も不要になります。

スムーズな商取引のために受発注業務こそオペレーションの最適化を

さまざまな部署が関わる受発注管理業務こそシステム導入によるオペレーションの最適化が効果を発揮します。本記事を参考に、自社の課題を発見し、課題を克服できる受発注管理システムの導入を検討してみましょう。